第136話 Bランクダンジョンでの買取り

 クラン《Black-Red ワルキューレ》にはお世話になった。何かお礼をしたいと思うがいいものが浮かばない。


「世那さん、美紅さん、お世話になりました。そろそろ僕達も京都に帰ろうと思います。何かお礼をしたいんですが、僕に出来ることで何かありませんか?」

「こっちの都合で来てもろうて、怪我までさせてもうたのに、お礼なんていらんわ」

「ああ、君が強くなることが私達への何よりの褒美になる。これから頑張ってくれれば良いよ」 


 お礼は後から考えるとして、そろそろおいとましましょうか。


「じゃあ、また考えておいてください。今日はそろそろ帰ります。また来させてもらいますね」

「何を言うてんねん。まだやらんとあかんことがあるやろ」

「ドロップアイテムの処理をしないと帰れないぞ。約束通りドロップアイテムはすべて君のものだ。全部取ってあるから、Bランクダンジョンに行って処理してもらわないとな。探索者センターには待ってもらっているよ」


 そんな話を最初してたけど、あれは僕しか戦闘しないからだろうと思っていた。あのゴブリン、オーガとの戦いではどれだけ倒したのだろう。僕でも信じられないくらいの数を相手したと思う。実力を考えれば、四人は僕よりも多い数を倒している筈だ。それを全部もらうのはちょっとおかしいような気がするが。


 ドロップアイテムを持っている二人と共にBランクダンジョンにやって来た。当然のVIP対応、部屋へと案内された。まあこの二人が買取り受付に並んでいるのを想像したら………。


「何が楽しいんや。オモロイ顔になっとるで」


 おっと、いつもの癖で何処かに行ってたようだ。あぶないあぶない。


 部屋の中には最初から支部長らしき人がいる。二人とは知り合った仲のようで、親しそうに話している。


「こっちが今一番の有名人や。《花鳥風月》のクランマスターやで、よろしゅうな」

「クラン《花鳥風月》のクランマスターの龍泉麟瞳です。よろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとうございます。ここの支部長をやってます、岡本直樹です。よろしくお願いします」


 京都で三ヶ月間拠点を構えた後は、大阪に拠点を移した方が良いかもしれない。皆に相談してからになるが、今度のクラン会議で聞いてみよう。


「今日の買取り担当の南麗奈です。よろしくお願いします」

「あんたが担当してくれるんか。ええか、今日の買取りの情報は誰にもしゃべったらあかんで」

「情報をしゃべるなんてしません。協会の規則にもあります。絶対にしません」

「一応の確認や。よろしゅうな」


 指定されたカゴの中にドロップアイテムを入れていく。僕が持っているのは一階層から五階層までのドロップアイテムとボス部屋のポーションやスキルオーブ、それに壁を越えた後のドロップアイテムと最後のゴブリン、オーガとの戦いで邪魔なものを手当たり次第に収納していったものである。


 隣では世那さんと美紅さんが大量の魔石をカゴに入れている。途切れることなく、ドンドン入れていく。南さんは口を開けて固まっている。


「あの~、一日での成果ですよね。多過ぎませんか?」

「だから言うたやろ。勿論一日で得たものや。まだあるからな。内緒にしといてな」


 あの有名人二人が一生懸命ドロップアイテムをカゴに入れている姿は………。


「麟瞳、また変な顔しとるで、おかしなこと考えてへんやろな」


 おっと危ない。僕もカゴに入れるのが大変だ。集中、集中。


 最後に宝箱から出てきたスキルオーブを入れてやっと終わった。


「一体どれだけの魔物と戦ったんですか?魔石の数がおかしくないですか?」

「支部長には伝えた通り、ダンジョンでイレギュラーが発生した。その戦いで倒した魔物が多かったんだ」

「それにしても多過ぎです。おそらく一万は超えてますよ」

「ああ、それ以上と戦ったんだろう。数が数えられるほど余裕はなかったからな」


 戦った数は魔石を数えれば分かる。ぼくの場合は魔石は完全ドロップするからね。ゴブリンキングとオーガキングを倒した後には宝箱が出てきたらしい。どちらも同じ機械のように見える。虹色の宝箱から出てきたらしい。


「虹色の宝箱が二つも出たんですか?もう信じられません。でもお二方が嘘をつく訳ないですよね。虹色の宝箱なんてもうお伽話級ですよ。凄まじいですね」


 僕はCランクダンジョンで虹色の宝箱を見たことがありますよ。でも、今回は見逃したな。虹色の宝箱だ、僕のときは【雷魔法】のスキルオーブと不壊と雷魔法が付与された刀が出てきた。それと同じくらいの物が出てくるのだろうか?全部僕の物というのはやっぱり考え直した方が良いと思う。


「最後にマジックアイテムですが、スキルオーブは【結界魔法】です。買取り価格が協議した結果五千万円になりました。探索者協会では初めて出てきたものです。そして虹色の宝箱から出てきたマジックアイテムですが、順位が分かる機械のようです。探索者協会としてはよく分かっていないので、価格が付けれないです。少し待ってもらっても良いですか?」

「何やて、順位が分かるんか?どうやって使うんや!」


 もう、世那さんの迫力に押されて南さんが可哀相になって来るよ。ダンジョンカードを通すと順位が機械に表示されるみたいだ。早速世那さんが自分のダンジョンカードを機械に通す。2と表示された。


「やったで!ウチが二位や!ちょっと加納に電話して来るわ」


 自由人がここにいた。あっという間に部屋を出て行ってしまった。こっそり美紅さんもダンジョンカードを機械に通している。表示は9。美紅さんの本当に悔しそうな顔を初めて見た。それだけ強さに自信があるのだろう。悔しがるだけ努力してきたんだろうな。


「龍泉さんもやってみると良い。日本での今の自分の位置が確認できる。是非やってみるべきだ」


 僕も機械に自分のダンジョンカードを通す。表示された数字は225。思っていたより数字が小さい。結構強くないか?まだBランクダンジョンもちゃんと探索したことないんだよ。おかしくないか?


「あのー、美紅さん。この数字おかしくないですか?これが本当なら僕、結構強いんですけど」

「いや、あの状況を乗り越えたんだ。私はもっと数字が小さく出ると思っていたよ。あれを生き残るのは簡単ではないぞ」


 やっと世那さんが戻ってきた。


「ああー、おもろかった。加納がえろう悔しがっとったわ。ほんま顔を見れんのが残念や。麟瞳、お礼はいらんて言うたけど、これをもらえんか。クランメンバーの励みになるわ。《東京騎士団》も欲しい言うとったで。でも、あんたも欲しいか?どないしょ」

「うちは順位を出すほど凄いのがいないですし、《Black-Red ワルキューレ》のクランハウスを訪ねたときに機械を使わせてもらえば十分ですよ。これがお礼になるなら良かったです。《東京騎士団》にも勿論送ってください。大体四人の方達がいないと僕がここにいないですからね」

「ありがとな。いつでも来てや」

「でも、一位や他のシングルナンバーの方は誰なんですかね」

「それは自衛隊のトップだろう。一位は間違いない。他のシングルナンバーには大手のクランマスターが入っているかもしれないが、多分自衛隊の方だと思うな」


 なるほど、Sランクダンジョンを探索しているんだ、言われてみれば当たり前だと気づく。そう考えると二位と三位と七位と九位が民間人というのも凄いことだな。

 

「あのー、それは探索者の強さの順位が分かるんですか?」

「そやで、ウチが日本で二位や」

「探索者協会にも欲しいと思うのですが、買取りさせていただけませんか」

「そらあかんわ。これはウチらが探索して得たものや。ウチらで所有するともう決めたわ」


 ポーションはボス部屋以外のところでドロップしたものは初級毒消しポーションで、宝箱から出てきた物は中級毒消しポーションだった。ここのヘビが毒持ちだったのだろう。そのポーションとスキルオーブ、それとゴブリンキングとオーガキングの皮を持ち帰ることにして、残りは買取りしてもらった。魔石は全部で一万二千個ほどあった。一万二千の敵と戦ったのか?四人の凄さを改めて感じる。


「早うスキルオーブ使こうてみ。また聞いたこともないスキルが増えよるな」


 クランに持ち帰って誰が使うか考えると言うと怒られた。


「これは君が探索で得たものだ。装備品ならまだ分かるが、スキルオーブを一緒に探索した人以外に譲るなんてありえない。君が強くなるために宝箱から出てきたんだぞ」


 確かにそうかもしれない。その場で、二人の前でスキルオーブを使用した。使うと念じるとスキルオーブは光になり僕の中に入ってきた。





 

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