第90話 父の話




つまるところこういう事らしい。


まずこの子について、この子たちは魔族。 そんでもってここは魔族領らしい。

この場所は地球とのこと。


ダンジョンについて、この子、ミーリアが地上に振りまいたみたい。 どうやって?!

何故魔族がここに? お父さんを追って来たそうだ。

なんでお父さんが魔族と一緒に居るの? 話せば長くなる。

お父さんは勇者って本当? 本当だ。ラヴァルザードの孫って称号があるんだけどおじいちゃんなの? あいつ俺の娘にそんな図々しい称号付けたのか。 起きたらもう一度眠らせてやる。

ラヴァルザードって私のおじいちゃんなの? 違う。

だがその称号のお陰でミーリアとも言葉が通じるみたいだ。

ラヴァルザードって誰なの? 魔王だ。

職業って知ってる? スキルって知ってる? 知ってるが……勇者以外は知らない。


とのこと。


取りあえず私はおじいちゃんがおじいちゃんで良かったとホッと胸をなでおろした。


私からの質問を答えてもらうと今度は逆に質問が来た。


「優奈の今のレベルはいくつだ?」


「今? 64だよ」


「64か。 まずまずだな、優奈の職業って錬金術か」


「うん、なんかディトルグ国の物に変換されるの。 錬金術って職業なにするの?」


「なんでディトルグ国限定? 職業は俺もよく分からないな、あっちに居た頃は職業で表示されるのは勇者ぐらいだ。 他は普通に仕事として錬金術や鍛冶とかはあったが……こっちのように色んな奴に職業が出る事象は分からない」


「そうなの? なんか関連っぽいスキルがいくつかあって、こっちの世界の物に適応ってスキルを使うとディトルグ国の物と変わったよ」


それから自宅で行った実験の内容を父に伝えた。

父は静かに私の話を聞いてくれた。


「上級回復薬ですかめー!!」


薬の話になったらメー爺が話に割り込んできた。


「ならば上級魔力回復薬は作れますのかめぇー!!」


「え? 作れないよ、見たことないもん」


私の答えに見るからに肩を落とすメー爺。 羊おじいちゃん可愛い。


「めぇ爺今優奈が喋ってんだろ。 黙ってろ」


父がメー爺に対し笑いながら底冷えするような声で凄む。

めぇ爺はちょっと怯えた。


「あははははは、ユースケ気持ち悪いナ」


ミーリアはそれを見て笑ってた。


「んー下級魔力回復薬があるなら作れるかも? 上級回復薬は下級回復薬を上位交換スキルで交換して作ったから」


「そ、そうなんですかめー」


チラチラ父の様子を伺いながら相づちを打つメー爺。


「優奈はメー爺にも優しいんだなぁ。 メー爺ちょっとあっち行っててくれないか」


「め、めー……お茶のお替り入れてきますめー」


「お父さん苛めちゃだめだよ。 メー爺可哀想じゃないか」


父の態度が目に余る。

私を可愛がってくれるのは嬉しいが、見ていて気持ちのいいものではない。

だから注意した。


「ユースケ怒られタ。 娘に怒られタ」


ミーリアはケタケタ笑っていた。

父は言葉に詰まっていた。


「あ……そう言えば私連絡せずに来ちゃった……突然居なくなっちゃったからお姉ちゃんとお母さん心配してると思うんだ。 私スマホ置いてきちゃったからお父さん連絡してもらえないかな」


色々なことがあり過ぎてようやく思い出した。

私ここ来る前お姉ちゃんと一緒だった。

お姉ちゃんのことだから絶対私の事心配しているよね、私スマホ持ってないから連絡できない。

そう思って父に連絡を頼んだ。


「あー……その件はしばらく連絡しない。 というより連絡するな」


「なんで?! 心配させちゃうよ!!」


そしたら父は連絡しないという。


「それでもだ。 今は遥もお母さんも知らない方が良い」


「なんで?!」


「こいつらの扱いがどうなるか分からないからだ」


「扱い?」


父は親指でミーリアのことを指さした。

指さされたミーリアは首を傾げた。

なんだか気が合いそう。


「今後ダンジョンはどうなる? 魔族はどうなる? テロリストか? 悪魔の使いか? 破滅の使者か? 今下手に知らせると迫害されかねん。 少なくとも親玉が起きて今後の打ち合わせをするまでは連絡は出来ない。 今起きている奴らだけでは今後の対応や対策を決められないからだ。 俺もミーリアと居るところ目撃されたみたいで追われているんだ」


「そうなの? ……!! あぁ!! ネットで噂の空飛ぶ女の子!!」


「それがこいつだ」


って事は空飛べるの? 凄いね!!

……じゃなくて。


「……でも私は? 学校あるから帰れないと困るよ」


「休学届出しておいてくれるだろう、その後通ってくれ」


「そんなぁ、そんなことしたら私留年しちゃうよ」


さらりと言われて取り付く島もない。


「あっちに居ても学校は通えなくなったろうよ……。 教えたんだろう? それに俺らを追ってたやつも気づいたみたいだぞ。 だから優奈は色々落ち着くまでここで錬金術をちゃんと学べ、スキルで作るよりも面白いぞ?」


「教えた……え? 錬金術学べるの?」


学べって言ったよね。 錬金術の先生付けてくれるの? 何それ楽しみ!!


「優奈をここに連れてきた理由はそれだからな。 下手な虫も付きそうだったし……中途半端な権力の持ち主が後ろ盾だと、より上位の権力者が出てきたら簡単に約束は違えられてしまうからな」


呆れられながらそう告げられた。

……私がここに連れてこられたのってそれが理由なの?! 


強制退場させられた気分だよ……がっかりだぁ。

というか高校……あーちゃんとすーちゃんと一緒に通えなくなっちゃった。

進路どうしよう。

オープンキャンパスも予約してたやつどうしよう。


錬金術の勉強は楽しみだけど今後の進路については不安が残った。






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