第2話 ティア
「…って、いざ出発してみると…」
ルーは辺りを見渡した。薄暗く、月明かりだけが頼りの森。
かすかに聞こえる足音と、草をかき分ける音。敵が近くにいるのだろうか?
「いやぁ、怖いなぁ。いつ死ぬのかわからないなんて、トラウマになりそう」
ルーは思い出した。この日のために鍛練をしていた頃。彼は努力して手に入れた、ジャンプ力とキック。そして、石を投げる能力!
「だけど!怖い!!!!!!!!!!!!」
びくびくしながらも、一歩ずつ進む。手に石を。足は少し前に突き出しながら、辺りをキョロキョロとしながら、少しずつ進む。
「(これじゃあ、夜明けまでに着かないぞ)」
けどやっぱり、無理ゲー。落ち込むルーに、1羽の赤い蝶が寄ってきた。
「……なんだ?励ましてくれるのか?」
蝶は彼を導くように、前へ進んでいった。
「……蝶にできるんだ。カンガルーだってできる!!!!!!カンガルーだって王になりたい!!!!!!」
蝶に元気をもらったルーは、立ち上がると、前へ歩き出した。
しばらく歩いていると、何やら騒がしくなってきた。
ルーは草むらに隠れて様子を伺うと、どうやら激戦のようだ。毒ヘビや鹿、リスなどが戦っている。
「(…ヤバァ、うう、血が〜)」
毒ヘビが毒液を撒き散らすが、鹿がジャンプして、
「遅延攻撃ばかりしてくるな。リス野郎のくせに!!!!!!」
「すまんな鹿。俺らは木に登ることができるんだぜ。テメェらのような、下界の獣とは違うんだぜ」
「チクショッ、野郎ぶっ殺してやるんだからな!!!!!!」
「攻撃が当たればの話だがなwwwwwwww」
リスはドングリを投げまくる。鹿は必死に角でドングリを弾き飛ばすが、これではずっとこのままだろう。
「チクショッ、攻撃さえ当たればこっちのもんなのに!!!!!!」
「今年の王はリスだ!!!!!!ハッハッハッハ!!!!!!ハッハッハッハッh」
ボチッッッ
突然リスの体に何かが当たった。石のようだ。小石だが、リスにとってはまあまあ大きい。
「⁉︎」
「イッテェなおい!!!!!!なんだ⁉︎」
2匹は草むらに隠れているルーに気づいた。
「テメェが石ぶつけたんだな!!!!!!ドングリでも喰らえ!!!!!!」
ルーはリスが投げたドングリを蹴り飛ばした。ドングリはリスの顔面に命中し、気絶させた。
「ふぅ……」
「⁉︎……(強い!!!!!!)」
ルーはため息すると、鹿を警戒した。奴もまた、リスみたく襲ってくるかもしれないからだ。
「……もしかして、僕警戒されてます?」
「…うん。まぁそんな感じ?」
「……そうですか。やはり、あなた、強いですもんね。ここは仕方ありません」
そう言うと、鹿はグッと堪えた。ルーは疑問に思った。
「あれ?攻撃してこないの??????」
「え⁉︎なんだ、てっきり僕を殺すのかと思ってましたけど、違うんですか?」
「いやぁ、流石に生き物は殺したくないし〜。まぁいつかは手を下すときがくるのかもしれないけど〜、敵意のない人には、何もする気はないよ」
「そうなのですか。ありがとうございます、僕、ティアと言います。よろしくお願いします。あの、できればなんですけど、あなたと同行させてくれませんか?」
「同行?まぁ別にいいけど、なんで?」
「僕、昔から友達もいないし、弱いので、誰からも相手にさせてくれないんですよ。あのリスが1番最初に相手してくれたんです。ちょっと嬉しかったんですけどね」
「なるほど。それで、一緒に行って、強くなりたいと」
「そういうことです」
「でも、僕そんなに強くないよ?」
「でも、一緒に行きたいんです。ほら、1人だと寂しいし」
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