繰り返し見る夢の中での死を回避したいんだけど……

さんご

第0話 プロローグ

 朝霧が残る早朝、行きなり親父に起こされて、朝飯を無理矢理に食わされた。


 それから簡単に説明されて、兎に角戦闘準備をするように言われ、食堂を追い出された。


 訳が分からんが、取り敢えず準備を始めるべく武器庫に向かった。


 俺は厳重な感じの扉の鍵を開けて館の武器庫に入り、据え置かれた武器や防具の並びから、自分の身体に合いそうな物を見繕う。


 今回は訓練中によく使ってきた革鎧と、無難に細身の剣を選んだ。


 どちらも重量が軽めの物で、戦場を走り回っても俺の負担にならなそうな事が選定理由だ。


 まあ今回の隣村とのイザコザによる戦闘では、俺の分担は親父の補佐が主な仕事で、命令の伝達や負傷者の救援とかをする分には、十分な格好の筈だ。


 これが村の運命が掛かってるとか言うマジな戦争なんかだと、俺達領主家の者が先頭に立って、重武装の金属鎧を着て剣を振り回すような、大立回りが要求されるんだろうけどな。


 装備を整えた俺は、館の前にたむろする常備兵と、村人から選抜された義勇兵の集団に近寄って行く。


 彼等の多くは、未だに集められた理由を聞いていないのか、知り合いとの無駄話を続けながら、領主であるうちの親父が出て来るのを待っているようだ。


 俺がそそくさと歩き集団の端に辿り着くと、その中から顔馴染みの若い奴が、俺の存在に気がついたのか近寄って来た。


「よう、若様。

 今日は何の為に、俺達を武装させて集めたんだ?

 おっさん達に理由を聞いても、領主様が言うまで待ってろとしか返ってこないし。

 詳しく知ってるんだろ? 」


「いや。

 俺も起き抜けに、武装して玄関前に行けとしか聞いてないよ。

 ただ、親父と他の人との話を漏れ聞いた限りじゃ、相手は隣村らしい感じだ。 」


「なんだ、そうか。

 隣村とは、最近どんな風な付き合いだったんだ?

 俺は特に関係がないから、良く知らないんだよなあ。 」


「俺も似たようなもんさ。 」


「だよな。

 それより俺はこれが終わったら、彼女についに告白する事に決めたぞ。

 死んじまったら、それも出来ないって気が付いたからな。 」


「ふーん。

 まあ、頑張ってみれば? 」


 他人の恋バナなんかに、微塵も興味がない俺はぞんざいに返事をしていたら、親父が玄関扉からゆっくりと現れた。


 さて、どんな話をし出すか、静かにして待とうかね。




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