第110話 対面




リビングの扉を開けるとみんなの視線がテレビに向かっていた。

何だろうと目を向ける。


「病院……これってまさか……」


テレビに映る人混みをみて父に視線を向ける。


父はテレビを凝視したままだ。


「これは……なんです?」


「テレビジョンって魔道具ダ」


メルディスさんの質問に自信満々に胸を張ったミーリアが答える。


「こちらにも魔道具があるんですか」


ほう、とミーリアの嘘を信じかけるメルディスさん。


「こちらに魔道具はないです。 家電です」


そのままの認識じゃまずいと即座に訂正した。


「エ?」


「え?」


愕然としたミーリアとメルディスさんがこちらを向く。

え? ってミーリアは魔道具だと思い込んでたの?


というか病院の映像よりも家電の方が気になっていたのか。


それよりも今は病院の方が重要だと思うんだけど!!


「お父さんこの病院に溢れてる人達って……もしかしてお母さんと同じ症状の人達?」


私がそう問うと父の表情が苦し気なものに変わっていった。


「……恐らくな」


ぽつりとそう述べる。


「優介、これは現在を映す物なのですか?」


「……あぁ、そして魔力中毒は思った以上に広まっているようだ」


父が苦々し気にそう言葉を吐き出した。


「……これ全員がですか? 随分と多いですね」


「なんで対処しないんダ?」


ミーリアが不思議そうにテレビを眺める。


「そっちの世界だと魔力中毒にかかったらどうやって治療したの?」


だから私はミーリアに質問を投げかけた。


「ん? 魔力を吸い出せば治ル。 発症したら吸い出してもらうんダ。 誰でも出来ルからナ」


「こっちだとその対処法出来る人……多分居ないよ?」


「なんデ」


「だって魔力って無かったし」


「そうカ!!」


心底ビックリした様子のミーリア。


「あと、ミーリア。 あっちの世界で魔力中毒になる人ってどれくらいいたの?」


「ん? んー…………ほとんどいなイ。 魔力が無いのは珍しイからナ」


ミーリアはニパッと満面の笑みでそう告げた。


「……こっちの人たちはほとんど魔力が無い人たちだらけだよ」


「そっカ。 んー……だとするト……大変だナ!!」


あ、ぁあ!! なるほどと言った感じでようやく理解してくれたみたいだ。


「大変なんだよー……」


なんだか気が抜ける。

これどうすればいいんだろう……。


「優介」


そんな中メルディスさんが父に話しかける。


「今考えている」


「優介」


「ちょっと黙っててくれないか」


「……落ち着きなさい」


「落ち着いている!!」


「……魔王様は理解しますよ」


「俺はお前たちを裏切らない!!」


魔王? 裏切る? なんでそんな話になってるの?

治療方法の話じゃないの?

そんなふうに不思議に思いながらも切迫した二人のやり取りに口を挟めずに眺めていたら、



ガチャ……。


リビングの扉が開いた。



「ただいま……え」


「お姉……ちゃん」


「優……奈……? ……っ『隔絶の結界』!!!!」


扉の方に視線をやると姉が居た。

久しぶりに会った姉は随分と痩せていた。


会えて嬉しくて声を掛けたら私と母、ミーリアとメルディスさんと父の間に結界が張られた。

姉はすぐさま駆け出し私の前に出て臨戦態勢を取る。

そしてミーリアやメルディスさん達を睨み付けながら私に声を掛けてきた。


「優奈!? 優奈なの?! 無事?! 何も怪我はない?! 」


「うん、無事だよ。 お姉ちゃんは……随分痩せたね」


「……っ何言ってんのお姉ちゃんは元からスレンダーよ」


「それならもうちょっと食べた方が健康的……かな」


「なら今度お母さんも一緒にケーキバイキングでも行こうか」


「良いね……お姉ちゃん……会いたかった。 心配かけてごめんね」


母も姉も最後に見た時よりも随分やつれていた。

凄くすごく心配かけてしまった。


「優奈が無事ならいいわよ」


姉の声は涙声になっていた。


「それで……あなたたちが誘拐犯? お父さんも敵なの? 家に何しに来たの?!」


姉の問いかけに父は言葉に詰まった。



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