第37話 雨に濡れるいい女?

俺は須藤とゲーセンで遊んでいた。

今日は由愛に遅くなることを伝えているから、怒られはしないだろう。

俺はゲーセンから出たら、あれだけまぶしかった太陽は静まり、世界は暗闇に包まれていた。

スマホで時間を確認すると、もう19時を回っていた。

そして軽く雨が降ったのか、辺り一面、地面が濡れていた。


(そういえば朝にアテナが、夕方から雨が降るって言ってたな)


今朝の事を思い出しながら俺は須藤に話しかけた。


「雨降った後みたいだし、タイミングよかったかもな!」


須藤は両手を上に伸ばし、伸びをする。


「そろそろ帰らないとなー」


須藤はそう言い帰ろうとすると。


「あ!俺、今日帰りにゲームソフト買う予定なんだったわ!」


急に思い出したのだろう、帰りの足を止める。


「悪い!今日は1人で帰ってくれ」


須藤はそう言いゲームショップに足先を変えた。


「おう!また明日な!」


俺はそんな須藤に別れを告げた。

俺は家に向かって歩いていると雨が降り出した。

どうやらさっきの雨で終わりではなかったようだ。

しかしそんな急な雨でも、俺には対応できる。

アテナの指摘通り折り畳み傘を持ってきていたのでそれを差し足を進めた。

須藤はおそらく濡れ濡れ確定だ。


そして俺は自宅近くのコンビニに差し掛かり、そこから少し進んだところにスーツ姿の女性が空を見上げて立ちすくんでいた。

手には缶ビールを持っていた。

酔っぱらっているのか?

俺は通り過ぎざまにその人の顔を見たら見覚えのある顔だった。


「って!宮下先生!?」


彼女は、なんと俺のクラスの担任の宮下先生だった。

性格がきつそうなので、しっかり者かと思いきやこんなところで何をやっているのだろうか。

俺は傘に先生を入れる形で、声をかけた。


「どうしたんですか?宮下先生!」


すると先生は俺に気付いたようでこっちに目を向ける。


「あぁ・・・山田か~」


だいぶ酔っているのか、目がとろんとしていた。


「雨の中、突っ立ってたら風邪ひきますよ!」


すると先生の瞳から涙が出てきた。


「私は教師失格だ。生徒の相談を解決できそうにない!!」


そういうと、俺の胸に顔をうずめ泣いてくる。

あの先生がこんなになるなんてよっぽどだろう。

すると先生は俺の胸から顔を離したと思ったら、酔いが相当回ってきたのかフラフラしていた。


「先生とりあえず家帰りましょう!家どこですか?送りますよ!」


俺はそう言うと、先生はあっち!と指を差し家まで案内してもらう。


「すまんな~山田。酒弱いのに飲んだらこのざまだ」


今にも倒れそうな先生を支えながら歩く。


「そんなに飲んだんですか?」


「あぁ、こんなに飲んだ!」


先生はそう言うと、手に持った缶ビールを見せてきた。


えっ?


