第16話 アイテム






二人そろってまとめサイトを見ていた。


「アイテムでたのー!!!!」


私は出現したアイテムが気になった。


「液体? 回復薬かな? ポーションかな? すごっ!!」


姉も出現した液体が気になって仕方のない様子だ。


「動画見たい見たい!! なんで見れないの?!」


「そういう人達が多いんだよ!! 時間たたないと無理だよ」


「スライムなのかなスライム状の何かってやっぱりスライムかな?! 実物見たい―!!」


姉と私は動画を見ても居ないのにまとめサイトの情報だけでしばらく盛り上がった。



この動画に触発されたのか、どこの動画もモニュメントに凸する系で占領され、警察と揉める人が多数出るなどしてニュースにもなった。




その日の夕方、騒ぎを受け政府からの臨時記者会見が開かれる事態になった。


夕飯を食べながら母と姉と私でテレビを眺める。


「結局あの配信者も回収アイテムは国に没収されちゃったね」


私と姉は動画を見れずにまとめサイト巡りをしていた。

そしたらアイテムについて謝罪の件もまとめられており顛末を知った。


「謝罪動画出てたね」


「どんな効果があったんだろう……」


どうやらモニュメントはいったん国の管理下に置かれることになったらしい。

あの動画に出たスライム状の何かが他のモニュメントでも発見されたみたい。

どんな危険があるか分からない為判明するまでの緊急措置を発令すると緊急閣僚会議で決まったそうだ。


野党からの反発もあったみたいだけど。 こういうときだけ野党頑張れって思っちゃう。 自分に都合の良い時だけだけど。


それに伴い、今後モニュメントに侵入した場合、建造物侵入罪に問われる場合があるとテレビで報道された。


「アイテムについて政府から正式発表されるのかな?」


「さぁ……されないんじゃない? むしろされると思うの?」


「思わない」


「でしょ」


そんな私たちのアイテムに対するモヤモヤは海外の配信者によって一掃されることになった。



その日の夜。


姉と二人で私の部屋でゴロゴロ動画を漁っていた。

私はベッドの上でお腹の上にシロを乗せ、姉はクッションの上にうつぶせになりながら。


「優奈、見てこれ」


「ん? どれどれ」


姉に見せられたのは最初に『門』 を開いた外国の動画だ。


「続きがアップされたの?」


「そうらしいよ」


二人でベッドの上に座り直し姉のスマホを覗き込み再生を押した。


その動画には2人の外国の男性が映っていた。

どうやら3人組で配信を行っているらしい。


撮影している人は会話に加わらず映っている2人で会話をしながら動画が進んだ。


「門の中って国が違っても同じ感じなんだね」


姉の言葉に頷いて同意を示す。


あの4人組の動画と同じように真っ直ぐ洞窟の中を進む。

ただあの4人組と違う点はこの人たちはヘッドライトを付けてナイフを持っていた点だ。


4人組の時は帰り道に偶然スライム状の何かを踏んで気づいたが、この人たちはヘッドライトの明りに照らされて気づいた。


「勇者の時は暗くてよく分からなかったけど、スライムっぽいね」


「だね」


明るいとよく分かる。

うっすら青みが買った透明な何か。

中にはコアっぽいものが一つ沈んでいる。

スライムがズリズリと動く度に中のコアもゆっくりと動く。


「この人たち木の枝持ってるよ」


ナイフを持っていた人が撮影している人に木の枝を手渡された。


どうやら一度来て、検証するのに必要そうなものを持って来たみたいだ


「スライムに刺したね」


「……スライム消えたね」


「……そうだね」


スライムの中の液体について検証するつもりっだったらしい。

だが、木の棒を突き立てられたスライムはフルリと震えて光りになって消えた。

想定外だったみたいで木の棒を持ちながら頭を抱えオーマイガーと叫んでる。


「スライム弱い……」


「あ奴はこのダンジョン最弱だからな」


「お姉ちゃんは誰目線なの」


光りになって消えたスライムからは何も出なかった。


「ドロップアイテムは確定じゃないんだね」


「あの液体気になるよね」


がっくりと肩を落とすが立ち上がり探索を続けた。


その様子がこの後数十分続いた。


「この人達……めげないね」


「持ってないねー」


木の棒を突き立ててはスライムは消えていった。

数十匹のスライムが亡き者にされたと思う、だがこの男性達はめげなかった。


「あ」


「あ」


その均衡が崩れた。


撮影している人が気付かずスライムを踏みつけた。

スライムで滑って転んだ。

スライムは光りになって消えた。

起き上がった撮影者の手には青い液体が付いていた。


あの4人組と言い演者と撮影者変わった方が良いんじゃないかな……。


「……持ってないねー」


「私見ててかわいそうになってきたよ」


またもや動画の人は頭を抱えてオーマイガーと叫んだ。


見初めて数十分、一向に終わる気配が無い。

画面を軽くタップする。 撮影時間は1時間30分だった。


「最後の方だけ見る? 全部見る?」


「最後だけ見ようかな……」


つつ……とスクロールし最後の方にした。


「ダンジョンから出たね」


「めっちゃ笑顔だね」


映っている男性達はすこぶるいい笑顔をしていた。

両手を後ろに隠しているあたり、手に入れたアイテムを隠しているんだろう。

見ていない間に何があったんだ。

気になるが結果だけ取りあえず見よう。


「アイテム発表するみたいだね」


そう言って男性が両手を前に出した。

そこには3本の試験管のようなものがあった。

中の液体は4人組の時と同じく青色をしていた。


映っている男性のうち左に立っている人はどや顔してる。

途中で転んだのか、怪我をした右腕を見せてきた。 怪我したのにどや顔なのはなぜ?


「痛そう」


「見せなくてもいいのに」


私達姉妹は顔を顰めた。

自分たちが怪我をしていなくても他人が怪我した部分を見るだけでも自分が怪我をした時の痛みを思い出して嫌なんだ。


「え、嘘」


「飲んだ……」


男性はあろうことか怪我を映しつつ、試験管の蓋を開けてグイッと一気飲みした。


「あの色のやつ飲み干すの?! チャレンジャーにもほどがあるでしょ」


「美味しいのかな……?」


すると怪我が見る見るうちに消えていった。


「え? え?」


「手品? じゃないの?」


「マジもんのポーションじゃん!!」


「すごーい!!」


使い終わった試験管は消えていった。


「そっちも便利だね!!」


「ゴミを出さないなんてエコだね……」


動画に映った男性達が両手で大きく手を振った。

どうやら動画はこれで終了らしい。


見終わった姉と私は心ここにあらずと言った感じでしばらくぼーっとした。


「「そりゃ取り上げられるわ!!」」


私達は顔を見合わせてそう言った。

ダンジョン関係のまとめサイトの数は加速していった。



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