第4話 電車の中で②

「なんで同じ電車にいるの?」


 学校帰りの電車の中、空いていた席に座って本を読んでいた時、彼と初めて目があった。


 思わず呟き、視線をそらす。


 初めて視線があったことになるよね……。

 

どうしよう、すごく恥ずかしかった。顔真っ赤になってないかな? 


 スマホで確認してみる。うん、大丈夫。……大丈夫だった、ことにしよう。


 に、しても。


 なんでこの時間に彼が乗っているんだろう。


 私たちは同じ学校じゃない。制服はわかんないけど、同じ駅で降りてきている姿を見たことが一度もなかった。

それに、学校が休みだった日に彼を尾行……じゃなかった、こっそりついて行ったら、少し遠くにある学校だった。


 それに、私は部活をやってない。文芸部に入ろうと思ったけど、先輩たちがラノベを読んでなさそうだったんだよね。


 だから、帰りの電車に乗り合わせるはずはないんだけど……。


 今日だけは違った。

 掃除当番だった。


 しかも、数学の先生のお手伝いが重なって、三十分も長く。


 そのおかげで同じ電車に乗るとは思ってもなかったけど。


「……どうしよう」


 話しかけてみたい。

 でも、緊張しちゃいそう。


 あわわ、なんて言っちゃったら、もっと恥ずかしくなって、明日から駅で顔合わせられないよ。


 うーん。今日はやめておいた方がいいかな。


 読んでいた本の続きも気になるし……。


『佐々木とクーちゃん』


 ネットの評判が良くて買ってみたけど、思ったよりも面白かった。


 ただ単行本だから文庫本より、二倍もしたんだよね。 

 

 明日のお昼ご飯は何にしよう……。


 そうやって、お昼ご飯と本のことを考えていること数秒。


「ねぇ、その本どんな本?」


 彼と一緒にいた男の子の声が聞こえて、私は耳を傾けた。

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