第30話 正輝と岡山ダンジョンの一階層から十五階層を攻略
次の日も朝の鍛練から始める。メニューは同じで、昨日と同じように敵を想定しての素振りを行った。最後のストレッチをしている時に正輝が起きてきた。
「おはよう、麟瞳、綾芽ちゃん」
「おはよう正輝。よく眠れた?」
「ああ爆睡させて貰ったよ」
「おはようございます、正輝さん。学校があるんで失礼します」
朝の挨拶を交わして綾芽は急いで準備をして登校した。残った我々はゆっくりと朝御飯を食べて予定通り八時半に家を出た。勿論シャワーは浴びたし、今日の食材も出したよ。
ダンジョンに着くとまずは着替えをして受付へ、ダミーのリュックを背負って着替えの入ったバッグと刀のケースを持って行く。事前に正輝には荷物持ちは僕がすることを伝えておいた。受付では珍しく僕が一人では無いのでビックリしていたよ。二人分の荷物を預けてケースの封印を解いてもらってから武具店で武器のチェックをしてもらう。正輝はマジックアイテムの剣を使う。少し赤みがかった黒い剣身がカッコイイ、Bランクダンジョンの攻略時の金色の宝箱から出た逸品だ。確か買取り価格は八千万円だったと記憶している。因みに僕の刀は百万円だったはずだ。
最初はパーティ登録をせずに別々にダンジョンに転移する。セーフティーゾーンで合流して攻略開始、地図情報もシールドに映しながら探索出来るので僕が先行して行く。最初に会うのは単独ゴブリン、僕がすぐに討伐した。黒い靄になり魔石と棍棒を残して消えて行った。
「次は俺に任せてくれ」
次は二匹のゴブリンに出会い、一瞬で正輝が近づき倒した。相変わらずの速さである。討伐後に魔石が一個残っていた。
五階層まであっという間に到着した。僕が倒したゴブリンは魔石を必ずドロップし、それ以外にも棍棒とポーションがたまにドロップした。正輝は魔石が倒したゴブリンの半分ほどドロップしただけだった。
ボス部屋はパーティを組んでいないと一緒に入ることはできない。六階層のセーフティーゾーンで落ち合うことにして、最初は正輝からボス部屋に入ることにした。
五分とかからずボス部屋の扉が開いた。正輝は一瞬でボス部屋の討伐を終わらせたのだろう。僕も扉が開くとすぐにボス部屋に入り戦闘を開始した。ここのボス部屋なら大丈夫、問題なく終わらせて鉄の宝箱から五本の中級ポーションを得た。すぐにボス部屋奥の階段で六階層に降りて、セーフティーゾーンで正輝と合流した。
正輝がボス部屋を攻略した後には木の宝箱が出てきて、三本の初級ポーションが入っていたらしい。僕は鉄の宝箱から五本の中級ポーションを手に入れたことを伝えて、一旦六階層の転移の柱から外へ出た。
「綾芽ちゃんの言う通りだな。一目瞭然、麟瞳のおかげだったんだな。本当にすまなかった。麟瞳のおかげで稼げていたのに半分の取り分にしていて。それからマジックアイテムもほとんど渡さなくて申し訳ない」
「今更良いよ。僕もソロになって初めて知ったんだよ。魔石が五、六割の確率でしかドロップしないってね。僕はとても運が良いみたいだよ。攻略を続けよう。試してみたいこともあるしね付き合ってよ」
今度はダンジョンカードを重ねてパーティ登録をした後に六階層に転移する。
「十階層までは先程のボス部屋と同じような布陣でゴブリンが出て来る。遠距離攻撃もないから正輝が右から僕が左からしかけるようにしよう」
それからは攻略が加速する。ゴブリンパーティに遭遇するやあっという間に討伐完了。僕が二匹倒す間に残りは全部倒されている。討伐後には魔石と何かがドロップしていた。何かとは棍棒かポーションの事だからね。五匹も倒すと最低一、二個はドロップするんだよね。
「十階層のボス部屋はゴブリンアーチャーが入ってくる。正輝はまずそれを魔法で倒してほしい。アーチャー以外は今までと変わらず左右からアタックしよう」
ボス部屋に入り切ると扉が閉まる。火魔法がアーチャーを襲う。アーチャーをなくしたゴブリンパーティは一瞬でいなくなった。やっぱり僕は二匹しか倒してないけどね。ドロップ品を回収していると銅色の宝箱が現れた。中にはいつものポーション五本と違う色のポーションが五本入っていた。
「この赤いのは体力ポーションで、青いのは魔力ポーションだよね」
「ああ、そう思う。しかもどちらも中級だと思うぞ」
初めてこのダンジョンで魔力ポーションを見た。正輝が魔法攻撃をしたからだろうか?
