クレジットカードの不正利用に二回も出くわした件 2)予兆

「もう大変なんですよー。クレジットカードが不正利用されて。もう信じられない!」

甲高い声にMは仕事の手を止めた。


 職場内の噂話だ。人様のプライバシーに踏み込んではいけないという理性と、好奇心がせめぎ合う。

「え、どのくらいやられたの」

好奇心を抑えきれなかった人物に、Mは感謝した。

「二桁万円ですよー。カード保険で補填されるとか言われても、最悪です」

「俺もやられたよ」

まさかの暴露である。Mの耳は研ぎ澄まされた。


「急にカード使えなくなって、それでわかったんだけど。明細よくよく確認したらさ、ちょっとずつそれこそ千円前後、毎月覚えのないのがあってさ。あれ、そうやってバレないかどうか探ってからやるらしい」

さすが先輩被害者はよく知っている。

「もう最悪です。カード会社の保険で補填されるといっても、腹立ませんか。人の金で。泥棒するなってやつですよ」

Mは心の中で賛同した。結局は犯罪者が得をしているではないか。許せん。


 とはいえまぁ、他人事である。Mはまた、仕事の資料を手にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る