函南殺人事件

鷹山トシキ

第2話 見立て殺人

 残り3人。

 5月1日、風磨たちの旅は続いていた。

 月光天文台にやってきた。

 1975年3月22日、現在地(函南町)に「月光天文台」が移転開設した。1976年にプラネタリウム館を開設(1996年に改築)、1983年に地学資料館を開設。1986年に第2観測所(新館)開館。単なる天文台ではなく、宗教施設でもある。

 風磨は怪しげな黒服たちに勧誘されたので逃げた。

 風磨は旧友の石榴大亜ざくろだいあって人物が首を切られて殺されていたことを、コンビニで買った新聞で知った。石榴は八ツ崎という裏社会の人間の協力者だ。


 次いでやってきたのはかんなみ仏の里美術館だ。桑原区で守られてきた24体の仏像を町民の財産として保存継承していくための施設である。


 函南町桑原区では、長源寺の境内にある薬師堂で慶派仏師・実慶の作である木造阿弥陀三尊像や木造薬師如来座像等、国の重要文化財、県指定有形文化財、町指定有形文化財を含む仏像24体が住民によって保管されていた。しかし、薬師堂の老朽化や災害時の対応、仏像の修復が課題となっており、2008年(平成20年)2月、桑原区は同区内に保存収蔵展示施設の建設等を条件として、函南町に仏像群を寄付した。これを受け、同年4月25日に函南町議会文教厚生委員会が保存方法検討のために現地視察を行っている。同年6月の定例議会で、芹沢伸行町長(当時)は、町職員で構成する文化・スポーツ振興部会で検討を行った結果を踏まえ、1982年(昭和57年)に移転した旧桑村小学校跡地を建設の候補地とし、5年以内の開館を目指す意向を示した。


 数日前、怪盗が忍び込んだ。

 盗まれたのは不動明王像だ。

 制作年代は室町時代以降とされる。函南町有形文化財に指定されている。


 盗まれたのはこれだけではない。

 風磨たちは木造十二神将立像を眺めていた。

 十二神将立像は、桑原薬師堂内に安置されていた本尊薬師如来像に随侍していたものであるが、どの時代にこのような形で安置されたかは不明である。十二神将立像は、何種類かの制作年代の異なる像が混在している。しかし、修復作業において亥神将像から「建治三年」の墨書銘が判明したことから、制作年代は鎌倉時代から江戸時代とされた。


 十二神将は薬師如来を守護する護法神として安置される。後にこれが十二支と結びつけられ、頭髪の中に動物の姿で十二支を表すようになる。 2012年(平成24年)から埼玉県吉備文化財修復所へ修復を依頼していた十二神将立像は、2013年(平成25年)10月末に修復を終え、12体全てに破損で本体から離れていた手が戻った。このうち丑像は、手先だけでなく右手に持つ「宝棒」も見つかっている。


 各像とも鰭袖衣、窄袖衣または大袖衣、裙を着け、袴を穿き、襟甲、肩甲、胸甲、表甲、腰甲を着けるなど、一般的な十二神将像の像容をあらわす。造像技法については、頭体幹部を一材から彫り出し、基本的に前後割矧ぎとし、割首、内刳りを施している。両手両足等については、形姿によって各所を矧いでいる。各像とも玉眼を嵌入し、彩色を施している。

 

 🐀毘羯羅びから大将像 👣

炎髪で、頭上に十二支の子を載せている。制作年代は、中央に円い凹みを表す胸甲の形式から鎌倉時代末期から南北朝時代とされている。85.5cm


 🐂招杖羅しゃとら大将像

 髻を結い、頭上に十二支の丑を載せている。制作年代は鎌倉時代初期とされている。94.8cm


 🐅真達羅しんだら大将像 👣

 冑をかぶり、頭上に十二支の寅を載せている。制作年代は、下隅を円くした胸甲の形式から、鎌倉時代末期から南北朝時代とされている。107.8cm


 🐇摩虎羅まこら大将像

 炎髪で、頭上に十二支の卯を載せている。制作年代は鎌倉時代初期とされる。96.6cm


 🐲波夷羅はいら大将像 👣

 炎髪で、頭上に十二支の辰を載せている。制作年代は鎌倉時代初期とされる。94.0cm


 🐍因達羅いんだら大将像

 炎髪で、頭上に十二支の巳を載せている。制作年代は、中央に円い凹みを表す胸甲の形式から、鎌倉時代末期から南北朝時代とされる。97.5cm

 

