第36話 面接③
【はしがき】
ちなみにちょくちょく出てくる楓さんは女性です。
「え?」
「え?じゃないですよ。さっき希さんには言ってたじゃないですか」
「お前、聞いてたのかよ…」
「当たり前じゃないですか!」
そう言って由奈は胸を張った。
普通に考えて、面接の盗み聞きなんてしちゃいけないんだけどね。
「まあおいおい話すよ。ほら、さっさと持ち場に戻るぞ」
「ちょ、話逸らさないでくださいよ!先輩ってばー」
由奈の言葉を無視して、廊下を歩く。
正直な話、由奈に面と向かってどう思ってるか伝えるなんて恥ずかしいのだ。
まあ、ちゃんと自分の気持ちに整理がついたらその時はちゃんと伝えることになる
んだろうけど。
駄々をこねる由奈を宥めながら待つこと十数分。
説明を終えた楓さんと丹川さんが帰ってくる。
「終わりました?」
俺がそう聞くと、楓さんがコクンと頷く。
そして、続けざまに俺と由奈に向かって口を開いた。
「とりあえず当分の教育係を決めたいんだよな」
楓さんの言葉に直ぐに由奈が反応する。
「私は無理でーす。希さんに教えられることなんてないですから」
「じゃあ俺もパスで」
俺と由奈のパス宣言に楓さんは顔をしかめたが、直ぐに俺の方を指さした。
「よし、丹川の教育係も綾人でいいな」
「いや、自分もパスって言いましたよね?」
「あ?文句あるか」
楓さんに睨まれ、俺はしぶしぶ頷く。
横では由奈が、頑張って笑うのをこらえていた。
そんな由奈を睨みつけ、俺はそのまま丹川さんの方に歩み寄る。
「教育係って言っても特に教えることはないからさ、授業の進め方とか課題の確認の仕方とかまとめたプリント作るからそれを今度渡す感じでいいかな?」
俺がそう言うと、丹川さんは少し考えるような素振りを見せ首を横に振った。
「出来れば直接教えて欲しいな」
丹川さんの様子を見るに、由奈と俺の関係を知ったからと言って特に変わったことはないように思える。
それならば直接でもそこまで気まずくなることはないだろう。
「そう?ならそうするよ」
俺は少しほっとしながら、丹川さんにそう伝えた。
「ありがとう。あと今日のバイト終わり何か予定ある?」
「ん?特にないけど」
「良かった。ならこの場所に来て欲しいな」
丹川さんはそう言ってスマホを操作する。
数秒後、俺のスマホに場所と名称が送られてきた。
俺はスマホを開き、メッセージを確認する。
「えーと、場所は……は?」
「それじゃ、またあとでね」
「え?いやちょっとまっ」
俺の呼びかけも空しく丹川さんは由奈と楓さんに挨拶し、颯爽と帰宅してしまった。
「ここって…ラブホじゃん」
俺は、そんな丹川さんの後ろ姿を見ながらそう呟いた。
【あとがき】
読んでいただきありがとうございます。
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