比翼の竜は連理の夢をみる
豊口楽々亭
プロローグ
第1話 比翼の夢
『─────』
それは美しい音だった。
音はどこまでも柔らかく広がり、喜びに満ちて震えていた。
唇が開かれる度に、甘い香りが鼻先を擽る。
私は────に手を伸ばした、そして────は私に大きな手を差し出す。まるで待ち焦がれたかのように、あるいは
あと少し、正に重なり合う瞬間────
上半身が弾き上げられた。反射的に起き上がれば、一瞬目の前が白むのが憎たらしい。物心ついた時から見る夢は、
それは、エメラルデラの歳が10を数えた今でも変わらない。
「っ…っ」
掠れた悪態が、一瞬にして飲み込まれる。
「ルデラ!帝国と神国がおっぱじめやがった!!」
父親代わりを務めるテオドールの声が
熱気に痛みを訴えるエメラルデラの眸は、まるで縫い付けられたように一点を見詰めている。
明け方の群青色の空の中、
─────あれが竜
一気に膚が
直感が、本能が、訴え掛けるのだ。長年追い求め、苦痛に似た
生木が燃える匂いと、肉が焼ける悪臭が
「なに呆けてやがる!いくぞ、ルデラ!」
立ち
炎が走り、雷鳴が
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