目覚めの自動小銃(オートマチック)

植野陽炎

Cpt.1

『先を行く者』

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はるかな昔のこと。まだこの山が平らで、あの砂漠に水が満ち、あの海に街があったほどの、遠い遠い昔……』


『大地にはたくさんの人が溢れ、栄えておりました』


『ある時、勤勉な者によって魔法の力が見つかりました。さらなる繁栄のきざしに人々は喜びました』


『しかしそれも束の間、強大な魔法を巡り、大きな国も小さな国も残らず巻き込むたいへんな争いが起こりました』


『それは大地に住む人々が、ひとり残らずいなくなってしまいそうなほど激しいものになりました』


『土地を、川を、海をけがし、破壊し尽くされた世界で生き残った人々は争うことを止め、命を繋いでいきました』


『しかし、彼らを再びの苦難が襲います。自らを帝王と名乗るものが現れ、残された人々を、力と恐怖で支配しようとしたのです』


燻火くんかに揺らめく陽炎かげろうのように、大戦の惨禍がまたよみがえろうとしていました……』


『帝王の軍勢の手が伸びた場所に待っているのは、略奪か、服従。人々が絶望しようとしていたときでした。ある遺跡の地下深くで、長き眠りに着く者を見つけたのです』


『その者は呼びかけに応え、目覚めました。彼は賢者たちとともに戦い、力に溺れた者を打ち倒したのです。人々は彼を、英雄と讃えました』


『戦いを終えた英雄は、再び眠りにつきました。我々一族は、彼の眠る聖棺を代々守り継いできたのです』


『英雄が再び目を覚ますときには、世界が争いのない美しい場所であることを願って……』


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