 🐎珊底羅さんてら大将像 👣

 炎髪で、頭上に十二支の午を載せている。制作年代は、中央に円い凹みを表す胸甲の形式から、鎌倉時代末期から南北朝時代とされる。92.4cm


 🐏頞儞羅あんにら大将像

 髻を結い、頭上に十二支の未を載せている。造像技法については、頭体幹部を一材から彫り出しており、内刳りを施していない。制作年代は、胸甲の中央に円い凹みを表しているが、室町時代から江戸時代初期とされる。96.2cm


 🐒安底羅あんてら大将像 👣

 冑をかぶり、頭上に十二支の申を載せている。制作年代は、下隅を円くした胸甲の形式から、鎌倉時代初期とされている。96.6cm


 🐔迷企羅めきら大将像

 冑をかぶり、十二支の酉を載せている。制作年代は、中央に円い凹みを表す胸甲の形式から、鎌倉時代末期から南北朝時代とされる。108.4cm


 🐕‍🦺伐折羅ばさら大将像 👣

 髻を結い、頭上に十二支の戌を載せている。制作年代は、中央に円い凹みを表す胸甲の形式から、鎌倉時代末期から南北朝時代とされる。94.8cm


 🐗宮毘羅くびら大将像

(くびら 亥 ) 髻を結い、頭上に十二支の亥を載せている。制作年代は、下隅を円くした胸甲の形式から、鎌倉時代初期とされている。

 

 👣は既に盗まれている像。

 

 マカロフも美術館に来ていた。

 🐀が盗まれあと、馬場刑事ってのが自宅に放火されて殺された。馬場はマカロフの同僚だ。🐅のあと葉隠が射殺された。撃ったのはマカロフ自身だ。🐲のあと、八木崎が消され、🐎が盗まれたあと石榴が消された。🐒が盗まれたあとラルフの兄が殺され、🐕‍🦺が盗まれたあとは凪子が犠牲になった。

 マカロフはこの像を盗んだ怪盗こそが黒幕で、そいつがマカロフをマインドコントロールしてるのだと気づいた。

 また、馬場が子年、葉隠が寅年、八木崎は辰年、石榴が午年、ラルフの兄のパープルが申年、凪子が戌年なのだ。

 これは立派な見立て殺人だとマカロフは気づいた。

 童謡や言い伝えなどある特定のもののに見立てられて、死体や現場(発見現場ないし殺害現場)が犯人に装飾させられている殺人事件のことである(殺人にまで及ばないこともある)。筋立て通りに殺人が行われるという異様な不気味さを狙ったもので、トリックというよりもプロットに属するが、アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』や横溝正史の『八つ墓村』のように、見立てることがトリックという例も少なくない。


 江戸川乱歩は「類別トリック集成」の中で「童謡殺人」「筋書き殺人」という名称で見立て殺人を取り上げている。この中で乱歩は故人の言葉や古文書などの筋書き通りに恐ろしいことが起きるという着想は、日本の古い物語、オラクル・亀卜のような占い、また聖書などにも見られ、それら同じ恐ろしさを探偵小説に応用したものと解説している。


 上記のように推理小説(ミステリー作品)における見立て殺人の目的は、読者に異様な不気味さを与えるというものである。他方、それを実行する犯人の理由は様々であり、基本的には先入観を与えることで次の標的候補・犯行順序・犯行現場・凶器を予測させて探偵役(ひいては読者)を欺くことにあるが、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』のような異常な心理が主因という場合もままある。ただし、トリックに関係しない場合でも、見立てられないままに起こった殺人などをきっかけにして、犯人の糸口をつかむということはある。


 推理小説の歴史における最初期の見立て殺人はイギリス推理小説における童謡殺人であり、後述するようにマザー・グースを題材にした作品がよく見られる(ただし、乱歩は1919年発表の谷崎潤一郎『呪われた戯曲』を「筋書き殺人」の例に挙げている。この年にはフランスのモーリス・ルブランが、孤島に伝わる詩に沿って連続殺人が行われる『三十棺桶島』を刊行している)。

