第4話 許昌に住む
戦後処理も終わり、俺達は曹操の本拠地であり、帝が住む許昌に来ていた。
「陳宮、お前の為に屋敷を用意しておいた好きに使え。」
曹操は少し膨れたように言う。
「何でそんなに不機嫌なんだ。」
「仕方ないだろ!呂布の娘があれ程の器量とは思わなかった、しかも貂蝉まで家族と言いやがって!」
曹操の言うとおり呂希は歳こそ若いものの、綺麗な顔立ちをしている、このまま成長すればさぞ美女になるであろう。
更に貂蝉も天下に名を轟かす美女である。
好色な曹操としては勿体無いと思っているのだろう。
「そう言っても約束だろう。」
「ぐっ!まあいい、その分は働いてもらうからな。」
「そのつもりだ。」
曹操は悔しいながらも約束を反故にする気も無いのだろう。
少し拗ねながらも、よこせとは言ってこなかった。
「厳氏様、呂希様、貂蝉様、この屋敷をお使いください。」
俺は曹操に貰った屋敷をそのまま呂布の家族に引き渡す。
「陳宮、あなたは屋敷に住まないのですか?
この屋敷は曹操があなたに渡した屋敷のはず。」
貂蝉は俺の言葉から俺が住む気がが無いことに気づいたのだろう。
実に聡明な御方だ。
「貂蝉、当然ではありませぬか、このような汚い男と一緒に住める訳が無い。」
呂希は不機嫌に声を発する。
呂布が亡くなって以来、俺を見る目に厳しいものがある、どうやら曹操に降った事が許せない様子だ。
「呂希、言い過ぎですよ、陳宮は私達の為に尽くしてくれているのです。」
厳氏も呂希をたしなめ、呂希は更に不服そうにするものの、母親に逆らうつもりは無いようで口を尖らせるだけで何も言わなかった。
「厳氏様、必要な物は何なりとお申し付けください。」
「陳宮、あなたは呂希の夫になったのですよ。
一緒に住みなさい。」
「それは、」
「お母様!このような者を夫などとは!」
呂希は俺の言葉を遮り、母親に意見する。
「呂希、あなたはお父様の決めた夫に不満があるのですか?」
厳氏の言葉は呂希に反論を許さない、だが呂希としては納得出来ないのだろう。
俺の方を睨み。
「私の部屋に来たら許さないからね!」
そう言い屋敷の奥に入っていった。
「陳宮、悪く思わないで、あの子はまだ呂布様が亡くなられた事を受け入れていないの、私達の頼みはあなただけなのよ。」
厳氏は俺の手を握り、懇願するように頼んでくる。
「わかっております。
私のような年老い、見た目の悪い者が呂希様に釣合うとは思っておりません。
今は無理ですが時がくれば離縁なり何なりとお申し付けください。」
「陳宮、そのような事はありません。
自分を卑下するのはお止めなさい。」
「自分の事は理解しております。
私はなるべく屋敷には帰らぬつもりですので、どうぞご自由にお過ごしください。
では、これより出仕してまいります。」
俺は軽く礼をしてその場をあとにするのだった。
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