第10回🐔俺は “俺の考える面白い” でぶん殴りたかった2


 ◆深夜テンションの怒涛の自作語りその2


 快楽原則にのっとって、ご褒美をちらつかせれば、高めの読書コストも何とか乗り越えてくれんかな? と思った八軒。どうやって読者をハメ殺すか考え始める。


 快楽原則で一番単純なのは、性欲だ。


 そこまで極端に言わなくてもヒロインだ。可愛いヒロインが、~様、~様! すきすきー! ってやればいい。もしくは奴隷設定。

 ヒロインが奴隷として登場する作品が多いが、あれは、奴隷というものが、「無条件で言うことを聞く女。自由にしていい女」の象徴だからだ。

 快楽求めて読書してんのに、現実みたいに女の機嫌取ってられるか! って事だ。


 類型は困ってる可哀そうな女。弱ってて手を差し伸べるべき女。

 これを助けることで男は快楽を感じる事ができる。

 ボーイミーツガールものは全てこの形を踏襲する。女の子を助けて冒険。

 王道中の王道パターンだ。


 だが、それはもはやありふれているだろう。ことネット小説界隈では手垢がついている。


 メイン駆動力にはふさわしくない。だが、要素は使える。保留。


 これが、ステラの色仕掛け作戦や、シャワーシーンからの自由にしていいから助けてほしい発言となる。



 次、ざまぁはどうか?


 エドガーのお話は一応追放ざまぁの形を取っている。冒頭で、ムカつく上司にコテンパンにされたのち、左遷される。


 古典的な勇者PT追放物では、主人公が去った後、PTが上手くいかずひどい目にあう。それを別視点で見せて、溜飲を下げるという構造になっている。


 そこには、主人公の意思は介在せず、勇者PTが自業自得的に自滅するのだが、これも善しあしだと思っている。まず、ざまぁパートが物語の本筋と乖離しやすい。ざまぁによるざまぁの為の話数を割いたりする。独立しているから、お話の筋としては有っても無くてもいい添え物と化す場合がある。


 それが行き過ぎた結果、なろうでは各話の題名にここがざまぁポイントですよ! と書いたりする。もしくは、あらすじにざまぁは何話からとかね。


 これは口さがなく言ってしまうと、駄目だと思う。

 少なくとも八軒の美学に反する。表現のための道具に使われている。


 だから、主筋のPVが伸びずに、ざまぁの話だけPVが伸びたりするハメになる。

 八軒は、誰になんと言われようと、否定派である。ざまぁを下手に使うくらいなら、無い方が良い。


 だが、上手くざまぁを使っておられる作家先生を見ると感動する。そもそも嫌なヤツをぶっ叩いてスッキリというのは、ざまぁなんて新しい言葉で表現しなくても昔からある、王道パターンである。


 ひるがえって、エドガーの話には使えるか? 


 少なくとも物語の駆動には使えない。主筋の世界観語りを円滑にするためには、主筋に快楽を盛り込まねばならない。


 本作のざまぁ要素は、古巣に残ったリリサというヒロインの報告という形を取る。

 これは、軽く溜飲を下げてもらうと同時に後の重要な伏線になっている。こだわり八軒は、ざまぁパートに最重要の伏線をぶち込むのだふははは(*'ω'*)



 ということで、やはり主筋で快楽がいる。


 マズローの欲求五段階説というのがある。

 八軒の本職の看護学では、一年生で習う。心理学理論で、人間の欲求には5の段階があるというものだ。すなわち



 自己実現の欲求 やりたいことをしたい

 承認欲求 認められたい褒められた

 社会的欲求 社会に触れていたい欲求。ぼっちは嫌だ

 安全の欲求 安全な状態でいたいという欲求

 生理的欲求 食事がしたい、寝たい、排せつしたい等の体の欲求


 上の方が上位の欲求。

 下次の欲求が満たされるごとに、もう一つ上の欲求を持つようになる……

 というもの。段階的にこれが満たされる事で、人間の精神は満たされる、というものだ。


 幸せになりたい! というのも、みな等しく抱く欲求だなー


 じゃあ、ざくっと幸せになるフルコースを提供すれば気持ちいいのでは????


