俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
二部第5話 変態、姉に付き合わされて採集オワタ・後編
二部第5話 変態、姉に付き合わされて採集オワタ・後編
ぶっちゃけ、ステータスは高い。かなりの硬度と、ビッグサイズ昆虫の脅威の身体能力。
そんなヤツを前に姉は悠然と佇み、じっと見つめている。
向かい合う両者だが、先に動いたのは翠玉蟷螂の方だった。
威嚇の構えを見せたかと思うと一気に姉さんに飛びかかる。
あの鎌は斬るようではなく捕獲用だ。長い鎌を伸ばし挟み相手を捕獲、その力でダメージを与えながら魔力も吸い顎にある牙のようなので噛み切って食らうのだ。
姉も流石に分かっているので、鎌を警戒し、距離をとろうとする。
収納魔法で、上から黒槍を降らせながら相手の意識を分散させ、逃げ回る。
「……!」
一瞬の隙を突いて、姉さんが翠玉蟷螂の背後に回る。が、ヤツには複眼があり、背後さえも見えている。見えているぞ、なのだ。
振り向きざまの一撃が姉を襲う。が、すかさず跳び上がり身体を浮かせ、盾を取り出し防御態勢をとったことで吹っ飛んだものの壁に足つけてしっかり着地しているので大丈夫だろう。
うまく仕留められず苛立ちを感じているのか、翠玉蟷螂が大声でわめいているのだが、それも気にせず、姉さんはこっちを見つめて口を開く。
「ねえ、夏輝。姉さん、どうだった?」
「え? あの、かっこいい動きだなと」
「惚れなおした?」
「え? あの」
「惚れなおした?」
「えーと」
「惚れなおした?」
姉Botぉおおおおおおおおおおおおお!
もしくは、ソフトか作成者の容量が足りずに別の選択肢がもうけられずに一方の選択肢しか選べない強制イベぇええええええ!
「はい」
「うん、じゃあ、もう満足」
も う 満 足
姉は、それだけ言うと、まだすっごいシャウトしてる翠玉蟷螂に向かって駆けだす。
それに気付いた翠玉蟷螂もすぐに構えて威嚇の声を出してくるが、姉は気にせず突き進む。
まさか正面衝突するつもりだろうか。流石に姉でもキツイはず。
収納魔法を駆使しながらの物理メインの魔女という意味不明な存在ではあるが、魔物だって弱くはない。
そう思ったその時、姉は収納魔法で、何かを取り出す。
「
何かの布だった。白い。あ、多分、俺のシーツの布だ。
そういえば、今日のシーツは出かける前に姉が回収していた。
そして、何故かすぐに綺麗なまるで新品のような新品のような新品だろこれっていうシーツが戻ってきた。
そのシーツの布の一部を姉が抱えている。
そして、それをぎゅっと握ると姉の魔力が高まり、身体強化魔法が一段階上がる。
な ん で?
思わず、ピス〇チオみたいに白目をむいてしまった。なんで解散したんや……!
異常な魔力の高まりを見せた姉は、大きな鉱物、恐らく魔鋼石であろう塊を手に持って、そのまま突き進んでいく。
両サイドから挟みに来ている鎌をガン無視し、そのまま顔面へと叩きつける。
口にある牙も流石に魔鋼石は砕けなかったのか挟むにとどまっているが、姉の勢いは止まらない。そのまま突き進み、蟷螂の弱点と言える身体の華奢さを見せつけるように首を折り、口に挟んだままの岩を踏みつけ跳び上がり、再び黒槍を取り出し、
「そこ」
外殻の隙間、関節の部分ピンポイントで貫き地面に釘付けにする。
暫く首が折れた状態でもバタバタしていた翠玉蟷螂だが、やばて動きがゆっくりとなり、最後には動かなくなった。
その様子をじっと見てた姉がこちらを振り返り、聞いてきた。
「夏輝、蟷螂、いる?」
「いりません」
俺は断った。翠玉蟷螂のこんな状態のよいものなんて手に入らないだろうからマニアは喜んで買うに違いない。
けど、そんな額だ。
これを得るために俺は何を姉に与えなければいけないんだ。
世の中は等価交換だから!
「……貴方みたいな勘のいい弟は」
ぎゃああああああああ!
「好きよ」
「好きなんかい!」
思わず突っ込んでしまう。トラウマシーンにならなくてよかったけど!
見ると姉がくすくす笑っている。
「最近の夏輝は遠慮がなくなって、もっと好きよ」
そうかもしれない。
冬輝の一件が、居なくなった弟の件が、どことなく家族をおかしくさせてた。
その中でも俺が一番だったみたいだ。
けれど、悲しいこととはいえ、冬輝の一部が俺の中にいることで、少し吹っ切れた部分もあるんだろう。
俺達は、遠慮なく笑い泣いて家族を大切にしていると思う。
「わたしも、子供の頃に戻ったみたいで、楽しい」
姉さんは、子供の頃は本当に活発で、そういえば昆虫採集も一番楽しんでやってた。
俺は、姉さんのそんな喜ぶ顔が見たくて、一生懸命手伝ったことがある。
ぶっちゃけ、虫はそんな得意じゃないけど。
だからか、姉さんは、僕が手伝った分の昆虫採集をとても喜んでくれた。
だけど、いつの間にか、姉は『女らしく』なることに、『普通』であることに、囚われ始めていたように思う。
確かに、あの頃に戻ったみたいだ。
「じゃ、もっともっといっぱいとるわよ」
目の前には宝虫の集団。ひいいいい!
ただ、姉の嬉しそうな顔を見たら、逃げるわけにはいかないじゃないか。
「姉さん、手伝うよ」
姉の隣に並ぶ。姉が笑う。無邪気に楽しそうに。
そして、駆け出した。一緒に。
あの頃の夏と同じように。
その後、家に帰った姉はほくほくした顔で標本を眺めていた。
その標本には、『翠玉蟷螂、と交換した夏輝の枕カバー』『金剛石鍬形、と交換した夏輝の椅子』等など、姉が倒した宝虫の外殻、と、交換した俺の私物が並べられていた。
な ん で(白目)
姉曰く、宝虫の巣で使ったあのスキル? はオリジナルスキルで【蒐集物解放】。
集めている俺のモノを使うと魔力が増幅するらしい。使うってなんだ?
なので、いっぱいあればあるほど今後活躍できるらしい。
な ん で(白目)
ちくしょう! 夏季限定バイトで稼ぐつもりだった金の何倍も手に入れちゃったよ!
失ったものは大きかったけど、今年の夏はフィーバーできそうだ!
ありがとうざいまし、た!(白目)
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