第3話 学校で
「おはよう。 すーちゃん、あーちゃん、今日は早いねー」
友人の
鈴はミディアムロングの髪をハーフアップにしたおっとりした可愛らしい子で、明日花はショートカットのハキハキした美人さんだ。 二人とも高校1年生の時に同じクラスになって、クラスのオリエンテーションのクジで同じ班になりそこから仲良くなった。
「おはよう~だって今日は漢字の小テストの日でしょ」
「おはよう、優奈。 学校の方が覚えられる気がしてね」
「漢字の小テスト…‥忘れてた!! 今日は何ページだっけ」
毎週決まった曜日の朝の時間に漢字の小テストがある。
成績には直結しないが、3年間長期休暇を除き毎週行われるため進路の内申点に地味に響くと噂がある。
「やっぱり忘れてたか~」
「今日は96ページと97ページだよ」
「ありがとう!」
自分の机に鞄を掛け、ロッカーに仕舞ったあった漢字の小冊子を取り出した。
「なんとか埋めるだけ埋められた」
手応えはないけど。
読みは書けた。 書き問題は創作漢字がいくつか出来てしまった気がする。
「ゆうゆう、お疲れ様。 飴ちゃんいる?」
「すーちゃん、ありがとう」
机で突っ伏しているとすーちゃんが近寄ってきてパイナップルの飴をくれた。
私が通う高校は私立の女子校。
入学試験で面接があるせいか、クラスメイトも皆真面目で穏やかで優しい子が多い。
家から少し遠いけど良い高校に入れてよかった。
パイナップルの飴を舐めながらそんな事を思った。
一時間目は世界史の授業。
お年を召した男性教諭が黒板に文字を板書していく。
ノートに書き写しながらディトルグ国の事を思い出した。
世界史の教科書とかどこかに書いてあるかなと思いつつ、教科書の後ろの検索ページで探してみた。
当たり前だけど無かった。
地理の教科書なら載ってるかな?
机の中から授業違いの地理の教科書を取り出し同じように後ろの検索ページで探す。
こちらにもない。
現在も過去もない国?
それともただ教科書に載ってないだけ?
一人首を捻ってると先生が黒板の文字を消し始めた。
待って!! 私まだ写してない!!
地理の教科書を閉じ机に押し込むと慌ててノートに筆写を始めた。
……なんとか書き切った。
ふーと汗を拭う仕草をし激戦を繰り広げたノートを見返した。
……汚い。
なにこれミミズが這った? え? これなんて読むの?
ノートを近づけたり遠ざけたり回転したりしながら見る。
書いた本人でさえ分からない文字とは……もはや芸術?
そんな現実逃避をしても文字は読めない。
素直にきちっと筆写しているであろうあーちゃんに泣きついた。
「ありがとう、あーちゃん」
「どういたしまして」
シンプルなグレーの表紙のノートを借りる。
心なしかいい香りがする。 さすがあーちゃん。
「優奈今日は体調悪いの? 朝から挙動不振だけど」
「うぇっ? そんな事ないよ?」
「まあいいけど。 無理はしないようにね、ノートは次回の世界史の授業まででいいからさ」
「ありがとう」
その後の授業は調べ物などせずにちゃんと真面目に聞くようにした。
たまに聴き逃したのはご愛嬌。
今日の授業が終わり、掃除をし、ホームルームで今朝の漢字の小テストの返却を受け帰路に着く。
漢字テストに芸術点は無かった。
私は部活には入っていない帰宅部だ。
すーちゃんは手芸部、あーちゃんは茶道部に入っており、帰りもバラバラだ。
テスト前の部活動停止期間は一緒に帰って途中で寄り道し勉強会なんてのもやったりする。
今はそういった期間ではないので一人で帰路に着いた。
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