第56話 貴族学院でも充実した毎日を送っています

私達の婚約披露パーティーから月日は流れ、2年生になった。最終学年という事で、また気が引き締まる思いだ。さらに私は、なんと生徒会の役員に選ばれたのだ。まさか私の様な人間が選ばれるなんて。正直信じられないが、頼まれたなら断る事なんて出来ない。


ちなみに生徒会役員は、2年生から4人選ばれる。メンバーは会長がレオナルド様、副会長がメアリー、私が書記、クリス様が会計だ。本当は私が副会長をした方がいいのだが、何分世間知らずの私より、しっかり者のメアリーがやった方がいいという事になったのだ。


今日も放課後、4人で集まった。生徒会と言っても、学院の事はほとんど先生がやってくれるため、私達生徒会はそんなに忙しく動く事もないらしい。それでも、定期的にこうやって集まっている。


2年生になって早3ヶ月、生徒会の活動も随分と慣れてきた。といっても、月に1回こうやって集まって、ワイワイ言いながら過ごすだけなのだが…


「今日集まってもらったのは、今後のイベントの確認を行うためだ。今日先生から、日程の提示があったよ」


早速レオナルド様が、日程表を配ってくれる。何々、あら、3ヶ月後には1泊2日で宿泊研修に行くのね。卒業2ヶ月前に行われる卒業前パーティー、そして卒業式当日に行われる卒業パーティーか。


1年生の時は、イベントらしいイベントは特になかったのだが、2年生の後半は、イベントが目白押しだ。


「3ヶ月後には、リゾート地に行くのですね。それは楽しみですわ」


私はずっと王宮から出る事を禁じられていた。最近やっと公爵家に行くくらいは許されているが、外泊なんて夢のまた夢なのだ。


「立派なホテルに泊まるのよ。貴族学院の思い出作りと、貴族間の絆を強める狙いがあるのですって」


「まあ、ホテルに?私、9歳の時、この国に来る前に一度ホテルに泊まったっきりだわ。あの時のホテルがあまりにも立派で、キョロキョロと見てしまったのよね」


初めて見るホテルの立派さに、衝撃を受けたのだ。


「オリビアはずっと陛下に王宮に閉じ込められていたからね…」


ポツリとレオナルド様が呟いた。他の2人も、私を残念な目で見ている。


「とにかく、せっかくイベントがあるのだから、目いっぱい楽しみましょう。そうだわ、せっかくだから、今から皆で夕食でも食べに行かない?」


メアリーが素敵な提案をしてくれた。とても行きたいけれど、食事になんて行ったら、お父様がきっと怒り狂うわ…


「申し訳ないが、陛下がうるさくてね…今日は僕とオリビアは帰るよ。また別の日に、交流を深める意味でも皆で食事に行こう。陛下にも許可を取っておくから」


「レオナルド様、それは本当?本当にお父様に交渉してくれるの?」


レオナルド様と婚約して以降、お父様の束縛が激しくなった。特に帰りが遅いと、厳しく怒られるのだ。特に街に出る事に関しては、一度誘拐されている事もあり、絶対に許してくれない。


「ああ、もちろんだよ。そもそも、君は僕の婚約者だ。それなのに未だに父親が、オリビアを縛り付けていること自体おかしい。しっかり抗議をするから、安心して欲しい」


レオナルド様が話してくれるなら、もしかしたらお父様も折れるかもしれないわね。


「それじゃあ、許可が下り次第皆で街に食事に行くか」


「そうね、オリビア、せっかくだから街を見て回りましょう。もちろん、レオナルド様も一緒にいらっしゃるだろうし、護衛騎士を連れていけば大丈夫よ、ね、レオナルド様」


「ああ、もちろんだ」


なんだかんだ言って、メアリーとレオナルド様も普通に話すくらい仲良くなった。最初はミシュラーノ公爵令息様なんて呼んでいたが、今ではレオナルド様と呼んでいる。


私の大好きな2人が仲良くしてくれるのは、私としても嬉しい。


「それじゃあ、そろそろ帰りましょう」


4人で校門に向かい、それぞれ馬車に乗り込んだ。もちろん、私とレオナルド様は一緒に帰る。


王宮に着くと、お父様が飛んできた。


「オリビア、随分と帰りが遅いではないか!一体今まで何をしていたんだ。まさかレオナルドに、何かされていたのか?」


怖い顔のお父様が私に迫ってくる。後ろではミシュラーノ公爵様が呆れた顔をしている。


「陛下、言いがかりはよしてください。僕とオリビアは、生徒会役員に選ばれたとお話をしたでしょう。今日は月に1度の集まりで遅くなると、朝も話したはずですが」


はぁ~とため息を付くレオナルド様。


「それにしても、遅すぎる。いいかい、オリビア。レオナルドと婚約はしたが、まだ親の保護下に置かれている身だ。あまり帰りが遅い様なら、罰を与える事も考えるからね」


「え…罰って、またあの退屈な部屋に私を閉じ込めるのですか!」


昔私が勝手に街に出ようとした時、お父様に罰として狭い部屋に閉じ込められたことがある。あの部屋は嫌よ!だって退屈なのですもの。


「そうだな、あの部屋にまた入れるぞ!」


お父様が怖い顔をして迫ってくる。


「オリビア、どういう事だい?部屋に閉じ込められるのが嫌なのかい?」


レオナルド様がなぜか不安そうに迫って来た。


「嫌と言うか、何もない薄暗い部屋に丸1日半閉じ込められたので、退屈で…本当に何もないのよ。小説の1冊でもあれば、暇つぶしになるのに。酷いと思わない?」


「オリビアが嫌がる事をしないと、罰にならないだろ。とにかく、あまり私のいう事を聞かないと、また閉じ込めるから!」


お父様が怖い顔をして叫んでいる。さすがにこの状況じゃあ、街に行きたいなんて口が裂けても言えないわよね…

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