第73話 なんで僕は謝ったんだ?
ダンジョンの十一階層に転移した。確認するのを忘れていたことがある。
『美姫、今回の配分はどうするか決めてないけど良いのか?』
『うちのパーティでの配分は話しておきました。ドロップアイテムが多いことにも気づいています。リーダーが信用できると思った時にスキルについて話してあげて下さい』
美姫はしっかりしていて頼りになるね。僕もしっかりしないといけない、探索を頑張ろう。
セーフティーゾーンでフォーメーションを話し合う。まずは美姫がゴブリンアーチャーを仕留めるのは確定だ。皐月が前衛でその後に真姫、僕は遊撃で自由に動き回らせてもらい、そして後衛に美姫の陣形だ。皐月を抜いて美姫まで到達するゴブリンは二十階層まではいないだろう。
因みに、僕の刀は以前使っていた買取り価格が百万円のものだ。風魔法が付与された刀はもう少し個人練習をしてから使おうと思う。デカい風の刃を飛ばしたら洒落にならない。靴の方は装備している。昨日後悔したばかりだ。性能を確かめておくようにしよう。探索を開始した。
「リーダー、魔法の威力がおかしいと思うんですが?」
僕が五匹のゴブリンパーティの内の二匹を魔法で討伐したときに美姫が聞いてきた。
「昨日の宝箱から得たマジックアイテムの効果で魔法の威力が上がったみたいだね。想像以上で嬉しいよ」
「リーダーは魔法禁止です。もっと高ランクのダンジョンだと頼もしいと思いますが、ここのダンジョンでは必要ないと思います。皐月と真姫の練習にもならないから禁止です」
『魔法を使わないと魔力ポーションがドロップしないんだけど』
「ボス部屋では後衛のゴブリンに魔法で攻撃してもらいましょう。皐月と真姫もそれで良い?」
「「了解!」」
美姫も間違ったことは言ってないから大人しく従うことにする。個人練習の時に魔法の練習はすることにしよう。確かに指輪の効果は絶大のようだ。
皐月の護りは安定している。攻撃を受け止めても、ガードしながら突進しても、そしてシールドバッシュの攻撃をしても良い。その場面に応じて、どうすれば良いのかを判断するのも的確に出来ている。あとは性格上先走らないかが心配だな。成長すればかなり良いタンクになる予感がする。性格が何とかなればだけどね。
十五階層のボス部屋の前に来た。順番待ちは一組、待つ間に皐月にレクチャーしておこう。
「八匹から十匹のゴブリンパーティだ。ゴブリンアーチャーは僕か美姫が最初に討伐するが、ここからはゴブリンソードマンが出てくる。剣を持った魔物とは戦ったことはあるのか?」
「ないな、初めてだ。オレが相手をするぞ。オレがそいつを転がしたら真姫が止めを刺せばいい」
「他のゴブリンもいるからな。同時に攻撃されるかもしれないぞ」
「ああ、ドンと来いだ」
順番が来た。四人でボス部屋に入り、扉が閉まった。約束通りゴブリンアーチャー目掛けて魔法を撃った。一撃でアーチャーは消えていったが、もう一匹のゴブリンアーチャーは美姫に譲った。ゴブリンソードマンは一匹、皐月がガードしながら隙が出来るのを待つ。ゴブリンソードマンの横から他のゴブリンも攻撃をしてくるが上手くいなしている。ゴブリンソードマン以外は真姫が踏み込んで槍を突き刺し倒している。ゴブリンソードマンがバランスを崩した時に盾でガードしながら突進をしていった。倒れたゴブリンソードマンに真姫が止めを刺す。初めての戦闘で確実に倒すために時間を使ったようだが良く考えている。戦闘に関してはバカではないようだ。今後も期待をしておこう。
すべてを倒しきって、ドロップアイテムを拾っていると銅色の宝箱が現れた。今回は皐月に開けてもらおう。
「また銅色だぜ。全く凄いな。リーダーのおかげなのか?」
「後で話はするよ。皐月が開けてくれ、罠はないから安心して開けていいよ」
宝箱の中からはお約束のポーションが五本ずつと腕輪が出てきた。どんな効果があるのか楽しみだ。今更だがドロップアイテムは美姫が例の青いマジックポーチに収納している。皐月に腕輪の効果を見せたくなかったからね。
十六階層の転移の柱に皐月が登録をした後に、セーフティーゾーンでお弁当を食べることにする。三人は同じ弁当のようだ。
「誰が弁当を作ったんだ。まさか皐月じゃないよな」
「なんでオレが作ったら、まさかなんだ。リーダーがオレのことをどんな目で見てるか分かったぞ」
「ごめんな。正直な話、皐月が料理をするとは思わなかったんだ。悪かった」
「オレは料理は出来ないぞ。まあ美姫も出来ないけどな」
「私はしないだけです。出来ないことはないです」
「美姫、正直に話しておいた方が良いわ。嘘は良くない」
「すみません、嘘をついていました。料理は全く出来ません」
僕は何を聞かされているのだろう?なんで僕は謝ったのだろう?誰が弁当を作ったんだろう?すべてが分からないまま、母さんの作ってくれた弁当を食べ終わった。
「で、誰が弁当を作ったんだ?」
「父親よ。料理が上手なのよ」
そりゃあプロだもんねって、そんなことは知ってたよ!で、なんで僕は謝ったんだ?
探索は進み、タンクの入ったパーティは安定感を増したように感じる。二十階層までは今までも危ないことはなかったけどね。皐月と真姫の相性がいいようで、真姫がしっかり戦力になっている。二十階層のボス部屋も問題なくクリアした後に、このパーティでは初めて銀色の宝箱が出て来た。真姫が開けた宝箱の中にはポーションの他に槍が入っていた。
今日の探索はここまでにする。二十一階層の転移の柱に皐月が登録して、そのまま四人でダンジョンの外に転移した。
あれだけ言い合っていた三人が仲良くなっていた事が一番の収穫だったのかもしれない。
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