 

 昼前、風磨たちはレンタカーで酪農王国オラッチェにやってきた。運転は海斗がしてる。

 丹那牛乳処理工場に隣接しており、主に丹那地域で生産された乳製品の販売及び、ソフトクリームづくりなどの体験が行われ、動物園、公園などなどが設置されている。

 ティールーム花の温室、ふれあい動物牧場、ラビット・スクエア、遊具、ドッグラン、ガーデンカフェ、とうもろこし畑の巨大迷路、地ビール工房、

チーズ・バター・アイスクリーム工房。

 ソフトクリームは少し暑いこの時期に涼やかで美味しかった。


 その後、4人は道の駅伊豆ゲートウェイ函南に向かった。平成26年度制定重点道の駅「伊豆道の駅ネットワーク」の一つであり、川の駅(狩野川塚本地区河川防災ステーション)が隣接する道の駅である。PFI事業の道の駅であり、PFI事業者が開業から15年間管理運営を行う。


 2019年4月27日に川の駅施設がオープンしている。

 なお、川の駅駐車場を伊豆中央道から伊豆縦貫道沼津方面への道の駅駐車場として案内しており、道の駅施設と川の駅施設は展望歩道橋により連絡されている。

 

 駐車場 : 113台、トイレ : 31器(風磨は大、麗美と海斗は小をした)、交通情報案内施設、観光情報案内施設、物産販売所、飲食施設、コミュニティ広場、展望歩道橋、受水槽、防災倉庫、非常用発電設備、急速EV充電設備2台、セブン-イレブン伊豆ゲートウェイ函南店、伊豆ゲートウェイ函南 i-studio。


 風磨たちはレストランで昼食を食べた。風磨が牛丼、芳川がラーメン、麗美がカレー、海斗がミートソーススパゲティだ。

 

 一色恭也は飼っているハムスターだけを友とする、一匹狼の殺し屋である。仕事ぶりは慎重に慎重を重ねたもので、コールガール・麗美と、闇ポーカーの賭場にそれぞれアリバイの口裏合わせを頼み、バスを複雑に乗り継ぎ、特殊な鍵束を使って路上の自動車を盗み、協力者である自動車修理工にナンバープレートを付け替えさせて、標的の情報と銃を受け取り、指紋と硝煙反応を残さぬよう手袋をはめ、仕事を終えると、手袋と銃を狩野川に捨て、タクシーで帰宅するのだった。


 その日の深夜。ナイトクラブの支配人・島津殺しの依頼を受けた恭也は、いつものように準備を重ね、依頼を遂行した。現場を去ろうとしたとき、専属ジャズバンドの女流ピアニスト、千代子と鉢合わせになり、まともに顔を見られてしまった。それでも恭也は千代子を無視し、平然とナイトクラブを出た。通報を受けた警察は、街の人々を無差別に連行する作戦を敷き、賭場にいた恭也もその対象となる。バーテンの西澤と千代子が警察署に呼ばれた。西澤は事前の申し合わせ通り、恭也のアリバイを偽証する。面通しで恭也の姿をふたたび見た千代子は、なぜか「この人ではありません」と告げたので、恭也は釈放される。静岡県警の檜垣警部は恭也こそが殺し屋だと直感し、部下たちに徹底的なマークを命じる。


 2日。恭也はタクシーを乗り継ぎ、仲間の殺し屋が待つ、報酬の受け取り場所へ向かった。その殺し屋は、報酬を手渡す代わりに恭也を射殺しようとした。恭也は間一髪で銃弾を避け、致命傷を防いだが、腕に怪我を負った。殺し屋は逃げた。恭也は殺しの掟の非情さを痛感するとともに、ナイトクラブの中に自分の正体を知る者が千代子以外にいると感づき、再びナイトクラブをたずね、演奏を終えた千代子を待ち、ともに彼女の自宅へ向かう。


 3日の夜明け。恭也は千代子に「俺のことを警察に言わなかったのは、誰かをかばったためだろう? 俺が逮捕されれば、依頼人の身も危ないからな」とたずねた。千代子はそれには答えず、「2時間後に電話して」と告げて別れた。一方その頃警察は、静浦山地にある恭也のコテージに盗聴器を仕掛けるかたわら、警部自ら西澤の自宅を家宅捜索し、証言の撤回を迫った。偽証のために婚約者を装っているうちに、本当に恭也に惚れるようになっていた千代子は、それをきっぱりと断った。


