俺だけレベル上限が9999まで解放されました~俺のハズレユニークスキル《測定計測》が覚醒しました!ダンジョン攻略に必要なレベルを測定後に上限が解放されたので俺を早熟雑魚と罵った奴らにざまぁします~

ある中管理職@会心威力【書籍化感謝】

第1話 幼馴染

「――あれあれあれ? 史上初、レベル100に到達した探索者様が1階層で小銭稼ぎですか? そんなに強い探索者様なら人類のため、もっと深い階層の探索をお願いしたいものですねぇ。なぁ? みんなもそう思うだろ?」


 日課であるダンジョン1階層、峡谷エリアの探索。

 その最中、それを嘲笑う女たちとそんな女たちを侍らせる男が俺の前に現れた。


 男の名前は幸村慎二。小学校からの幼馴染みだ。


 昔は俺の後ろをついてくる可愛らしい奴だったが、今は顔を合わせる度この態度。

 というのも俺がレベル100に到達した際、当時付き合っていた女に俺と自分とでレベルの比較をされて……結局、それをきっかけにフラれたのが原因。


 とはいえ直接俺が何かしたわけでもないのだから、嫌がらせも程々にして欲しい。


 もっとも、それは慎二だけに思っていることじゃない。

 レベル100……レベルをカンストさせたからといって、どいつもこいつも破格なステータスを勝手に期待して、そうじゃないと分かれば勝手に失望して、結局は馬鹿にして……。


 俺だって、できることなら全員の期待に答えたかったさ。


「……。慎二こそ、そんなに仲間を侍らせられる実力があるなら『オロチ』の討伐隊に参加でもしたらどうなんだ? そろそろ冬眠から覚める頃だろ?」

「はぁ? まさかお前、僕に意見するのか? 未だに『ランク3』で足踏みしているお前が、この僕に? 早熟雑魚の分際で……偉そうにしてんじゃねえぞっ!重力枷《グラビティパニッシュメント》』」

「う、ぐ……。闇属性の魔法、しかも上級か」


 まるで手足が鉛になってしまったように、動かなくなってしまった。

 魔法は魔法で打ち消す、あるいはその効果を弱めることができるが、それはあくまで同じ等級の魔法同士でのみ。


 普通レベル100にでもなれば上級魔法どころか、最上級、それ以上だって使えそうなものだが、俺の場合、扱えるようになったのは中級魔法まで。

 俺は攻撃力や防御力といったステータスも、魔法も、30レベル頃からほとんど成長できなかったのだ。


 一縷の望みに縋り、必死でレベル100になってみたものの……。

 それはただただ、自分自身に対する期待を殺すだけの行為だった。


「あっはっはっはっはっはっ! 情けないなあ! 昔はあれだけ威張っていたってのに……。本当に情けないよ」

「慎二……。何を……?」


 慎二はゆっくりと俺のもとまで近づくと、そっとその手を俺の腰辺りまで回した。


「情けなくせこせこ生きる姿を一生馬鹿にされるくらいなら……死んだほうがましだと思わないか? 台本は……そうだな、俺をかばって谷に落ちた。それで、形見としてこのポーチを幼馴染である俺に預けた、って感じか」

「まさか……そんな、嘘だよな?」

「く、くく……。なぁ、知ってるか?ダンジョン内で死亡した場合、その原因究明、さらには遺体の捜索はされない。つまり、周りにその時の状況をチクる奴がいない限り、自由に人殺しができるんだよ!……じゃあな幼馴染みで、元友人の並木遥。『超重力枷ハイグラビティパニッシュ』」

「最上級魔法!?ぐ、あああぁぁあっ!」


 地面にめり込む身体。

 メキメキと骨の軋む音が鳴り、息が苦しくなる。


 指1つ動かせなくなるどころか、圧力だけで肺が潰れそうだ。

 ステータス管理ができない普通の人間なら何秒も持たない威力だろう。


「ん?なかなかにしぶといな。ならその身体がペラペラになるまで何度でも味わえ、『超重力枷ハイグラビティパニッシュ』『超重力枷ハイグラビティパニッシュ』『超重力枷ハイグラビティパニッシュ』『超重力枷ハイグラビティパニッシュ』」

「う、がっ!」


 口の中に広がる鉄の味。

 俺の口から溢れた血で地面は赤く汚れ、所々にヒビが見え始める。


 どうやら俺の身体以上に、この場所はまずい状況らしい。


「『超重力枷ハイグラビティパニッシュ』 ――」

「幸村さん足元が!!」

「ん?……なるほど、ここはもう持ちそうにないか。引き返すぞ、お前たち!」


 侍らせている女の1人が注意を投げかけると、慎二たちはもう俺に目をくれることなく、そそくさとこの場を去っていった。

 ビキビキと音を立て今にも崩れてしまいそうなこの場所に、俺は置き去りにされたのだ。


 ここが崩れれば、下は深い谷。どこに繋がっているのかは知らないが、死は確実だろう。

 まさか峡谷エリアで狩りをしていたのが仇になるなんて、思ってもみなかった。


「……。あっけない、幕切れ、だな。こんな最後、なら……あの人の言う通り、探索者なんて――」


 消えそうな意識の中、あの日、あの人が放った言葉を思い返していると、ついに足元が崩れ、俺の身体は落下を始めた。


 すると……。


『測定。落下地点到達まで74秒。不変無しの場合、必死。その際再測定が可能。再測定を自動予約』


 目の前の物体の長さを測るくらいしか使いどころのない、俺のハズレユニークスキル《測定計測》が勝手に発動したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る