第12話 ざまぁの行方

「お二方とも、事態の深刻さを判っていただけましたか?」


 丁寧な説明ありがとう。

 ボクでもわかってしまったよ! わかりたくなかった!


 不意に、お忍びでテレーズと見に行った劇の展開を思い出す。

 あれとそっくりだ。

 こういう展開を『ざまぁ』と言うんだ。観客はみんな『ざまぁ』を待っている。


 どこぞの国のイケメンぶった勘違い王子が、王家の都合で決められた婚約者に対して婚約破棄を突きつけるんだ。

 で、王子の隣には、王子が『真実の愛』の相手だと思い込んでいる女がいる。ちょっとケバい感じの下品でボインな女だ。

 そして婚約者は、はかなげで可憐な女と決まっている。


 王子は、婚約者に無実の罪を着せる。それで婚約破棄が正しいと言い張る。

 だけど、その罪の証拠はでっちあげ、ない場合さえある。

 もちろん、そんな程度の根拠で押し通せるわけがなく、たいていは婚約者やイケメンに大逆襲されて、王子とケバい感じの女は破滅。

 これが『ざまぁ』


 今まさに、ボクとテレーズがされてる通りじゃないか!

 ボクは勘違い王子じゃないし、テレーズはボインだけど下品じゃないけどな!


 とすると、次の展開だって予想できてしまう。


 そろそろ弟が現れて、あのイケメン顔でニカっと笑い。


『じゃあ、俺がマリアンヌ嬢と婚約しちゃう! マリアンヌ、結婚してください!』


 このメガネもキャラ崩壊して、なんだかオトメチックに目をうるうるさせやがって、


『まぁ殿下! 私もなんだかドキドキしてきました! その婚約おうけします!』


 そこへ華やかなファンファーレと共に父上と母上まで現れて。


『オットー! なんということをしたのだ! おまえは廃嫡! 北で鉱山労働だ!』

『我が息子ながらここまでバカだったなんて……かばいきれません』


 そしてテレーズは、ざまぁの定番からすれば罪から逃れたい一心でボクを裏切る。


『王太子だから奪ってやろうとしたのに! 王太子になれないあんたならいらない!』


 ああっ! そんなそんなそんなぁぁぁ!

 でも、テレーズに限ってそんなことはないはずっ!


 でもでも、もしテレーズが助かりたくて、ボクに罪を着せるならボクは甘んじて受けよう!






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