第6話 寝坊

「お兄ちゃん、朝だよ!」

 ……あさ?

「遅刻だよ、もう勘弁してよね!」

 バンッと勢いよく絞められた扉の音を聞き、目を覚ました。

 すぐに目覚まし時計を確認する。

「六時半?」

 紗枝が起こしに来るとは思えない時間のはず。

 ならなんで起こしにきたんだろう。

 妹の紗枝はめったにこの部屋にやってくることはない。

 朝練があるからという理由もあるが、最近話す時間も減り、いつの時からか嫌われるようになっていた。

 そんな紗枝が起こしに来るなんて。

 もう一度、目覚まし時計を確認する。

 いつもは四十分にはアラームが鳴っているはず――

「秒針が動いてない……」

 秒針は三時の方向に傾いたままだった。

 つまり。

「今何時だよ!」

 慌てて充電していたスマホを確認する。

 七時!?

 ホームルームは八時三十五分。

 いつもは七時十五分発の電車に乗って、地下鉄とバスを乗り継いでいるが、それでも時間ギリギリだ。

 つまりは――

「ヤバい!」

 勢いよく扉を開け、階段を下りる。

「雄介、何やってたの!」

 母親の声が聞こえたが、無視して洗面台に行き、顔を洗った。

 あと十分。

 昨日夜ふかしして、ラノベを読んでいたから?

 いやその前に目覚ましの電池を確認しておくべきだったか?

 遅刻理由を考えながらも、歯を磨き終え、急いで自分の部屋に戻り、制服に着替えた。

「スマホの充電よし、制服よし、今日、体育は――なかったはず!」

 鞄の中も確認し、リビングに行く。

「お母さん、ごめん、今日昼ごはんは買って食べる!」

「あら、そう? 行って――」

 お母さんの声を耳にしながら、急いで玄関の扉を開いた。

「行ってきます!」

 あと五分。

 これならまだ間に合う。

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