 幸せにするには、一回不幸になってもらわないとな?

 どうせなら――


  


 よし、エドガー君。君は無になるのだ。




 ハードワークでボロボロになってもらった。安全、生理剥奪

 ラトクリフに1年間、苛め抜かれてもらった。承認剥奪

 心のよりどころのミラージュはボッシュートで左遷 自己実現 社会性剥奪


 エドガー君にはもう何も残っていない。




 しかし、そこからの新天地――


 !!


 素晴らしい仕事環境!

 自分を認めてくれる女の子!

 好奇心を刺激しまくる、未知の機械!

 頼ってくれる、理解のある上司!


 そしてそこで、起こる大きなトラブル!

 それをビャー!っとやってきたエドガー君が華麗に解決!

 みんな賞賛! 認められまくりの、受け入れられまくり!


 とどめに、閑話で、実は彼は超優秀であったことは知られていて、呼ばれて此処へやって来たんだよ! という持ち上げだ!



 これは気持ちいいいーーーー!!!!!!!!

 エドガーに感情移入すればするほどたまらなく気持ちいい展開を構築した。

 生理的欲求に関しては、その後のスローライフパートでステラが甲斐甲斐しく世話をしてもらう事にした。



 これだけ快楽要素でコントロールすれば、さすがに読んでもらえるだろうと、設定をばんばか入れた。

 まぁ、八軒も素人ながら、昔から文章は書いていたので、読みやすい文章といのはそこそこ心得ている。看護記録とかでも、簡潔に書く癖がついてるし。

 

 おかげ様で、現在エドガーのお話は大盛況を得て、コンテスト週間100位以内に入った。読者選考を突破するのはまったくもって不可能ではない水準だ!!!


 ここまでの構想を練った段階で、エドガーの話は、8話までをトップスピードで駆け抜ける事が決定した。主題である兵器を作ってスローライフをやるには、

 という禊が済んでからでないと始まらなかった。


 だから、今やっている9話からが本当のエドガーのお話。

 兵器作ってスローライフな話なのだ。


 ◆テンプレってやっぱり偉大だったんだな

 途中で気づいた方もいたかもしれないが、エドガーの話は上記の理論変遷を経て、いつの間にか、追放ざまぁのテンプレにスポッと収まってしまった。

 また、この構図は、異世界恋愛物の、全てを奪われた後、スパダリに愛されて幸せになるパターンと同一のものだ。

 テンプレはやはり、隙が無いから愛されてテンプレになるのだなと思った。


 もう八軒も安易にテンプレを否定するのはやめようと思う。




 ◆タイトルも重要だったんだよって話


 一番最初プロットを切ったときの題名は

『技工士艦長エドガーと魔導飛空艇月光』

 だった。


 間違いなく埋もれるヤツ。技術の人が主人公で、魔導飛空艇みたいなやつが出てくる、ぐらいしかわからん。典型的に駄目。


 読者心理コントロール作戦を決行する過程で、を最大限使う必要性を感じた。


【南国お気楽倉庫部隊】 

 これだけで、楽しそうなワードだ。浜辺で戯れる水着のねーちゃんたちが見える。


【左遷されたけど、毎日快適で幸せです】

 ばちっと、快適に幸せになるお話だよ! と明言した。一切の誤解のないほどに。


【エドガーの立身出世伝】

 男の夢って成り上がり、出世だよね? エドガーの出世は確定です!!



 これらの要素で、エドガーのお話は、期待感とワクワクとその後の幸せ人生を予感しつつ安心して読める物語として、ラッピングできたわけだ。


 どうだっただろうか?

 八軒の提唱する、読者ニーズ読むより、可能ならばコントロールしちまえ!

 作戦は。


 今回は全ての題材がガチっと組み合わさったからできたところがある。

 毎回こんなこと考えながら書いてないが、こういう感じで作ったお話である、ということを知ってほしかった。


 エドガー君のお話、これからもよろしくね!!!!!





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