第8話 ドライフラワー病
詩編なんて辞書のページを丸々飲み込んで、飲み干したわけじゃないにそう、易々とは諳んじられない。
勝手に花の生命の墓場から才能を線引きされるだけ、と目に見えている。
「僕らはドライフラワーなんだろうね。僕には妙な親近感を覚える」
「ドライフラワーにも長所はあるよ。私は好きだもの。感性の基準と、ドライフラワーの枯れた具合をどうして、そんなに気にしてしまうの?」
「僕はまだ若いのにとうに枯れ切ってしまったんだね。だから、こんなところにいる」
「感性は測れないよ。普通の仮面をかぶった道化師なんて素敵じゃない」
君の憤り、私は知っているよ。君の文学への真摯さは惚れ惚れするほどだった。
私は春の夕間暮れに彼に囁く。
「今から、そのドライフラワーショップに行かない? 外泊届をこっそり出して」
夕月夜もそのうち足音を伴ってやって来る。腕時計で確認したらもう、バスの出発時間前あと少しだった。
私たちは再び、病棟へ戻り、白い閉鎖病棟を後にした私たちは外泊届を出して、そのドライフラワーショップへ向かった。
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