第16話

 部屋の中で歩き回り、どうしようかと考える。部屋を出るべきなのはわかっている。


(監視係さん、また来てくれないかしら)


 とにかく自分以外の人の姿を見たかった。けれど、監視係さんは次に来るのは七日後だと言っていたから、今日来てくれることはあり得ないだろう。


 がっくり肩を落としたところで、昨日もらった魔石のことを思い出す。そうだ。プレートにこの石をはめれば、事務所に連絡が取れると言っていた。


 ちょっと元気が湧いてきた。玄関ホールまで行けば、監視係さんに連絡をして、人の声が聞けるかもしれない。屋敷の中を歩くのは怖いけれど、それを目標にすれば何とか頑張れる気がする。


 私は魔石を握りしめ、気合いを入れてドアノブに手をかけた。



 屋敷の中は静かで、女性の姿は見当たらなかった。けれど油断してはならない。昨日も何も起こらないと思ったところで、突然人影が現れたのだ。


 幽霊相手に意味があるかはわからないけれど、息を潜めてそろそろと音を立てないように歩く。


 ゆっくり階段を降りて、応接間を通り、何とか玄関ホールにたどり着いた。


 扉横のプレートのそばまで行き、緑色の魔石をはめ込む。すると石がぱっと光った。これでやっと人の声が聞ける。しかしそわそわしながら待っていたのに、プレートからは一向に人の声は聞こえてこない。


 もう一度石をはめ込んでみる。しかし、光るだけで事務所に繋がる様子はない。


 私はがっくり肩を落とした。


「留守なのかしら……。それとも、壊れているとか……?」


 ひとまずは諦めるしかないようだ。私は魔石を懐にしまい直し、玄関ホールを後にした。


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