十一階層で正輝が転移の柱に登録した後、セーフティーゾーンで弁当を食べることにする。
「この弁当美味いな。これは何の肉なんだ?」
「これはウルフ肉の香草焼きだよ。この肉も倉敷ダンジョンでのドロップ品でね、母さんが肉の味付けをいろいろ研究してるみたいなんだ」
「魔物の肉なんて食おうと思わなかったな。こんなに美味いと知ってたらドロップ品少しは持って帰ったのに………でも料理できる奴がいないな」
水分補給とトイレをすませて十一階層から再開する。
「ここからはアーチャーが一匹入ったゴブリンパーティで、普通のゴブリンとファイターの混成になっている。さっきのボス部屋の布陣と同じだ。正輝はまずアーチャーを魔法で仕留めてくれ」
先行するパーティを見付けては進路を変更しながら二時間程で十五階層のボス部屋にやって来た。順番待ちが一組いる。
「麟瞳さんこんにちは。覚えてますか私のこと」
「こんにちは。覚えているよ顔は、大学生のサークルパーティだよね。ゴメン、名前は覚えてない」
「
「ゴメンナサイ。モウイッショウワスレマセン」
「なんで片言なんですかー!」
とりあえず正輝にも紹介しておく。
「麟瞳さんはソロだと思ってました。あの求人票は麟瞳さんじゃなかったのか」
「いや、あれは僕が出したよ。今日は特別にパーティを組んでいるんだ」
「良かったです。双子の妹に勧めたんですよ。身内贔屓かも知れませんが、弓をやってて結構出来ると思います。八月のお盆前には面接をするって聞いてます。よろしくお願いしますね」
「良かったよ。誰も申し込んでくれないかと心配してたんだ」
真姫ちゃんのパーティの順番になった。
「求人票なんてものがあるのか」
「僕もここの支部長さんから聞いて、遠距離攻撃の出来る人の求人票を出してもらっているんだ。一ヶ月間ここの受付とホームページに求人票を出してくれて二万円だったよ。申込者と面談して、気に入った人とはとりあえず一回組んでみてからその後を決めれば良いらしいよ。その一回で終わっても良いし、短期契約や長期契約でも良いらしい。そこは当事者同士の話し合いらしいよ」
「京都でやってみようかな。どうやって仲間を見付けようか困ってたんだよ」
その話の後にこのボス部屋のレクチャーをする。
「この部屋は八から十匹のゴブリンパーティでアーチャーが一匹か二匹、残りがソードマンとファイターと普通のゴブリンだ。ここもアーチャーを先に仕留めてくれ。後は同じだね、頼ってばかりで申し訳ない」
「いやいや、気にしなくて良いよ。俺には遠距離攻撃があるんだから当然の戦略だよ」
順番が来た。部屋に入り切ると扉が閉まるのはいつも通り。前回来たときと同じでアーチャーが二匹で全部で十匹のゴブリンパーティだ。でも今回はこちらにも遠距離攻撃者がいるのが違うところだ。
まず火魔法がアーチャーを襲う。僕はソードマンに向かって仕掛ける。近づいて棍棒を投擲、剣を離した隙に両手で刀を持ち左から切り上げる。今まで練習してきた方法だ。うまく倒せた。剣は消えないうちに収納する。その間に二匹目のアーチャーも正輝の火魔法で仕留められている。後は作業のように順番に倒していった。ドロップ品を回収する間に銀色の宝箱が現れた。待ってました、銀さん。
岡山ダンジョンに初めて来た日に二つと、投擲の練習の初日に一つ出たがそれ以来である。銅色で残念とか思ったのが悪かったのだろうか?
「麟瞳が開けてくれ。なんか人によって中身が変わりそうで怖いな」
「開ける人によって中身が変わることってあるんだろうか?確かに綾芽が開けたときに女性用のブーツが出てきたな」
よくわからないが僕が開けさせてもらおう。中には体力ポーションと魔力ポーションが五本ずつとスキルオーブが一つ入っていた。
「凄いな麟瞳は、スキルオーブなんて久しぶりに見たよ」
「僕が開けなくても同じものが入っていたと思うけどな〜」
「でも麟瞳がいないと銀色の宝箱は出てこなかったと思うぞ」
全部回収して次の階層へと階段を降りて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます