ドリーミー

赤城ハル

第1話 女神訪問

 俺は菓子製造メーカー「レイワ」で商品開発部3課で働いている。

 今日も鼻くそ味のガムを開発するため世界中の老若男女から集めた鼻くそを食べている。

「グェログェルォロロロォォォ!」

「ブッフェ! グゥエ! ウェエ!」

「ゴファッ!」

 あまりにも気持ち悪さに3課の皆は食っては吐きの繰り返しをしている。

 集まった鼻くそは毎日10キロ。それを10人で割り、1人1日1キロ食す。

 これも全て企画開発部の奴らが変な新商品のアイデアを出して、それを会議に通したことだ。

 新商品というものは企画開発部がアイデアを出し、それが会議で通れば商品開発部が研究室で作る。その出来上がった新商品をマーケティング部がモニター等の調査結果をもとにどれだけ売れるかを予測し、広報部が宣伝。広報部が宣伝する時と同じく営業部がスーパーやコンビニ等に売り込み、その営業成績によって工場で大量生産。そして最後に店頭に並ぶ。

「ブッフェロ!」

 食ってもいないのに俺は他人のゲロを見て、もらいゲロを受ける。

「企画開発部め。許すまじ」

 鼻くそ味のガムのせいで体重は激減した。

「まあ、まだマシだろ?」

 げっそり顔の先輩が言う。

「なんですかマシって」

「2課なんてチ◯カス味のレアチーズケーキとかで古今東西のチ◯カスを食ってんだぞ」

「……分かってますよ。……それで同期が1人亡くなったんですから」

「そうだったな。すまん」

 この会社に俺と同期で入ったやつが、とうとう自殺してしまったのだ。


 トイレで用を足して、手を洗っていると、

「よう! 元気にしてるか?」

 1課の宮地がトイレに入ってきた。宮地のその小馬鹿にしてくる声に俺は苛立つ。

「分かるだろ」

 怒気を含めて俺は答える。

「アッハハハ。大変だよな。さ。企画開発部がアホな商品を考えたせいで」

「お前んとこはフケふりかけだろ。しかもすぐ終わったじゃねえか」

「ハッハハ」

 なんで笑うんだよ。こいつ。まじうざい。死ね。馬のフンでも踏んで、転んで死ね!


 そんな地獄の日々の中、アパートで寝ていると女性の呼びかけに俺は目を覚ました。いや、腐臭で目を覚ました。まるで腐ったコーンポタージュのような匂いがする。

 腐臭の先を見ると枕元に足があった。腐ったコーンポタージュの匂いはその足からだった。

「ぬわっ! 誰?」

 俺は枕元から避けつつ、足の主を見上げる。

 足の主はウェーブのかかった長い金髪に白のローブ、そして堀の深い白人女性の顔をしていた。

「私は女神です。あなたに頼みがあって来ました」

「頼み……ですか?」

「はい。ポセイドンの秘宝を探していただきたいのです」

「秘宝?」

「その秘宝はポセイドンの宝玉の呼ばれるものです。そしてそれは全部で7つあります。この宝玉はリヴァイアサンを封じるのに必要不可欠なものなのです」

 ちなみになんでこの人はずっと立ったままなのか。俺も起き上がらないといけない?

「なんで自分が?」

「特に選定の理由はありません」

 ないんかよ。なんか特別な血とか能力とかそういうのないの?

「……集めたら何か報酬はあるんですか?」

「勿論。全ての宝玉を集めたあかつきには金銀財宝、女と権力、そして超幸運を与えましょう」

「具体的には」

「IT社長」

「まじすか?」

「まじです」

「わかりました。やります」


 それからはポセイドンの宝玉を集めるため世界中を駆け回り、宝玉を守る化け物を倒した。

 ポセイドンの宝玉というからにはてっきり海かと思ったのだが、宝玉は海ではなく陸にあった。

 そのためか、いつの間にか俺は周囲から山賊王と呼ばれるようになっていた。

 見つけた宝玉は6つ。あと一つだ。


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