第28話 弟

「最近、姉ちゃんの様子がおかしい」


 僕はやけにうるさい、隣の部屋を気にしながら呟いた。


 時刻は十八時。

 いつもだったら、この時間はライトノベル?を読んでいるはず。


 もしかして、何かあった?

 いや、そんなことはないだろう。


 あの本が大好きな姉ちゃんだ。この前、本棚がたりないと言っていたし、机の上に置いていた本でも落ちたんだろう。


 もしくは幸太郎を寝かしつけてるか。

 母さんが忙しいときに、俺たちを世話してくれている姉ちゃんだ。


「それにしても、幸太郎だったら明日怒らないとな」


 姉ちゃんが、あの全部我慢してきた姉ちゃんが、唯一好きになった趣味の邪魔をするなんて。


 3年前にあんなことがあったのに、僕たちのために頑張ってくれた姉ちゃん。今度こそは僕が、姉ちゃんの助けにならないと。


「そうだ、ちょっとの時間も惜しい。姉ちゃんより、賢くなって、いい大学に行って、姉ちゃんを楽してやるんだ」


 僕は机に置いていた塾の教材をやり始めようとした。

 そんなとき――

 バタンと隣の部屋から大きな物音が響いてきた。


「姉ちゃん!」


 勢いよく自分の部屋を出て、姉ちゃんの部屋の扉を開ける。

 姉ちゃんの部屋は本や目覚まし時計、服などがひどく散乱していた。


「どうしたの、姉ちゃん!」

「……なんでもないよ」


 下を向いて、震える姉ちゃん。よく見てみたら、人差し指は少し切れていた。

 姉ちゃんの傷、この状況、もしかして。


「泥棒が入ってきたんだね。窓から! ちょっと待っててね、警察に――」


 ポケットに入れていたスマホを開いて、電話を開き、番号を入力する。一、一、と  押したとき、姉ちゃんに肩を掴まれた。


「海、違うから! 全然、泥棒とかじゃないから!」

「脅されたんだね、怖かったよね、姉さん、安心してくれ!」


 〇と入力し終えて、発信ボタンを押す。

 その瞬間、また姉さんに肩を掴まれた。


「ほんとに違うから、落ち着いて、ね?」

「ほんとに?」

「ほんと、ほんと」


 嘘は言ってなさそうだった。

 なんでわかるかって?

 そんなの大好きな姉ちゃんの顔を見たら、すぐわかる。


「だったら、なんでこんな散らかって」

「……それは、ね?」

「やっぱり、何か――」


「ちょっと探し物してただけだから!」


 嘘は吐いてなさそうだっだ。

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