ep20 あなたの心を知っている
――“スクリーム”
戦場となった寝室に女の甲高い声が響く。
たった一声で意識を奪い取る強力なスキル。
しかしそれは対峙するキャソック姿の男には通用しない。
――どうして眠らない!
「そりゃあ俺がお前より偉大な存在だからって奴よ、なんてったって【響界独神】だぜ?神よ神。」
――“スクリーム”
――“スクリーム”
――“スクリーム”
「無駄だって言ってんのにさぁ……なぁんで同じスキルばっかり使うかねぇ?」
ショコレータはある一定の距離を取りながら“バレットパレット”を使用して弾丸を飛ばしていく。
――ガシュ!ガシュ!……ガシュ!
弾丸はディーの体を貫いていく。
「情報を集めておいて助かったぜ、ゴーストタイプの魔物にも“スキル”なら通用するって知らなきゃ“詰み“だったかもしれないしな。」
――どうして……どうして!
ショコレータに突撃しながらディーは叫ぶ。
――“スクリーム”!
そしてとうとう、その叫びはショコレータへと届く。
「ぐっ……キッツイ叫びだなぁ、おい!ここらが限界か。」
そう言ってショコレータは耳の穴に指を突っ込んだ。
その動きにディーは“ある物”の存在に思い至る。
自分の“スクリーム”は効かないわけではない、指で何かを耳に押し込んだ?
――耳栓?
「……いや、バレたか。確かに俺はこの戦いに備えて耳栓を用意してきた。」
そう言って耳の穴に詰められた青いスポンジのようなものを見せるように横顔を見せる。
「昨日はお前の“それ”にやられて意識を奪われたからな。対策として使わせてもらった。」
耳栓をしていても大音量で叫ばれれば聞こえてしまう。
だから一定の距離を常に取り続けた。
しかし疑問は尽きない。
――どうしてそんな物を付けて会話できる!?
「どうしてってそりゃあ……“スキル”だよ。」
意識を奪われている間、ディーの攻撃によってさまざまな言葉を感情や行動を頭の中で聞いた。
そうして生まれた新たなスキル。
「“サイコメトリー”。お前の思考も行動も、俺は読み取ることができる。限定的な未来予知にも使える強スキルって奴だ。」
――なんという……なんという邪魔な奴!
「これでも“神”を名乗らせてもらってるんでな、悪いがただの幽霊に負けるほど弱くはないつもりだぜ?」
“だったら、だったら力で潰せばいい!”
「だったら、だったら力で潰せばいい。」
声が重なる。ディーの頭の中で考えたことをそのまま口にする目の前の男。
“こんな相手に、いったいどうすれば勝てる?”
「こんな相手に、いったいどうすれば勝てる?」
絶望という言葉が頭の中を駆け巡る。
目の前の男にどうすれば勝てるのか、いや、どうやっても勝てないという思いが重石のようにディーの心を沈ませる。
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