 帰宅した恭也は、カゴの中のハムスターが羽毛をまき散らし、落ち着かない様子なのを見て、盗聴器が仕掛けられていることを見破り、探し出してスイッチを切る。🐹

 念のためにカフェの公衆電話から千代子に電話するが、恭也の身を案じた千代子は、受話器を取らなかった。再びコテージに戻った恭也を、待ち伏せしていた昨日の殺し屋が襲った。殺し屋は銃を向けながら、「消しに来たのではなく、今度は依頼だ」と告げ、札束を積んで見せる。恭也は殺し屋を殴り飛ばし、銃を奪い取って突きつけ、「その依頼を受ける前に、お前の雇い主は誰なのか知りたい」とたずねる。観念した殺し屋は「畑毛温泉に泊まってるガルシアだ」と力なく答えた。恭也は殺し屋を撃たず、椅子に縛り付け、コテージを飛び出した。


 恭也はいつものように、自動車の調達のためにタクシーに乗ったが、すでに多数の刑事たちが張り込んでいた。函南町内を行ったり来たりするうち、尾行を振り切ることに成功する。恭也は自動車を盗み、修理工のもとへ向かった。修理工はナンバープレートを付け替え、標的の情報と銃を手渡すと、「あんたとの仕事はこれが最後だ」と告げた。一瞬戸惑った表情を見せた恭也は、「わかった」とだけ答えた。

 夜になった。恭也はまず、千代子の自宅へ向かった。恭也は千代子を抱きしめ、「決着をつけてくる」とだけ告げて去り、依頼先へ向かう前に、殺し屋が教えた、畑毛温泉に泊まってるガルシアのアジトを探し当てた。

 函南町側を畑毛温泉、伊豆の国市側を奈古谷温泉と分けていたが、奈古谷温泉側が衰退したため伊豆の国市側も畑毛温泉として案内される。例として大仙屋は伊豆の国市奈古谷に位置しているが、「畑毛温泉大仙屋」としている。

 田園地帯に7軒の旅館が存在する。

 富士山の眺めも素晴らしい温泉地である。

 共同浴場などはなく、日帰り入浴は旅館の日帰り受付を利用することになる。

 そこは見覚えのある、ピアノが置かれた旅館だった。千代子はガルシアの所有する旅館に囲われていたのだ。恭也はガルシアを射殺して、依頼先へ向かった。

 古くから温泉が開けていた。伝承では、源頼朝が当温泉で軍馬の療養を行ったとされる。

 また、江戸時代には「湯塚の湯」という名前で、腫れ物に対する温泉の効能が広く知られていた。寛延年間に湯治が行われたという文章の記録が残る。

 与謝野晶子が畑毛温泉を訪れ「湯口より遠く引かれて温泉は 女の熱を失ひしかな」の句を残している。

 上林暁が畑毛温泉を訪れた際の様子を『浴泉記』に記している。


 依頼の現場は温泉街の一画にあるナイトクラブだった。バーテンダーにウィスキーを注文した恭也は、手袋をはめ始める。それを見て狼狽するバーテンダーを見た恭也は、恭也を消すようガルシアに進言した張本人が彼であることをさとったが、彼には手をかけず、酒にも手をつけないでカウンターを離れた。千代子がステージに登場し、ベーシスト、ドラマーとのコンボで電気オルガンを演奏し始めた。恭也はオルガンに寄りかかり、演奏に聞き入りつつ、千代子に銃を向けた。千代子は演奏を続けながら「どうして?」とたずねた。恭也は「報酬を受け取ったからだ」と答えた。


 ドンッ!銃声が響いた。倒れたのは恭也だった。張り込んだ刑事たちが一斉に恭也を撃ったのだった。刑事が「危ないところでしたね」と千代子をいたわっているところへ檜垣警部が「それは違う」と割って入り、恭也の銃を見せた。恭也が構えていた回転式拳銃には、銃弾が1発も込められていなかった。千代子は涙も流さず、静かにオルガンの前に座り込んでいた。

 

 🔖これ以上殺人は起きない!

 

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