18.悪魔 リュシアン視点③
第79話
叔父であるルナール公爵から手紙が届いた。
以前、毒入り紅茶の件を話す約束をしたが、いろいろあって延期になってしまったため、改めて日を設けて欲しいとのことだった。
叔父上はジスレーヌが冤罪なのだと思っているようだ。
公爵の娘であるオレリアが令嬢たちの嘘が発覚した場面にいたので、父親に事情を話してくれたのだろう。
叔父上からの手紙には、婚約者がひどい嘘に巻き込まれ災難でしたねというようなことが書かれていた。
実際は嘘の証言はあったとはいえ、犯人はジスレーヌで間違いないのだが、冤罪だと思わせておいたほうが都合がいいので訂正しないでおくことにする。
うまく話を取り繕わなくては。
それにしても、叔父上が王位簒奪を目論んでいるなんて話を聞いてしまった後で会うのは憂鬱だった。
あの人はにこやかな笑みの裏で、俺を後継者の座から引きずり降ろそうと待ち構えているのだろうか。
数年前、パーティーで叔父上が貴族たちに不満を漏らすのを聞いてしまったときの、嫌な気持ちが蘇る。
憂鬱な気持ちを振り払い、馬車に乗り込んだ。
***
ルナール公爵邸につくと応接間に通された。
叔父上は機嫌の良さそうな笑みを浮かべて待っていた。ソファにはなぜかオレリアも腰掛けている。
「いや、リュシアン殿下。大変だったそうですね。ジスレーヌ様のこと、結局冤罪だったのでしょう?」
叔父上は眉根を寄せて、気の毒そうに言う。俺は平静を装ってうなずいた。
「はい。ジスレーヌに嫉妬した令嬢たちが嘘を吐いたようで……。私も彼女たちの話を鵜呑みにしてしまったことを深く反省しています」
「ジスレーヌ様には気の毒なことをしましたね。私も屋敷の管理者として胸が痛みます。殿下、どうかこれまで以上にジスレーヌ様を大切に扱ってあげてください」
叔父上は真面目な顔でそう言った。まるで本心からそう言っているように見えてしまうほど真剣な目だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます