第75話 スキルについて話をしよう
ダンジョンの停留所から岡山駅行きのバスに乗ろうとすると、この時間なら電車の方が早く着くと真姫が教えてくれた。電車が通っているのは知らなかった。本当に少し歩くと駅があった。駅から電車で岡山駅へ、そして岡山駅で南に向かう電車に乗り換えて一駅、更に歩いて五分で橘家に着いた。夜の営業時間は五時からということでもう店は開いている。駅側の定食屋で京都で通っていた定食屋を思い出すような味がある店構えだ。裏口からお邪魔した。
まだ晩御飯を食べるには早い時間なので、先にスキルについて話しておく。
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ランク:A
名 前:龍泉 麟瞳
スキル:点滴穿石 剣刀術 豪運 全探知 全解除 火魔法
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「僕のダンジョンカードだ。気づいていたようだけど、魔石の完全ドロップやドロップアイテムの品質のよさ、宝箱の中身が良いのは【豪運】スキルのおかげだと思う」
「リーダーもユニークギフトを持っているんだな。美姫の言う通りだ。持ってることを自慢していたのが恥ずかしいぜ」
「そっちかよ。僕のユニークギフトはまだ効果がはっきりしないんだよ。ただ、このスキルは僕を守ってくれていると感じている」
「薄々気づいていたけど【豪運】スキルは凄いぜ。あの配分も納得した。今日の探索だけで今までの何倍稼いだか分からないぞ」
「他の人には言わないでくれ。バレたら何をされるか分からない。怖いんだよ」
「勿論言わないぜ。約束だ」
「あとは、スキルと言うより装備品なんだけど、この腕輪が収納道具になっている。マジックバッグとは違って触れているだけで収納出来るし、思い浮かべるだけで取り出すことが出来るんだ。これも知られたら怖いから、絶対に話さないでね。この腕輪は車も収納できるんだ。いずれこのパーティで遠征するようになったときには役立つと思う。明日から教習所にも通うし、楽しみにしておいてね」
「ちょ、ちょっと待って下さい。今、明日から教習所に通うって言いましたか?何で私に言ってくださらないんですか?私もリーダーと一緒に免許証を取ろうと思っていましたのに」
「いやいや、聞いてないよ。そういうことはちゃんと言っておいてよ。明日の十時半から入所式だからその前に行けば飛び入りで大丈夫じゃないかな?まあ明日にこだわることもないと思うよ」
報連相は大事だよね。最近よく思うよ。
「皐月のダンジョンカードを見せてくれないか」
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ランク:C
名 前:神楽 皐月
スキル:堅牢堅固 盾術 ガード 受け流し
シールドバッシュ
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「見事に盾術に特化したスキルばかりだな。美姫も弓術に特化してたよな。美姫、【鷹の目】のスキルは使っているのか?」
「今日から使っています。なんか不思議な感じです。有り得ないような目線で全体の動きが見えます。魔物もリーダー達も全部見えますよ。これから使いながらいろいろと試していきますね。スキルオーブを使わせてくれてありがとうございます。きっと皆の役に立ちます」
「全体を見ながら念話を使って美姫が皆に戦闘中の指示を出してくれると助かるな。僕はある程度自由に動き回らせて欲しいけど、指示には従うよ。皐月のユニークギフトも分かりやすいよな。見るからに強そうだ。慢心せずに精進すれば良いところまで行けそうだね」
「ああ、頑張るぜ!」
「真姫のスキルで【並列思考】があったよな。凄い便利そうなんだけど、どういうふうに使っているんだ?」
「例えば、大学の授業を受けながら晩御飯のことを考えたり、テレビを見ながら宿題をしたり………」
「ダンジョンで使ってないのか?」
「冗談よ。三匹くらいまでの魔物の動きを見て、それぞれにどう攻撃したり、攻撃を回避したら良いのかを同時に考えたり、皐月の動きを把握しながら複数の魔物の動きも見て、隙をついて攻撃を入れるタイミングを考えていることが多いわ。皆もやっていることでしょうけど効率が良いと思うわ。二つのことは同時に考えて処理することが出来る。三つまでは何とか出来るかなというレベルよ。もっと沢山の事を同時に考えることが出来るようになるかも知れないけど、今は無理ね」
それからもお互いのスキルについて話をした。パーティメンバーのことはよく知っていないとダメだ。これからは会話を多くしていきたいね。不毛な会話ではないものをね。
食事をしようということになって、お店の方に移動してメニューが渡された。沢山の料理の名前が並んでいて、すべて単品の値段が書かれている。定食にするには200円アップすればご飯とみそ汁と副菜が一品付くらしい。お酒を飲む人が多いから、このメニュー表になっているということだ。
迷った末に選んだのは唐揚げ定食だ。普通だねって思わないでね。最近の魔物肉料理を食べるまでは一番の好物だったんだ。間違いのない選択だと思う。
大皿に大きめの鶏モモ肉の唐揚げが五個乗っていて、千切りキャベツにトマトとキュウリとレモンが彩りよく添えられている。副菜はミニミニオムレツとでもいうのか、そんなタマゴ料理が小皿に乗っている。お味噌汁と漬物が付いていて、ご飯は大盛りだ。ちゃんと頼んでおいた。
「麟瞳さん、あまり美味しくなかった?私は小さい頃から、このお店の味付け好きなんだけど」
「いや、美味しくいただいているよ。普通に美味しい?なんか変な表現だな。美味しいと思う」
「あのお弁当レベルの食事を毎日してたらしょうがないのかな?」
「美味しいと本当に思っているからね。変なことを言わないでよね」
「ねえ、あのお弁当はストックしてあるの?一つ貰えないかな?父に食べさせてあげたい。どんな反応をするのか見てみたいわ」
真姫がとんでもない提案をしてくる。最初は断ったが、何度も頼まれて結局渡してしまった。食後は早々に家に帰ったよ。お店がお客で一杯になり、真姫と皐月がお手伝いしないと大変そうだからね。僕が帰る時に美姫が自分も教習所に行くからと言ってきた。空き時間に暇を持て余すことがなくなりそうだ。
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