時を売る人

 最近、「時間を売ってお金を得る」という言葉に出会って納得した。

 まさにいまの私がそうだよなあと思って。(自己啓発とかではよくある話なのかもしれないけど、今迄全く自己啓発には手を出さなかったので全然知らなかった)決められた労働時間の中で作業を行って、それで報酬を得る。自分の時間を売って、お金を得る。この「時間を売ってお金を得る」はネガティブな意味として使われていて、納得もしたのだけどわたしは今迄「時間を売る」という行為をそこまで「悪し」と考えていなかったことにも気がついた。どちらかと言えば、時間を売ることに魅力さえ感じてたと思う。

 というのも、わたしはたぶん「時間を買う」ことがすきなのだ。観劇が趣味なのだけれど、わたしの中で観劇は「時間を買う」ことだと思っている。いろんなことがすきなときに画面の中でできてしまう現代において、決められた時間・決められた場所に足を運んで、見ず知らずの人と隣合せで約2時間やそこら座席に拘束される。演劇は戯曲が販売されないこともあるし、映像が残らないことも往々にしてある。そんなときには時間と空間を買ったのだろうなと思う。

 そう思っているわたしからしたら尊敬するカンパニーの人たちは「時間を売る人」なのだと思う。それでは、なぜこんなにも違うのか。わたしもわたしの尊敬する人たちも自らの時間を使ってお金を得えていることには変らない。というか誰しも時間の違いはあるにしろ全くもって時間を使わずにお金を得ることはできないはず、と考えてわたしなりにたどり着いたのが「体験」だった。

 わたしがなぜ観劇がすきかっていうとそれは「体験」という行為だからだと思う。2時間やそこら座席に座って今迄出会ったことのないような感情や衝撃と出会い体験する。それが演劇だと思ってる。もちろんこれは演劇に限らず、本や映画、ほかのものでもそうだと思うんだけど。

 そりゃあ「体験を売る人」と自分を比べちゃあまりにも違うよね、と思いつつも、「体験を売る人」への憧れはあるわけで。ひとまず時間の売り方を考えていこう思ってみたり。


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