恋愛禁止は溶けましたっ!~推しアイドルと同僚になって同棲することになったマネージャーの話~

ささき彼女!@受賞&コミカライズ決定✨

第一章:月が俺に落ちてきた⁉

プロローグ 俺と世界とキミと月


 ――その時代、世界は間違いなくキミ一色いっしょくだった。

 

 街の中の広告も。テレビのニュースも。学校での話題も。

 キミを中心にして世界は回っていた。


 月城つきしろなゆた。

 

 全国のアイドルが参加する【アイドルオールスター総選挙】2連覇。

 ドラマ、CM、映画出演本数ランキング年間1位。

 時の芸能界を完全に制覇した伝説のソロ・アイドルだ。


 彼女には確固たるポリシーがあった。

 マスコミの前には極力出ない。SNSも一切やらない。

 握手会やチェキ会、生配信などのファンサービスもなし。


 〝触れ合える身近なアイドル〟としての商法が主流の現代において。

 〝気軽に会いに行けないアイドル〟としての彼女の存在は完全に異彩いさいを放っていた。


 謎を着飾った少女ミステリアス・ガール鉄壁の女クール・ビューティ

 完璧なる黒髪処女ミス・パーフェクト異端美女イレギュラー

 画面の向こうの憧憬オーバー・ザ・ドリーム――世間を騒がせる呼称には事欠かない。


 しかし、だからこそというべきか。


 ――キミは誰もが憧れる、まさしく時代の【偶像アイドル】になった。

 

 渋谷のスクランブル交差点に立つと。

 ガラス張りのビルのデジタル・サイネージの中で柔らかな微笑みを浮かべるキミの姿をよく見かけた。

 ビルの背後には夜空にぽっかりと月が浮かんでいる。

 都会がどれだけ煌々こうこうと極彩色の光をはなち夜空の星をかすませていても、月だけはその存在がはっきりと分かった。


 しかし、そんな月にどれだけ手を伸ばしても――決して届くことはない。


 数多の人が周囲を通り過ぎていく。

 彼女が徹底的な【偶像アイドル】であったとするならば。

 まわりの雑踏のうちの幾人いくにんもが彼女の【信仰者ファン】であることだろう。

 

 キミのことをメディアを通して目にしたり、話題として口にするたび頬を緩ませてする。

 人をそれほどまでに動かす魅力がキミにはあった。


 そんなキミ――完全無欠で幻想的な美少女・月城なゆたと。


 

 俺はこの先、の【同棲生活】を営むことになるのだった。


 


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推しアイドルとの純情どたばたラブコメ、開幕です――!


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