「先生・・・このビールほとんど残ってますけど」


500mlの缶ビールの半分以上残っていた。


「私は、ビール一口でも飲んだら酔うんだぞ!」


酔うんだぞ!って言われてもな。

俺はため息を吐いた。

これならもうワンサイズ小さい350mlの缶ビールを買っても十分すぎるだろう。


「本当にそうなんだったら、もう飲まないでくださいね!」


すると先生は、分かった分かったと手をひらひらしながら返事をしてくる。

そう言ったところで、先生は口を開く。


「ここが、私の家だ!」


そういうと、マンションの前で立ち止まった。


「ここの501号室だ!」


そう言われると、俺は5階にある501号室まで連れてきた。

そしてドアの前で立ち止まる。

ここが先生の家か・・・。


「先生!鍵は何処ですか!?」


「財布の中だ。右ポケットに入ってる!」


俺は言われるまま、右ポケットから財布を取り出し鍵を見つける。

鍵を開けて、扉を開く。


「先生、家に着きましたよ!」


俺は先生に、家に入るよう説得するが。


「は?お前馬鹿なのか?今の私がここから自分のベッドまで行けると思うか?」


何故か先生に怒られてしまった。


「じゃあどうすればいいんですか?」


先生は当たり前のように返してくる。


「お前が私をベッドに運ぶんだよ!」


「え?・・・マジですか?」


玄関からベッドまでなら、今の先生なら1人で普通に行けそうであるが、なぜベッドまで運ぶように言われたのか。

何やら嫌な予感がするので、先生をそのままそっと手放そうとすると、先生の肩にかかる体重がさらに増えた。


「あぁ・・・私はもう倒れそうだ!早く連れて行け!」


先生に半ば強引に部屋に連れ込まれる形となり、俺は思い切って中に入ることにした。

そうはいっても一応先生という立場の人だし大丈夫だろう。

その時、俺はそう言う判断を下してしまった。

俺と先生は中に入ると、部屋が暗闇に包まれていたので俺は明かりをつけると、そこはゴミが散乱していた。


「先生・・・」


「あ?」


「掃除ってしてますか?」


「そんなもん1人暮らしなんだしするわけないだろ!」


駄目だこの先生、結婚なんて程遠そうだな。

俺は憐みの視線を先生に向けておく。

とりあえず先生をベッドに座らせる。


「水汲んでくるんで少し待っててください!」


俺はそう言うと水を汲みに行った。

流し台も、洗っていない食器が積み重なっていた。

学校ではしっかりしている先生だと思っていたのだが、家ではこんなにだらしないなんてね。

こりゃ、彼氏がいないのも納得だ。

まぁ、家事が趣味な人となら何とかなるかもしれないが、中々いないだろう。

そんなことを考えながら水を汲み、部屋に戻ると俺はフリーズした。

先生はなんと、スーツを上下脱ぎ、Yシャツのボタンをはずしているところだった。


「ちょっと何やってるんですか!」


俺はワイシャツを脱ごうとする手を止めに行こうとする。


「何って、今から寝るのにスーツ着てるわけにはいかないだろ!」


フラフラしながらワイシャツを脱ぎ捨てる。

なんという堂々とした佇まいだろう。

本当のこの人は先生なのだろうか。

間に合わなかったか・・・。

先生は、紫の下着を俺にさらし、俺の方を見てニヤケている。


「ほぉ、山田!お前もしかして・・・」


次の瞬間俺はなぜか先生に腕を引かれ、ベッドに押し倒されていた。


「なぁ、山田!お前はいい奴だ!」


!?


「私の男にならないか?」


そういうと先生に俺の顎をくいっと上げられ、先生の顔が迫ってくる。

おいおいおいおい!

イケメンかよ!!

俺は目を閉じ、先生を両手で遠ざけようとする。

柔らかい感触とともに、先生の喘ぎ声が聞こえる。


「大胆だなお前・・・」


何だこの柔らかい感覚は。

俺は恐る恐る目を開けると、俺の手は先生の胸に沈んでいた。


「違うんです先生!これは!!」


といい、手をどけると先生は俺の上に倒れてきた。


(先生の体やわらけえー)


俺はこれから起きることを覚悟したその瞬間、俺の耳元でスゥースゥ―と息が聞こえる。

俺は顔を横に向け先生を見ると、先生はすでに目を閉じ夢の世界へと旅立っていた。

俺のこの気持ち何処にぶつけたらいいんだ!

俺はふぅーと息を吐く。


「落ち着け俺、これでよかったんだ!」


俺は先生の体を俺の上から降ろし、立ち上がった。


「先生に酒を飲ましたら駄目だな。制御不能になる・・・」


俺は下着姿で倒れる先生を見て、さっきまで雨に濡れていたことを思い出す。


「もしかしてこれ、俺が体拭かなきゃならないのか?」


いや!先生の事だ、起こしたら起きてくれるだろう!

俺は先生の肩をゆすり、起こそうとする。


「先生!先生!このまま寝たら風邪ひきますよ!起きてください!!」


「ぐぅ・・・ぐぅ」


先生はいくら俺が起こそうとしても起きなかった。

しょうがないので俺は先生の体を簡単に拭くことにした。

バスルームに行くと、洗濯された薄いタオルがあった。


「バスタオルを使うほどではないよな・・・」


先生は濡れた服を脱ぎ捨て少し時間が経っているので、もうそこまで濡れてはいない。

この薄いタオル1枚で事足りるだろう。


「失礼します・・・」


俺はそう言うと先生の下着でおおわれていない所を拭き始めた。

薄いタオルを取ったのは失敗だったかもしれない。

先生の柔らかい肌がタオル越しにダイレクトに伝わってくる。

時折先生は、艶めかしい声を出してくる。

俺はその誘惑に耐えながら、先生の拭き上げを終わらす。


少し時間はかかったが、先生の体の拭き上げを終わらせた。

残るは下着だが、少し雨に濡れて湿っていそうだが、さすがに下着まで変えるのは駄目だろう。

そこは我慢してもらうことにした。


俺は先生を布団に寝かせ、辺りを見渡す。

そこには見るに堪えない部屋が広がっていた。

俺は、ため息を吐く。

俺はもう何も言わず、ただ無言で部屋の掃除を始めた。

俺、夜中に何やってるんだろ・・・。


部屋の掃除を終えた俺はへとへとになり家に帰るのであった。

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