第17話 本屋で鉢合わせ②

「このすごは……あった」


 大型ショッピングモールの書店の中、私はようやくお目当ての本を見つけ出した。

 えーっと、表紙は……って今年の一位はこれなの? 二位も、三位も、予想していたのと全然違う。


 このすごの表紙には毎回作品のタイトルが載っていて、インタビュー作品になっているものはランキングが上位のことが多い。

 だから、すぐに分かったけど。


「一位が『ようこそ実力至上主義の学園へ』って去年も今年も意外過ぎるよ」


 去年は新人賞作品で一昨年に新作部門と総合部門を同時に獲得していた、あの作品が二連覇していたはず。


 続刊も面白かったし、今年も連覇して殿堂入りかなって思ってたのに。

 なのに、今年はようやくこの作品が一位なんて。


「意外な結果すぎるよ」


 え? 協力者票去年なかったのに、今年一位なの?

 やっぱりすごいなぁ。

 それじゃ、いろいろ分かったことだし、買って帰ろうっと――


「……え?」


 本を抱きかかえて、レジに持っていこうとしていた私の目の前には、彼が立っていた。


◇◆◇◆◇

 

「――っ」


 大型ショッピングモールの書店の中、俺は店員から場所を聞いて、ようやくお目当ての本に辿り着いた時、彼女に出会ってしまった。


 落ち着いた色のブラウスに長袖のカーディガン、本を抱きかかえて、そっぽを向いてぷるぷると震えている。


 綺麗で可愛い。

 それしか感想が浮かんでこなかった。

 思わず息を呑む。


 この大型ショッピングモールは、二駅離れた場所にある。家の近くにも書店はあるが、当日に置いてないこともあって、この書店を選んだけど。


 ……やってしまった。

 よりにもよって彼女と鉢合わせるなんて。


「…………」

「…………」


 空気が重い。

 目の前には本があるはず。それを買って帰れば、今日のミッションはコンプリート。


 そのはずなんだけど。

 本を抱きかかえている彼女が通せん坊をしていた。


 いや、まて。そもそもなんで彼女はこの場所にいるんだ?

 周りにあるのはライトノベルが並べられた棚ばかり。

 つまり、ラノベブース。

 純文学を読んでいる彼女が、こんなところで本を抱きかかえているはずがない。


 このすごを買いに来た?

 チラッと抱きかかえられた本を見たら、本を背後に隠されてしまった。


 引きつった笑みを浮かべている彼女に、俺は何も言えない。


「……………………」

「……………………」


 空気がさらに重くなった。

 そのとき。


「あの、先程の方、本は見つかりましたか?」


 救世主の店員が現れた。


◇◆◇◆◇


「あの、先程の方、本は見つかりましたか?」


 咄嗟に後ろに隠した本を持ちながら、私は店員と話し出した彼を見ていた。


 助かったぁ。

 店員さんが来てくれなかったら、このラノを買いにきてことがバレてた。


 私は彼が店員と話をしている途中、ゆっくりとその場から離れてレジに向かう。

 ……それにしても、どうしてあのブースにいたんだろう。


 もしかしてこのすごを買いにきてた?

 なんて、夢みたいなことあるはずないよね。


 それから本を買った私は、家でさっそく本を開いていた。


「あ、私が書いたコメント載ってる」

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