第77話 弊害




お互い草まみれな為家の中には入らずに庭で一息つく。

姉は私の為に家の中に入ったりお水を持って来たりパタパタせわしなく動いている。


「あ、『治癒の結界』」


思い出したかのように私に対してスキルを使ってくれた。

ふわりと温かい空気が私を包む。


「……気持ちいい……落ち着いた、ありがとう」


姉のお陰で吐き気も治った。

家に着いたことで気持ちが落ち着き、音の収集を止めることが出来た。


「「……あービックリした」」


同じ言葉が互いの口から出てきた。

それがなんだかおもしろくて噴き出して笑ってしまった。


「もう大丈夫だね、ごめんね優奈のレベル忘れてたわ。 というか特訓しなさい特訓。 そのまま行ったら吐き気だけじゃ済まなくなるかもしれないよ」


「うーだってしばらく魔物と戦わないし……」


「成人迎えたら探索者になるんでしょ? なら訓練して損はないよ。 なんなら草むしり後に私と訓練する?」


「……見てくれるの?」


「やぶさかではない。 ……ちなみにレベル聞いてもいいかな?」


「レベル?」


最後に見たのいつだっけ? いやいつも見てるんだけど気にしてないというかなんというか……。


ステータスオープンと呟くとレベルを確認した。

ん?

ちらりと姉を鑑定する。

姉のレベルは現在29らしい。

なんだか言いにくくなったよ。


「……今私のレベル確認した?」


そんな私の行動は姉にはお見通しだったみたい。

鑑定したことがすぐにバレタ。


「バレタか」


「……今更驚かないから言ってみ?」


ほらほら言えば楽になるよと、チンピラが言いがちなセリフを妹に発する姉。


「……64」


「64?!」


数字を聞いた姉は固まった。

というか小声でごにょごにょと呟いたのに拾われた。 耳良いね。


「驚いたね」


「不可抗力よ……そっかそっか……そりゃ気持ち悪くなるわ!! ってか今年中に100オーバーするじゃんか!!」


「そうなの? ……100目指す!!」


「目指すな目指すなまだ早い!! そりゃそうよ。 ……優奈慣れるために訓練しなきゃだめ。 このままレベル上がりすぎたらいざ動こうとしたときに超感覚過ぎて動けなくなっちゃうよ、さっき見たいに」


「なんで?」


「優奈今まで前と同じように過ごしてたでしょ。 たぶん無意識に力を抑えてたんでしょうね。 さっきのが良い証拠よ。 少し耳を澄ませただけであんなになったんだし。 少しづつ力に慣れて行かなきゃコップなんて持った瞬間、パンッ!! て割れちゃうよ」


「なにそれ怖い」


想像して身震いしてしまう。

そんな私から視界を外し姉は物置にしまってあった鉄製のスコップを持ってきて私に渡してきた。


「優奈、耳を澄ませたときのように今度は手に力を集中させる感じでスコップを持って」


「え?」


姉から言われた言葉の意味を理解しないまま視線を手元のスコップに移す。


……力を集中? こう……かな?


……あれ? 柔らかくなってきた? なんだこれ。


鉄製のスコップはまるで紙で出来てるかのようにクシャッと潰れた。


「……それがコップだったらパンッ!! よ。 鉄だからくっついて耐えている。 コップだったら耐えられなかったわ」


「これがコップだったらパンッ!!」


ひえ……紙だったよ感触。 こわぁ……。


「理解してもらえたようね。 いい、優奈は今1か0しかないの。 1が強力過ぎるから、1と0その間を自在に操れるように慣れよう、お姉ちゃんも協力するから」


「分かった!! パンッ怖い!!」


その後力を考えない様にしたら力を抑えられた。

力を抑えられたことに心の底からホッとした。


その後軽くシャワーを浴びて草を落としたら体力測定をしようという話になった。

だけど今日は休みではなく平日。

学校もあり帰ってからはアルバイトもある。




体力測定は翌朝行われることになり草むしりはお休みしてさらに1時間ほど早起きして早朝マラソンとなった。

距離は前回と同じ75km。


姉は走らずに家の前で計測係をしてくれる。


ストレッチを入念に行い軽く1周走ってから2周目で本気を出して走った。

そしたら姉に止められた。


話をしてタイムを見たら時速70km出てた。

時速70kmで歩道を走るのってどうよって話になり、それ以上のタイムアタックは止めておいた。


歩道をそんな速度で走っている奴いたら普通にヤバいやつだよね。 都市伝説になっちゃうよ。


前回は3時間30分だったけど、今回は2時間で終わった。

それでも体は全然疲れてない。 改めて思ったけど自分の体のヤバさを再確認した。

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