ヤンキーの龍平くんと元ヤンの一門さん〜恋するおにぎり食っていきねー!〜
冥沈導
第1章 龍平くんは一門さんが気になるようです。
第1握利 おにぎり屋『握利飯』を夜露死苦!
「お疲れさーん。あーあ腹減ったなー。『
「は!? 何でオレまで!?」
「だっておめ、
「はぁ!? 何でオレがあんなクソジジイのことを!?」
こげ茶色のニッカポッカを着た、金髪坊主の少年、
「いつも椿佐さんを見ながら、おにぎり食ってるじゃねーか」
「だっ、誰があんなジジイのことを! たっ、ただ! 男のくせに
「ぷっ、ぶははは!」
龍平の親方たちは爆笑した。
「なっ、何がおかしーんだよ!」
「がははっ、悪い悪い。確かにあの人は細ぇな、男なのに」
「そうだろーがよ」
「んじゃ、行ぐのやめどぐが?」
「……行くっス」
龍平たちの工事現場から数メートル離れた所にある、古い灰色アパートの一階。入り口の見た目はどこにでもある居酒屋だ。黒い暖簾には手書きと思われるペイントで『握利飯』、と書かれてある。
「
「
龍平の親方、道野は、入り口の戸を開けるとカウンターの奥にいた中性的な人に話しかけた。椿佐と呼ばれた『握利飯』の店主は、黒地に赤い紅葉柄のダボシャツ、紺色生地に『握』と書かれた
「立宮もお疲れ」
「……っス」
龍平はそっぽを向いてぶっきらぼうに返事をした。
「龍平は椿佐さんの前だど、鼻垂れ小僧だなー」
「誰が鼻垂れだ! 鼻水なんか垂らしてねー!」
「えー、いーじゃん、鼻垂れ小僧、可愛いじゃん」
「可愛くねー! ……っス」
「はははっ! 道野さんの時のように勢いよくツッコんでくれてもいーのに。ま、いいや。今日もカウンター席でいいかい?」
「もぢろんっ!」
紺色ニッカポッカを着た角刈りの道野は、蕎麦屋のような木のL字カウンター席の真ん中ら辺に座り、その左隣に龍平が座った。
二人はいつもカウンター席だが、他の席はもう満席だ。
「今日はどうしますか?」
椿佐は二人に湯飲みに入れた煎茶と、小判型の竹受け皿に載せたおしぼりを差し出しながら尋ねた。
「毎回悩むんだよなー、メニュー多いし、美味えし」
道野はカウンター奥に掛けてある、メニュー板を見た。
『鮭』『昆布』などの定番から、『煮卵』『焼肉』『キムチたくあん』『枝豆しらす』など20種類以上ある。その具材がカウンターショーケースの中に、透明なタッパーに入れられ、ずらりと並んでいる。
「うーあーおー。悩むなー。ちなみに椿佐さん、今日の味噌汁は?」
「揚げ茄子だよっ」
「おーっ、じゃあ味噌汁とー……、オクラ納豆!」
「昼から納豆……、ちゃんと歯ぁ磨けよな」
「わーってるよ! ネバネバパワーで健康第一だ!」
「納豆って組み合わせ無限にありそうですよねー」
二人のやり取りを聞いていた椿佐は、笑顔で言った。
「で? 立宮はどうする?」
「……味噌汁と、……ツナマヨ」
「ツナマヨ! やっぱり鼻垂れ小僧だな!」
がっはっは! と、道野は笑った。
「うっせ!」
「はははっ、ツナマヨ! 最強だよな!」
「……最強っス」
椿佐に笑われ、龍平は小さな声で言った。
「んじゃ、まず味噌汁な。農家のおばちゃんからもらったハリツヤがある
いー茄子だっ」
椿佐は黒のスープジャーから味噌汁を木製のお椀に入れると、カウンターの奥から手渡した。
道野はさっそく、お椀に口をつけ一口飲んだ。
「かぁー! 椿佐さんの味噌汁は冷え切った体に沁みるねー」
「まだ冬じゃねーだろ」
「仕事で疲れ、冷め切った体に、だ。鼻垂れ小僧には一から十まで説明しねーと、わかんねーかっ」
「だからっ、鼻水なんか垂らしてねーし! 垂れてんの親方だし!」
「おっとぉ」
道野はテーブルに置いてあった箱ティッシュから一枚取り、チーンと
「がっはっは! 体に沁みすぎで鼻垂れ親父になっちまった!」
「温かいもの飲んだりすると出ちゃうよなー。はい、オクラ納豆」
椿佐は海苔で巻かれた大きめな三角おにぎり二つを、竹ざるに載せて道野に手渡した。
おにぎりは大きめの海苔に挟んであるだけ、三角のてっぺんには具のオクラ納豆が載っている。
おにぎりの横には小さな卵焼き二つと、きゅうりの漬物、たくあんが二つずつ添えてある。
「で、こっちはツナマヨ」
竹ざるに載ったおにぎりを龍平に手渡した。こちらはツナマヨがてっぺんに載っている。
「……うっス」
龍平はそれを両手で大事そうに受け取った。
「んじゃ、いだだぎます! あむ! うんうんうん! 美味え!」
「親方うっせーなぁ」
「椿佐さん、ちょっとこれ梅入ってね?」
「よくわかったなぁ! そうなんだよっ、ちょっとさっぱりするだろ?」
「うんうん! この梅の酸っぱさがいいアクセントだよ!」
「だから、声でけーよ」
龍平は、ぼやきながらおにぎりにかぶりついた。
「……相変わらず
「くそっ、は余計だなー、クソガキ」
「誰がクソガキだ! クソジジイ!」
「がっはっは!」
口喧嘩しつつ、彼らはものの15分くらいで、完食した。
「あー、美味がったー! 満だされたー! 椿佐さん、お代こごに置いとくなっ。ごっづぉさん!」
「……あざっした」
道野と龍平は代金をテーブルに置くと、入り口に向かった。
「ありがとうございましたー! 『握利飯』を
−−−−−−
あとがき。
道野は田舎出身なので、台詞に濁点が多いです。読みづらくてすいません。
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