第23話 《桜花の誓い》のパーティメンバーとお食事会

 木曜日と金曜日は朝の鍛練を綾芽と一緒に行った後、岡山ダンジョンで二日とも投擲の練習をしてから六階層から十階層を探索した。ボス部屋の宝箱も流石に鉄になり中級ポーションが五本だけ入っていた。求人もまだ希望者がいないとのことで、期限いっぱいまで募集してから面接をするようにしてもらった。


 そして土曜日、綾芽がパーティメンバーを呼んでの食事会の当日だ。この日のために僕はウサギ狩りを頑張ったんだよ。十一時半頃綾芽は駅に《桜花の誓い》のパーティメンバーを迎えに行った。

 

 食事はうちのグランドシェフ母上が当然料理した。二匹のホーンラビットはどちらも丸焼きになり、綾芽達が一匹で足りなければ二匹目を出すということで前日の晩には調理済みだ。既に内臓の串焼きやサラダ、スープと合わせて僕の腕輪に収納されている。御飯さえ炊けば準備完了である。


「便利だね、麟瞳がいると。どんな大規模なパーティーでも熱々で料理が提供できるな」


 母上、それは褒めているんだよね。


 正午に綾芽達は五人揃って帰ってきた。リビングを使って食事をしてもらう。キッチンで収納から料理を取りだして、綾芽が運ぶ事を繰り返しすぐに準備は調った。


 両親と僕はキッチンで昼御飯にする。メニューはボアカレーと野菜サラダだ。


 さあ食べようという時に綾芽がキッチンに戻ってきた。


「皆で食べようって言ってるんだけど」

「いいよ、恥ずかしいよ」

「俺はもうビールいただいてるから無理」

「お兄ちゃんだけでもお願い」


 拝むんじゃあない。綾芽のお願いには滅法弱い僕は連行されて行った。


「よっ、一週間ぶり。テストは上手くいったかい」


 ぎこちない挨拶とともにリビングへと入って行った。真っ先に先週の土日のお礼を又してもらったよ。一般教養のテストは赤点を取らなければ大丈夫と綾芽と同じ事を言っている。絶対に全員が脳筋パーティであることが確定した瞬間だ。


 ということでお食事会が始まった。ホーンラビットの丸焼きは大好評で、切り分けては食べてを繰り返しあっという間に無くなった。もう一匹あるよと伝えるとカレーが食べたいとのこと。先程から匂いが堪らず、是非食したいらしい。カレーは大量に作っているので皆が食べるのは構わない。全員が一杯ずつ綺麗に食べ切った。細い身体の何処に入るんだろうね。


「お兄さん、また一緒にダンジョンに行ってもらえませんか。今度の金曜日から私達夏休みになります。弓の可能性を広げたいんです。夏休みの間お願いします」

 

 弓術士の真琴が頼んできた。先週の土日で今までとは違うことにチャレンジしたから刺激を受けたのかな。


「ボクももっと教えてほしいです。それに正直収入も魅力的です」


 タンクの山吹からもお願いされた。県北から両親に無理を言って県立ダンジョン高校へ進学して来たらしい。親の負担を減らしたいそうだ。最終的にはなんだかんだで皆から頼まれてしまった。


「最後には五人で強くならないとダメだからね。あんまり頼られても困る。週に一回か二回なら夏休みの間付き合うよ」


 皆が大喜びしているが、何故か綾芽が一番喜んでいるように見える。派手なガッツポーズまでしているよ………。まあ今のところ急いでパーティを組む気も無いし、《桜花の誓い》からはいい影響を受けていると思っている。綾芽の頼みは断れないしね。


 その後は、来週に向けてということで、前回渡した映像コピーを元に勉強会が始まった。もっと楽しい話はないのか少女達よ。戦闘狂の五人組の内の四人は晩御飯に遅れると言いながら慌てて帰って行った。ちゃんとうちの両親にお礼は言って帰ったよ。


「お兄ちゃんありがとう。皆大喜びで帰ったよ」

「ちゃんと予定を出してくれよ。こちらもダメな日は早めに教えるから」

「分かったよ。出来るだけ早く予定を決めて渡すからよろしくね」


 七月後半から八月も忙しくなりそうだ。僕の短期の目標は投擲のスキルを取得することと、遠距離攻撃が出来る仲間と岡山ダンジョンの中層を攻略していく事だ。それに《桜花の誓い》の育成を加えておこう。


 晩御飯は昼のカレーの残りで焼きカレーを作って食べた。グラタン皿にご飯、カレー、生卵そしてシュレッドチーズを重ねオーブンで焼いたもの。中学生の時まで良く食べていた懐かしい味だ。


 あれだけ大量に作られたカレーも一杯分だけ残ったので、ストックとして腕輪に収納させてもらった。


 では、お風呂に入って寝ることにしよう。 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る