第15話

学校は平凡な日常が続いた。

ライガー君はまた学校をさぼっていて、見えないところでライジン大先輩召喚のため各所を駆け回っているに違いない。

ライジン大先輩の魔力はどのくらいだろう。

ライジュウ先輩が18000だったので、それよりは上をいくよね。


けれど、魔力2万以上なんて早々聞かないから、それほど警戒する必要もないのかな?

僕は既に魔力が2万を超えていて、今なおフォロワーが増え続けていた。

このまま動画を投稿していれば、更なる高見が見えるはずだ。


そうそう、まだ先に話だと思っていたダンジョンの件だけど、彩さんからチャットが来ており、どこに決めたのか尋ねられた。

ダンジョンは高校卒業後に行くものだと思っていたのだけど、最近ではそうでもないらしく、才能あるやつはどんどんダンジョンへ行ってこいの風が吹いているらしい。


その背景には今後のダンジョン規制も噂されているから、行けるうちに行ってこいというのもあるのだろう。

しかし、怪我したり死んだりする恐れがある以上、無理矢理連れて行くってことは冒険者チームもしたくないとのことだ。


『彩さんは高校性のうちにダンジョンに入るんですか?』

『もちろん。シロウもレイザーさんのとこでお世話になるよね』


……うーん、バンガスさんのとこからも声をかけられているし、弱小チームならほかにも名刺を貰っている。

もう少し吟味する時間があると思っていたので、まさかチャットで返事を求められるとは思っていなかった。


『もしかして、私と一緒じゃ嫌?』

『レイザーさんのとこ一択です!彩さんがいなかったら、他のとこも検討してたところです』

『そう、良かった。ならレイザーさんに伝えとく』


チャットは便利だ。

心の躊躇いなど一切感じさせずに、情報を伝えることが出来る。

陰キャの僕でも、チャットなら積極的になれることを知って少し自分でも驚いた。


しばらくすると、レイザーさんのアカウントから連絡が来た。

自分のチームに決めてくれてありがとうって嬉しそうにスタンプ付きで送られてきた。


本当は能力を評価してくれたバンガスさんのところが良かったけど、彩さんがいるのでレイザーさんのとこに決めました!なんてことは一生言えないし、墓まで持っていくつもりだ。


『冒険者として登録しておくから、ダンジョンネームが決まったら教えてくれ』

『陰キャ、でお願いします』

速攻で返信しておいた。


『……いいのか?冒険者の取り決めで、一度決めたダンジョンネームは変更できないルールだぞ』

『使用済みだったら、陰キャゴリラ、でお願いします』

『君が良いならいいけど。私が知る限り陰キャは使われていないからそれで申請しておくよ』


良かった。

名前は無事陰キャで決まりそうだ。

僕みたいな影の薄い人が変にかっこいい名前だとギャップがありすぎてみんなが馴染めないだ折る。かといって無難な舐めにすると覚えて貰えないこと必至だし、やはり陰キャというダンジョンネームは最高の選択肢だ。


バンガスさんにも連絡しておいた。

レイザーさんの熱い思いに負けてチームに入ることにしました。けれど、バンガスさんの気持ちも嬉しかったです。縁があれば次こそ一緒に行きたいです。という感じの、結構礼儀正しい高校生を演じられた内容を送信した。

彩さんの件は誰にも言わない。志とか、詳細内容とかより、美女を選んだなんて誰にも言えない!


バンガスさんからもすぐに返信があって、了解したとの返信を頂いた。

それと同時に、まだ僕のことを諦めていないことも伝えられた。

今バンガスさんのとこは大きいスポンサーをゲットしたところで、チームの強化を行っているらしい。


君が成長して今のチームに満足行かなかったらまた私に連絡しなさい。でかいチームになって君を待っているよ。と続けて返信がきた。

滅茶苦茶かっこよくて惚れそうだ。


僕もビッグになって彩さんと一緒になれるような男に……違う、違う。こっちは本心だ。


僕もビッグになって、バンガスさんのチームに相応しい人物になれたら、またお話を聞かせてください。それまで日々精進します。

こっちが建前で、正解の返信だ。


バンガスさんから可愛らしいスタンプが送られて来て、会話が終了した。


ダンジョン冒険者チームと契約すると、お金を貰えるらしいことも最近知った。

チームによって完全固定給だったり、歩合給立ったりするのだが、契約金は別途生じるらしい。


……金か。

うん、金は好きだ。彩さんの次くらいに好きだ。


あっ、そういえば、動画投稿のお金もそろそろ申請しなくては。

優しい視聴者さんがDMで収益化の件を教えてくれていたのだ。これだけ視聴者がいて、登録者も増えているなら申請すれば通るだろうって。最初にSNSを始めたらどうですかって教えてくれた人で、その後も丁寧にフォロー情報をくれたりする。


勝手にオンライン上の母ちゃんって呼んでます。

オン母はチョコレートも送って来てくれるし、いずれなにかをお返ししたいけど、リアルで会うのはハードルが高いし、難しいところだ。


収益化をすると広告動画が流れて、それを嫌がる視聴者いるとのことを聞いた。

配下(チャンネル登録者とSNSのフォロワー)で魔力量が増えると分かった今、変に収益化をする必要もないのではないか。強くなるためなら広告なんてつけない方がいいではないか。

そう思っていた時期も一瞬だけありました。結局目先のお金の魅力に負けて、収益化の道を選んだのである。


家に帰ってから、今日もさっそく動画投稿だ。

ヴァネとキャロを呼び出しておく。


二人にはチョコレートを食べさせてゆっくりしてもらい、僕は準備に取り掛かる。

家から戻ると玄関に段ボールが届いていたので、その中から購入したものを取り出す。

お小遣いじゃ足りなかったので、リアル母ちゃんから3か月分お小遣いを前借して買ったものだ。


用意したものは、コスプレグッズである。

ヴァネには季節外れのハロウィンようのコスプレアイテムであるカボチャの被り物と、黒いマント。

キャロには海賊船長の帽子をかぶせて、縞々模様の服と、ふっくら膨らみのあるズボンのコスプレを着せておいた。

こちらもセールだったので買っただけで、こだわりはない。


二人がコスプレして、美味しそうにチョコレートにメロメロになっているところを撮影していく。

あらゆる角度から撮っていく。僕の撮影技術も日々上がっている。

たまにおもちゃを投げて、キャロがキャッチする絵も用意した。ヴァネはそういうのが嫌いなので、パタパタと自由に飛び回って貰っている。


こうして20分にも及ぶ、媚媚動画が完成したのだ。

僕は魂を売ったのだ。便利系召喚魔法動画から、可愛い魔物をもふもふしたい動画へと。

人気のために魂を売ってしまった僕、どうか許して欲しい。一割にも満たない便利系動画を求める同志たちよ。月1で上げるから!だからどうか!

自分の特性が魔王だと分かった今、僕はフォロワーが欲しいんです!


この動画、投稿してから物凄い勢いで駆け上がった。

トップページのホット動画一覧にも上るくらい話題になった。

それもこれも、キャロの神秘的な可愛さと、ヴァネの小悪魔的な可愛さに、コスプレというスパイスを振りかけた故の化学反応。


ここ場で駆け上がると思っていなくて、自分でもびっくりした。

既に2週間以上やっている動画投稿でも、この人は一段と凄かった。


結果を言うと、この動画は過去一伸びた。

たったの3日で100万再生を突破する神動画となった。

それと同時に、チャンネル登録者が2万人を超えた。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る