小握利 義理でも龍平くんは嬉しいようです
ある日の昼時。
「
「お疲れ様ー。お、
「最近、鼻垂れ抜け駆けすっからなー、たまにお目付役として来なぐぢゃ」
「だーかーらっ、抜け駆けなんてしてねー! 一人で来た方が落ち着くだけだ」
「そーたごど言ってー。椿佐さんを独占してえんだっぺ?」
「なっ……。誰が独占なんかっ!」
「はははっ。まぁ座りなよ。丁度二人に食べてほしいものがあったんだ」
「俺に!? 何々!?」
「……二人に、つったろーが」
呆れ顔の
「まずは、お茶とおしぼりな」
椿佐はいつものように二人に煎茶とおしぼりを手渡し。
「そして、これだっ」
竹ざるに載った三角のおにぎりを模したケーキを手渡した。
「……
「ああっ、ケーキさっ。ほら、今日はバレンタインだろ?」
「ああー」
「ああー、って、忘れていたのか
「仕方ねーだろ、ウチはおっさんしかいねーんだから」
「うっ、うおおぉっ、俺にもチョコがぁ!」
おっさん代表の冬茂が、竹ざるに載ったおにぎりケーキを天に掲げた。
「何泣いてんだよ親方」
「だってよぉ! 去年も一昨年も! 母ぢゃんと娘がチョコ作っていでよお! 俺にもくれるど普通は思うべ!?」
「まぁな」
「そしたら! くれだのは! 材料どして買った! 板チョコの余り!」
「はははっ! 面白ぇー!」
「笑い事じゃねえぞ! 酷ぐねえが!? そんだがら! ちゃんとしたものが嬉しくてよお! ……ん? でも、少し待でよ」
冬茂は自分のおにぎりケーキと龍平のを、二、三回見比べた。
「俺の方が小さぐねえが!?」
「いやっ、ほらっ、立宮の方が若いからっ」
椿佐が慌てたように言うと。
「…………」
龍平の口の端が少し上がった。
「まぁまぁ、味はおんなじだからっ。食べておくれよっ」
「食べるけんどよ……」
落ち込みながらも、冬茂は座り直し。
「いだだぎます」
「いただきます」
二人同時におにぎりケーキにかぶりついた。
「……甘、すぎねーな。中のは苺か?」
「そうさっ。ご飯に見立てたスポンジケーキ、海苔に見立てたコーヒークリームを練り込んだクレープ生地、そして、梅干しに見立てた甘酸っぱい苺さっ」
「……考えてんな」
感心しながら、龍平がもう一口かぶりつこうとし。
「あー!」
冬茂が龍平のおにぎりケーキを指した。
「親方っ、今度は何だよ!」
「苺も俺の方が小せえ!」
二人の視線が椿佐に集まり。
「ほ、ほらっ。立宮は今、食べ盛りだから!」
少し頬を赤くしながら言う椿佐を見て、龍平はまた少し嬉しそうに笑ったのだった。
−−−−−−
あとがき。
バレンタインに、間に合わず(泣) 無念!
少し前にテレビで、空港だったかな? 自販機でおにぎりケーキが売っているというのを見まして。これは書かねば、と(笑)
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