3.〝殺人音楽テープ〟(1)

 昭和64年1月7日。


 わずか1週間で終わった昭和最後の年の、平成との狭間に生じた空白エアポケットのごとき最後の日。


 埼玉県川口に住む、当時中学2年の少年A(14)が両親を刺殺、技術家庭の授業で使うノコギリでバラバラにするという凄惨な事件が発生した。昭和天皇の崩御と重なったためか、新聞雑誌等各マスコミの扱いは大きくはなかったようだ。少年A自らの警察への自首により事件は発覚。が、取り調べ当初から「ふんぐるい」だの「むぐるなふ」だの意味不明な供述を繰りかえすゆえ、家庭裁判所に送致したのち、Aは精神鑑定を受けることになった。1ヶ月半をかけた鑑定の結果は「少年に狭義の精神疾患は認められない」「現在ただちに医療を加える必要はなく、少年の身体的、心理的、社会的な発達に見合った教育、矯正が適当と思われる」云々。


 そして、少年Aは初等少年院に送られた。


 ――だが。



 

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