交差する射線

【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名

(一)

 ティム・アレンビーはマンションの共用廊下部分にいた。膝立ちの姿で玄関ドアの鍵穴に針金とアイスピックを突っ込み、何度か針金を抜き差ししたり左右に揺さぶったりしたあと、鍵穴を回した。

 立ち上がると、ドア横で拳銃を構えて待機していたアレン・キムに視線を向けて頷いた。アレンもうなずき返してきた。

 そしてティムは「李安雄」と書かれたテプラを貼付された表札の隣にある、年季の入った鉄製の玄関ドアのノブを回してドアを引いた。


(続く)

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