第8話

 コクピットに戻り、すぐにコントロールパネル上の航行軌道を確認する。

 マイクから二人に声をかける。


「真守、有美、まもなくカプセルの射出を実行する。君達の勇気と決断があれば必ず成功する。自分と仲間を信じてこの試練を乗り越えてほしい。幸運を祈る」

「我々は船長を信頼しています、ただあなたの言葉を信じて進むだけです」


 射出は自動で行うこともできるが、万が一のトラブルを避けるため、手動で行うことにした。射出スイッチを押すのは自分だ、さすがの私も手が震える。


 コントロールパネルから一時も目を離さず、射出ポイントにひのとりの軌道が重なるタイミングを見計らう。まもなくその時が訪れる。


「射出準備に入る、固定アーム解除、射出ロケット起動、秒読み開始」コンソール画面のタイムカウントが目まぐるしく変化する。

「五秒前、四、三、二」軌道が射出ポイントと重なった。

「射出!」スイッチを押すと、『INJECTIONインジェクション』の文字が緑色に点灯した。


 ドウンという音とともにロケット噴射の振動が船内に響き渡る。

 監視モニターから、カプセルが徐々に船体から離れていく様子が伺えた。

 細かな白い塵が紙吹雪のように舞い散る。


「射出成功、後は自由落下だ……大気圏突入後まで待機してくれ」

「了解」私はふうっと息を吐いて、汗をぬぐった。


 突入角度の自動調整を行うと、次第に加速し時速1万9800キロメートルで急降下を始めた。

 カプセルの耐熱シールドは表面温度1500度まで上昇する。

 カプセルが真っ赤に燃え上がる様がモニターに映し出される。

 それはまるで炎の翼で舞う不死鳥のように想えた。

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