第91話 ん、おかしいぞ
ボス部屋だと思われる扉の前で五人で話し合う。扉が閉まっているが、誰かが挑戦中なのだろうか?
「何故ボス部屋がここにあるんだ?岡山ダンジョンの続きなら、五階層ごとにボス部屋が出てきそうな気がするんだが………皆はどう思う?」
「やっぱりこの扉はボス部屋よね。ボーナスステージと考えれば良いのかしら?」
「真姫、ボーナスステージってなんだ?」
「岡山ダンジョンをクリアした後のご褒美的なものかなって思ったのよ」
真姫は楽観的に捉えているようだな。
「美姫はこの扉の向こうをどう考えるんだ?」
「扉を見ればボス部屋としか考えられません。ボス部屋の中がどうなっているかですよね。入ってみたいという気持ちが強いです」
「私も入ってみたいっす」
「オレもだ。強敵がいるなら戦ってみたいぜ」
やっぱり僕より戦闘狂だ。未知の敵がいるのに怖いという気持ちは湧いて来ないのだろうか?僕だけが不安な気持ちが勝っているようだ。
「扉が閉まっていることがおかしいと思わないか?ここに辿り着くまでの通路は誰も発見していないと思うんだが………。それに部屋の中には少なくともオーガ三体よりも強敵がいるんだから、僕達の力で勝てるのかどうかを良く考えて決めよう。水分補給をした後に多数決をとるよ」
先程の会話から分かっていたが、僕以外の四人は部屋の中に入ることで気持ちが決まっている。どんな状況にも対応できるように考えておこう。
「いざという時には爆炎魔法のスクロールを使うようにするから、指示があったら僕の前には出ないようにね。帰還石と同時に使えないから誰かに帰還石を渡しておこうと思うんだけど誰が良いかな?」
「私もそんな状況では爆裂の矢を射ることになると思います。詩音にアイテムボックスの中にしまっておいてもらって、いつでも出せるようにしておくのが良いと思います」
確かにアイテムボックスの中に入れておくのが良いように思える。思い浮かべれば自由に出すことが出来るからね。
皆の準備は良いようだ。覚悟を決めて扉を横にスライドさせていくと、扉が音を立てて開いていく。いよいよ戦闘の始まりが近づいている。さあ、鬼が出るか蛇が出るか、僕を先頭に全員が部屋の中に入り切る。そして扉が閉まった。
部屋の中には十体のオーガが待ち受けていた。今までにない数だ。横に広がっているオーガを出来るだけ一カ所に集めることができれば効率的に爆炎魔法のスクロールで倒すことが出来る筈だ。
『横に広がっているオーガを真ん中に集めてスクロールを使用したい。美姫は右側のオーガを端から真ん中の方へ誘導するように爆裂の矢を放ってくれ。僕は左側から風の刃で追い込んでみる。他の三人はいつ攻撃が来てもいいように準備を怠るなよ』
僕は一番左にいるオーガに全力の風の刃を発動するが、距離が遠すぎてあまり効果が出ていないようだ。腹を決めて風魔法の付与された靴で高速移動して左のオーガに接近する。そこでもう一度風の刃を発動する。ダメージを負わせたようだ。そのまま中央に切れ込み他のオーガも誘い込む。美姫は予定通り右側から追い込んだようだ。高速移動でオーガから距離を取るよに移動する。
『皆、爆炎魔法のスクロールを使うぞ、もう前に出るなよ』
【全探知】スキルでオーガの位置を捉えながら、刀を収納してスクロールを右手に取り出した。よし、ここだ。このタイミングだ。振り向きざまにスクロールを開き魔力を流す。
スクロールの魔法陣から炎の渦がもの凄い勢いで飛び出していく。どんどん巨大化する炎の渦がオーガを巻き込み部屋の壁にぶち当たった。耳をつんざくような破裂音とともに炎は消えていった。
残ったオーガは二体だけだった。思っていたよりも広範囲に広がる魔法だったようだ。威力も抜群だった。一体は皐月、真姫、詩音の三人に任せて、もう一体を僕が担当しよう。刀を取り出し接近していく。脚を狙って刀を振りきった。やはり風の刃でないと一撃でのダメージが足りないようだ。もう一度近づき風の刃を発動する。倒れ込むオーガの首にもう一度風の刃を振り下ろした。討伐完了。
もう一体のオーガを三人で攻撃している。少しずつ焦らずに削っていく。任せていて大丈夫そうだ。魔石を拾いながら最後の止めの瞬間を待った。詩音が剣に火魔法を纏わせて心臓を一突きした。すべてのオーガは消えていなくなった。いつものハイタッチの音が部屋の中に鳴り響いた。
ん、おかしいぞ。すべてのオーガを討伐した筈だが宝箱が出て来ないぞ。
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