11.許さない
第52話
次の日の朝、なんだかやけに早く目が覚めてしまった。カーテンの向こうの景色はまだ薄暗い。
ベアトリス様の息子さんが亡くなっているという話を思い出すと、胸が重くなった。
ベアトリス様はとてもいい人だ。
なのにお屋敷に閉じ込められてそのまま亡くなって、とても可愛がっていたであろうお子さんも子供のうちに亡くなってしまうなんて。
まだ起きるのには早いけれど、考えていると頭が冴えてもう一度眠る気にはなれなかった。着替えて一階に降りることにする。
厨房で朝食用のサンドイッチを作り、昨日余った分のお茶をカップに注いだ。カップは二つ用意する。トレーに載せて食堂まで運んだ。
食堂で一人、もそもそと黒パンのサンドイッチを口に運ぶ。
私以外に誰もいない食堂は、静かで薄暗く、心細かった。ベアトリス様がいなかったら、私は今も怯えながら過ごしていたと思う。
その時、食堂に冷たい風が吹き、ベアトリス様が姿を現した。
「おはようございます、ベアトリス様」
いつも通りの顔をするように努めて、ベアトリス様に声をかける。
「あの、そこのテーブルにベアトリス様のお茶を置いておきました。よかったら飲んでください」
ベアトリス様は、昨日の様子からお茶を飲める……というのかわからないけれど、吸収できるように見えたので、カップを向かいのテーブルに置いておいた。
ベアトリス様はカップをじっと見ている。ベアトリス様がかがんで口を近づけると、やはりお茶の色は先ほどまでよりも薄くなっていた。
「やっぱりお茶なら飲めるんですね! 明日から毎日、ここにお茶を置いておきますね」
私がちょっと元気になってそう言うと、ベアトリス様はこくんとうなずいた。
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