第34話 正輝と倉敷ダンジョンを完全攻略
十六階層の転移の柱で正輝が登録をして、セーフティーゾーンでお弁当にする。
「麟瞳、凄い肉の量だぞ。こんなに買取りしてもらえるのか心配になるよ」
「それは僕も思ったことがあるけど大丈夫らしいよ。県内のスーパーに肉を卸すからあっという間に売り切れになるらしい」
「なるほどな。あとウエストポーチは入り口も広くなるしドロップアイテムを入れやすいな。リュックだといちいち背中から降ろして入れていたよ。麟瞳は簡単に入れてるように見えてたけどな」
「ああ、あれね。なんでも続けていれば慣れて来るんだよ。一年もすればノールックでスイスイ収納できるようになるさ」
「あのリュック、お前は要らないか?なんだか貰いすぎで悪いし、収納袋があって困ることもないだろ」
「絶対に悠希が文句を言ってくるぞ」
「いやいや、ポーチの値段を言ったら納得するだろ」
「じゃあ貰っておこうかな。どこかで役立つかも知れないしな」
収納リュックをゲットしてしまった。これも【幸運】スキルのおかげだろうか?
「ここから二十五階層まではボア系が出てくる。スモールボアとラッシュボアは問題ないと思うが、ワイルドボアの牙を使ってのかちあげとビッグボアの突進には注意がいると思う。ここではワイルドボアとビッグボアに会ったことがまだないんだ」
「了解した。このダンジョンは何階層まであるんだ」
「全三十階層だ。二十六階層以降の情報は後で教えるよ」
「何とか完全攻略したいな」
水分補給とトイレも済ませて攻略再開だ。
正輝は相変わらず無双しているが、僕は攻撃力が足りていないので一撃で決まらない事が多い。いろいろ考えながら討伐を重ねると倒し方も浮かんでくる。水平に斬撃を飛ばしてまず脚を傷つけることで解決した。機動力を無くせば一撃にこだわることもなく、安全に倒すことができる。ビッグボアの肉のドロップ品は二キロよりも確実にでかいな。
僕の魔法はスモールボア以外にはあまり有効でない事が分かった。今のところ魔法よりも飛ぶ斬撃攻撃の方が威力が強い。更に飛ぶ斬撃攻撃よりも直接刀で斬った方がダメージを与えることができる。組み合わせを考えてより有効にそして確実にボアを倒して行った。
二十一階層の転移の柱に登録した後、二十六階層の転移の柱まで一気に駆け降りた。
登録をして休憩をしながら二十六階層から三十階層のレクチャーをする。
「ここから三十階層まで見ての通り草丈が伸びて魔物が見つけにくくなる。魔物はラビット系、ウルフ系、ボア系の三種類とも出てくる。気をつけていこう」
「了解した。近づいて来る音に要注意だな」
「火魔法で燃え広がったら大変だな。正輝、強いのを一発撃ってみてくれないか」
「そうだな、確認しておく事に越したことはないな」
20メートル程離れているラッシュボアに向かって正輝のファイヤーアローが飛んで行く。着弾すると一撃で倒してドロップアイテムを落としたようだ。燃え広がることはなかった。
「他のダンジョンと同じで燃え広がることはないな。それよりもドロップアイテムが取りにくいのが心配だな」
とりあえず僕がドロップアイテムを拾いに向かった。途中でホーンラビットが突っ込んでくる。ビックリしたが問題なく対処できた。ホーンラビットのドロップアイテムと先ほどのラッシュボアのものも無事に回収できた。
「確かに魔石は見つけにくいね。見つけることに気を取られて危険になっては本末転倒だから、ある程度は諦める事も必要になるね」
「了解。では三十階層まで一気に行くぞ」
ヘルメットの外部からの音の音量を少し上げて攻略を開始する。
音がした方に水平の飛ぶ斬撃攻撃を入れる。攻撃が当たれば動きが鈍るので容易に倒せるし、当たらなくても牽制にはなっているようで突進して来る勢いが弱くなる。格段に討伐しやすくなった。
細心の注意を払いながら討伐を重ねて、二十九階層に来たときに僕は見つけた。
「正輝、ちょっと来てくれ!」
僕の声を聞いて正輝がやって来た。
「どうした麟瞳?まだ最終階層ではないだろう」
「ああ、まだ最終階層ではないが見たんだよレアモンスター………赤い奴だ!多分ワイルドボアの変異種だと思う。デッカイ牙が見えたからな」
「ほうレアモンスターか、それは討伐して帰らないと夢に出てきそうだな。何処にいる」
「あっちの方に走って行った。逃がさないように二人で囲んで行こう」
僕の指差す方に正輝が進む。僕も遅れないように付いて行く。途中で邪魔な魔物が入ってくるが倒せるものは倒し、躱せるものはスルーして行く。正輝が止まった。視線の先に赤いボアがいる。
「俺が右に移動するから、麟瞳は魔法か飛ぶ斬撃で俺の方に追い込んでくれ。仕留める!」
「了解!」
正輝が移動し作戦を決行する。
左にだけは行かさないようにまず左に魔法を撃つ。こちらに突進して来た。全力の飛ぶ斬撃を放ち正面から浴びせる。怯んだところを左側にもう一度魔法を撃ち牽制する。少し左側から近づき斬撃を放ち、後方へは魔法を撃つ。何度も攻撃は当たっているがタフである。遂に正輝の方に動き出した。射線に入らないように素早く避けた。とてつもなく大きい火の斬撃が飛び散る。何メートル飛んで行ったのだろうか、通り道にいくつかドロップアイテムが落ちている。勿体ないので見える範囲で回収し正輝の下へ移動した。
「麟瞳、宝箱が出た。開けてくれ」
「分かった、罠はないようだな。じゃあ開けるぞ」
僕が開けた方が良いものが出ると信じている正輝は絶対に自分で宝箱は開けない。ということで僕が銀色の宝箱を開ける。中には指輪が入っていた。
「これだけか?入れ物の割には小さくないか?」
正輝は文句を言ってるが悪いものでは無い筈だ。なんと言っても銀色の宝箱だからね。鑑定結果を楽しみにしよう。
「麟瞳、他にも大きい皮や牙もドロップしたからな」
「査定が楽しみだな。相変わらず炎の飛ぶ斬撃の威力はハンパないな」
「使い所がなかなか難しいけどな。ボス部屋の一撃目ぐらいだもんな」
正輝のマジックアイテムの剣は火魔法が付与されていて更に炎を纏った斬撃を飛ばすことが出来る。威力が強すぎてパーティメンバーまで巻き込んでしまうので、なかなか混戦になると使えないのだ。
「じゃあ最後まで行くか」
ボス部屋の前まですぐに到着した。
「複数のオークが待っているはずだ。僕にも一匹は残してくれよ」
ボス部屋に入り切り扉が閉まる。オークが三匹待ち構えていた。僕は一番左のオークの顔に火魔法を撃ち、飛ぶ斬撃で追い撃ちし、近づいて首を刈った。その間に正輝が二匹のオークを倒した。しっかりオークの肉が二つドロップし、魔石と合わせて回収して宝箱を待つ。銅色の宝箱が現れた。
「麟瞳お願い!」
例の如く僕が宝箱を開ける。中には直方体のケースが入っていた。開けると包丁セットとかいろいろ料理道具が入っていた。
「よし、出るか」
ボス部屋の奥の一方通行の転移の柱から外へ出た。
結局初級魔力ポーションを三本と中級魔力ポーションを一本使ってしまった。また岡山ダンジョンに行って補充しないとね。今日は新しいことにチャレンジした大満足の探索になった。
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