第4話 麻衣
あれから数日経ちました。
佐々木さん、どうして返信をくれないの? 返信がないのに次のメールは送れません。まさか、それが目的?
いやだわ、ふふ。落ち着いて、私。既読はついてあるから読む気はあったのね。私を拒否する気持ちはないってことですよね。
そうよね、佐々木さんはあんなに私のことが好きだったんだから。
毎日メールをくれて必死で私を誘って。私の体を見て嬉しそうでしたね。細くて白い女が好きなんですね。
嬉しかった。私、痩せている自分の体が嫌だったから。男の人は少しぽっちゃりした女子が好きだってよく聞くから。
「痩せたーい」
堂々とそんなことを言っている女子がずっと羨ましくて憎かった。
女子は私の体型を羨ましいと言い、男の人は「麻衣さんはスタイルいいですね」と言いながら私を誘うことは一度もなかった。
みんなお世辞。標準より少し細い女には「細い・痩せている」と言っておけばいい気分になると思っている。
そんなの全員に当てはまるわけではない。私はもっとぽっちゃりした体型がほしかった。
もう少し太ろうと思い食事を増やそうと思った。でもだめなの、胃がそれ以上受けつけないの。
お菓子なら食べられると思った。コンビニスイーツやカフェに行く回数を増やしてみた。けれども体質なのか、私はなかなか体重が増えないし太ることもできなかった。
でもこの体型でよかったと思えたことが一度だけありました。
佐々木さんは痩せている女が好きだと言っていた。そのときばかりはこの体質に感謝をしました。
佐々木さんの奥さんは結婚してから幸せ太りをしたと言っていましたね。
結婚を選んだのだから、佐々木さんだって当初は奥さんを愛していたはず。けれども十年以上経つと、そうでない気持ちも芽生えてくるのでしょうか。
もともと痩せた女が好きなのと、奥さんが太ってしまったこと。この二つが重なり、私は佐々木さんに選ばれたんでしょうね。
二人の時間は幸せでした。あんなに話して笑ったのはいつぶりでしょう。
私と佐々木さんの相性は抜群だったはず。それなのに……。
ああいけない。取り乱したところなんて見せられない。大丈夫、準備はしているから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます