第50話 とても怖かったです
ガチャリとドアに鍵がかかる音がしたと思ったら、急に外が騒がしくなった。そして次の瞬間、再びドアの鍵が開いた。
「オリビア!」
中に入って来たのは、なんとレオナルド様だ。
「レオナルド様!」
そのままレオナルド様に抱き着いた。
「可哀そうに、僕の可愛いオリビアを鎖でつなぐなんて。すぐに外してあげるからね」
どこからともなく持ってきた鍵で、私を自由にしてくれたレオナルド様。さらに
「あぁ、私の可愛いオリビア!!」
レオナルド様を押しのけ、私を抱きしめたのはお父様だ。
「お父様!!」
私もお父様に必死に抱き着いた。よく見ると、近くにはミシュラーノ公爵の姿もある。
「貴様ら!どうやってここの場所を特定できたんだ」
顔を真っ赤にして叫んでいるのは、グレース殿下だ。
「オリビアにはあらかじめ居場所を特定できる機械を付けさせえていましたからね。オリビアの居場所を確認した時、エレフセリア王国の飛行船の場所を差していました。だからあなた様が、オリビアを誘拐した犯人なのだとわかったのですよ」
「グレース王太子殿下、これは一体どういう事ですか?まさか王女を誘拐しようだなんて。これは正式にエレフセリア王国に抗議をさせていただきますから、そのつもりで!」
お父様がグレース殿下にものすごい勢いで詰め寄っている。お父様のあんなにも殺気立った顔、初めて見たわ。
「それからグレース殿下、さっきオリビアとしていた会話も、バッチリ録音させていただきました。もちろん、部下たちに指示を出している会話も。まさか僕に下剤を飲ませていたなんて…」
「貴様、俺にも盗聴器を仕掛けていたのか?王太子でもある俺に盗聴器を仕掛けるだなんて!」
「こっちは自国の王女が誘拐されているのですよ!一番怪しいあなたに盗聴器を付けるのは、当然の事です。それにしてもあなた、無防備ですね。帰りの馬車の中でこっそり付けたのですが、全く気が付かないなんて」
そう言うと、グレース殿下の首元に手をのばし、何かを取ったレオナルド様。
「貴様、こんなところに仕掛けてやがったのか!そういえば、ゴミが付いているからと、俺の首のあたりを触っていたな。まさか盗聴器を付けていたなんて…」
「よく考えてみれば、護衛もエレフセリア王国の護衛を連れていくから、家からは少人数でいいと言っていたのも、今回オリビアをスムーズに誘拐するためだったんだな!おい、今すぐこの男を牢に閉じ込めておけ。今すぐだ!」
完全に頭に血が上ったお父様が、グレース殿下を捕まえる様に騎士たちに指示している。
「陛下、落ち着いて下さい。確かにオリビア殿下を誘拐した張本人ですが、さすがに他国の王族を牢にいれるのはいかがなものかと。とにかく、お部屋に戻って頂きましょう」
「どうしてだ!こいつは私の可愛いオリビアを誘拐しようとしたんだぞ!ただで済ますわけにはいかない!痛い目を見せてやらないと気が済まない」
「陛下、感情的になってはいけません。とにかく、相手国の国王陛下と話をしてからです!いいですね。ほら、早くグレース殿下をお部屋にお連れしろ!」
ミシュラーノ公爵様の指示で、グレース殿下は連れていかれた。
「どうしてお前はいつもそんなに冷静なんだ!オリビアを誘拐しようとした張本人なんだぞ!そもそも、レオナルドがオリビアの傍を離れたのが悪いんだ!そうだ、お前が悪い」
急にレオナルド様のせいにし始めたお父様。さすがに酷い言いがかりだ!
「お父様、私が連れ去られたのは…」
「オリビア、いいんだよ!陛下、今回の件、本当に申し訳ございませんでした。全て僕の責任です。僕がまんまと下剤なんか飲まされなければ、オリビアが連れ去られることはなかったのです。オリビア、君にも怖い思いをさせてしまって、本当にすまなかった。もう二度と、君にこんな思いをさせないから!」
私とお父様に深々と頭を下げるレオナルド様。
「どうか頭をあげてちょうだい。私、レオナルド様が助けに来てくれて本当に嬉しかったのよ。だから、そんな悲しそうな顔をしないで。レオナルド様、助けに来てくれて、本当にありがとう」
ギューッとレオナルド様に抱き着いた。
「そもそも、陛下がグレース殿下の我が儘を聞き入れなければ、こんな事にはならなかったのではないですか?本当に普段嫉妬深くオリビア殿下を縛り付けているくせに、肝心なところでは役に立たないのだから…」
はぁ~っと、ため息を付きながら呟くミシュラーノ公爵様。
「役に立たないとはどういうことだ!そもそも、自分の息子の不祥事を棚に上げて、よくそんな事が言えるな!」
「何を言っているんだ!オリビア殿下が誘拐されたと聞いた時、アタフタとする事しかできなかったくせに。レオナルドは冷静にオリビア殿下の居場所を突き止め、そしてグレース殿下に盗聴器まで仕掛けて決定的証拠を示したんだぞ!第一、何でもかんでもレオナルドに面倒な事だけ押し付けて。お前は昔からそうだ!」
「何だと!娘が誘拐されたと聞いたら、動揺するのが普通だろう」
目の前でお父様とミシュラーノ公爵様が喧嘩を始めてしまった。
「さあ、オリビア、今日は色々と疲れただろう。僕が部屋まで送っていくよ」
「でも…お父様と公爵様は…」
「放っておけばいいよ。大の大人が言い合いの喧嘩だなんて、みっともない…」
「おい、レオナルド、誰がみっともないだ」
「そうだぞ、私はお前を庇っているのに。何だその言い草は」
クルリとこちらを向いたお父様と公爵様が、レオナルド様に文句を言っている。
「大人げないからそう言ったまでです。とにかく、今からエレフセリア王国の国王陛下に抗議に行くのでしょう。こんなところで喧嘩をしていてどうするのですか」
「そうだった、今すぐあの国王に文句を言ってやらないと」
「確かにそうだな。こんなところで喧嘩をしている場合ではない。陛下、急ぎましょう」
なぜか今度は2人が大慌てで出て行った。その姿がなんだか可笑しくて、笑ってしまう。
「あの2人、従兄弟どうしで幼馴染なんだって。だから、とても仲良しなんだ」
「まあ、そうなのですね。知りませんでしたわ」
「さあ、オリビア、君は疲れただろう、僕が部屋まで連れて行ってあげるよ。ゆっくりお休み」
そう言うと、私を抱きかかえたレオナルド様。やっぱりレオナルド様の腕の中は、温かくて落ち着く。この温もりを、これからも感じていたい。近々お父様に、レオナルド様と婚約したい旨を伝えよう。だって私は、レオナルド様が大好きなのだから。
今日の出来事で、改めてそう感じた。
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