第32話アリーはパジャマパーティーをしたい
「アリー! ああ、私の可愛いアリー」
「お姉ちゃん」
アリーと姉ソフィアは自室に戻ると抱き合って喜んでいた。
「ああ、もう、お姉ちゃん、このままアリーを押し倒しちゃいたい位!」
「お姉ちゃん、ア、アリーはいつでも心の準備はできてるよ!」
そして、二人共抱き合ったままベッドに倒れ込む。
「へへ、お姉ちゃん、ベッドが気持ちいいよう」
「可哀想なアリー、きっと今まで苦労したのね」
そう言って、ソフィアはアリーの髪を優しくなでる。
「今日はパジャマパーティーだね」
「そうね。これまでのいきさつをお姉ちゃんに教えて。きっと大変なことがあったんだと思うけど、お姉ちゃんはアリーのことは何もかも知っておきたいの」
「うん。順に話すね」
『ヤバめの展開になるかと思って焦った』
聖剣はこの姉妹がいけないことを始めるんじゃないかと一人心配していた。
しかし、杞憂だった。いくら仲良しとはいえ、そういうことはしないらしい。
「(アリー、僕はここらで異空間に意識を閉鎖するよ。何かあったら、僕の名前を呼んで)」
「(魔剣さん、いたの?)」
「(逆にどっかに行けると思うの? それに今まで君がお風呂やおトイレに行っている時、僕がどうしてたと思ってたの?)」
「ひゃぁ!!」
「どうしたの? アリー?」
「う、ううん、何でもないの」
アリーはソフィアに髪を撫でられながら気持ちよさそうにしていたが、突然の聖剣の突っ込みにびっくりした。
「(魔剣さん、まさか覗いてなんてないよね?)」
「(僕がそんなことすると思うの?)」
「(......)」
「(君、失礼だね! 僕は紳士だよ。そんなことする訳ないだろ? これまでそういう時は異空間に意識を隔離してたんだ)」
「(ごめん。そうだったんだね。私、全然気がつかなかったよ)」
聖剣は確かに今まで言ってなかったけど、普通自分から確認しないかな? と、呆れたが、それより重要なことを告げた。
「(アリー、それより、これから君の旅をお姉さんに話すんだから、例のアネモネの薬の話をして、飲んでもらうといいよ。きっと、お姉さんの魔力障害は治るよ)」
「(ありがとう。聖剣さん♡)」
『珍しく僕のことを聖剣と呼んでくれたね。でも、普段から意地悪してたんだね』
聖剣はアリーの意地悪に気が付いたけど、今日は何も咎めまいと思った。二人の姉妹のパジャマパーティーを男の自分が覗く訳にもいかないし、二人の仲睦まじい様子に心をうたれた。
そして、意識を異空間に閉鎖する。
「お姉ちゃん、私ね。ダンジョンで仲間に見放されて死にかけたの」
「え! ダンジョンになんて潜ってたの? まあ、なんてことでしょう。あんな危険なところに女の子が行くなんて! それに死にかけたって、なんてことでしょう!」
「お姉ちゃん」
「......アリー」
ソフィアはアリーの顔を抱き寄せるとぎゅっと抱きしめた。
「(お姉ちゃん、胸圧で窒息するよ)」
アリーは柔らかい姉の胸の中で窒息しそうになっていた。
アリーが死にそうになったと聞いて、無意識にソフィアはアリーを抱きしめたが、ソフィアの胸はアリーよりだいぶ育っている。
「お姉ちゃん。大丈夫だよ。私は何とか生き延びたから」
「そう。......よかった」
涙ぐんでアリーを見つめるソフィア。アリーから安心できる言葉を聞いて、ようやくアリーを開放する。アリーは圧殺から免れた。
「でも、そこで吸血鬼になっちゃったの。それでね、私、製薬のスキルが手に入ったの」
「きゅ? 吸血鬼?」
ソフィアは慌ててアリーを見つめ直す。そして、アリーの犬歯が以前より大きくなっているのを見てとると。
「アリー。そんな......全然無事じゃないじゃない。どうしてこんなことに」
「アリーはアリーだよ。何も変わってないから安心して」
「そうね。どこからどう見てもアリーに間違いないわ。私、そんなこと気にしない。アリーは私の一番大好きな妹よ。何があってもお姉ちゃんはアリーの味方よ」
「ありがとうお姉ちゃん」
そして、アリーはこれまでの冒険を話した。全く事実と異なるが、本人がきちんと理解していないので、仕方がないが、ちょっと冒険して来たと言う感じの話だった。
実際は数々の奇跡を起こし、街をスタンビードから救い、疫病を治し、沈黙の聖女と崇められていることを彼女は知らない。
「だからね。お姉ちゃんにはこのお薬を飲んで欲しいの」
「アリーが作ったお薬ね? 本当に私は魔力障害なの? あれは魔術協会でも公式には認められていない病気よ?」
「私を信じて、お姉ちゃん。それでお姉ちゃんの魔法は本当の力を発揮できるから。それで、二人で魔法学園試験を受けて、二人で学園に行こう、ね?」
「うん、わかった」
ソフィアがアリーの薬を飲んでくれると言ってくれたので安心するアリー。
だが、ソフィアが意外な申し出をしてきた。
「アリー。じゃ、お礼に私の血を吸って」
「え?」
吸血鬼は普通直接吸血をしない。やはり、人間には恐怖を与える。それで、吸血バーで採血した血を飲むのが一般的だ。
「いいのよ。吸血鬼は時々血を飲まないとダメなんでしょ?」
「......そうだけど」
アリーは姉の血を飲むことに躊躇するが。
「いいのよ。お薬のお礼よ。私、アリーと同じ吸血鬼になったってかまわないわ」
「お姉ちゃん、血を飲んでも吸血鬼になんてならないよ」
「そう、じゃ、何も問題ないね」
アリーは断る理由もないので、恐る恐る姉の首筋に牙を立てて血を飲んだ。
「「あふっ♡」」
アリーは忘れていた。吸血行動は性的な興奮を覚える。そして、相手もそうなのだ。
ソフィアは思わず、アリーの唇に口づけしてしまった。
「ごめん。アリー。つい、アリーがあんまり可愛くて」
「いいよ。お姉ちゃん、でも、これ以上はいけないよ」
「......そうね。私たち、まだ早いよね」
聖剣がいたら、それ以前に女の子同士の上、姉妹だと言うことを忘れないで欲しいと思っただろう。
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