思い出の空き地は重いで~((ぉい

僕は小さいころ、学校から帰るときによく近道して帰っていた。

夕日が照らす中、その草むらに放置された産業廃棄物であるコンクリートブロックに登り、夜の闇に包まれていく町全体を見下ろしていた。

学校では誰も取り合ってくれず、からかわれ、いじられ、精神的に疲れ果てていた。

そんな帰り道に立ち寄った場所だ。

そこから見る街、それは自分の居場所を明示する場所だった。

家々の灯りは、はっきりと「ここに帰っておいで」と自分に語りかけていた。

そのうちの一つに自分が帰ることで、町を構成する一員として認められるような気がした。


--./.-/-.-/-.-/---/..-/


ある日、僕は家に帰る途中だった。

帰り道、待ち伏せしてた奴からいじめられ、草むらに逃げ込んだ時にいつもの近道に入った。

そこには僕の知らない「君」がいた。

その時の「君」は泣いていた。

僕の座る場所であるあのコンクリの上で。

「どうしたの?」と聞くと、「泣きたくない。」と答える。

「泣かないで?」と言うと、「悲しかったよ。」と答える。

「ここにいた?」と聞くと、「ずっといたよ。」と答える。

そしたら「君」はわぁんと泣き出した。

僕は何も聞かなかったことにして、コンクリの後ろにある電子レンジに座って見上げる。

「君」は背中を丸くして、なおも泣き続けていた。

僕は最後に「僕が影になるから、「君」はできるだけ明るくなって帰りな」と言った。

そしたら君はすぐに泣き止んで、「じゃあ自分は太陽になる!」と言ってコンクリから降り、走り去った。


.../../.-./.-/-./../-.-/---/


ある日、いつもの近道を通ると、「立ち入り禁止」と規制線が張られていた。

その場所は、いつも来ていた草むらだった。

すでにクレーン車やショベルカーが来て僕の想い出を片付けていっていた。

あのコンクリも、もうそこには無かった。

僕は近くの看板を見た。

そこには、「空き地を整備しています」と書かれていた。

その日から、僕は近道を通ることをやめた。


-.-/.-/-./

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る