新しい神が就任してちょうど100万人目の死亡者らしいので能力貰って転生した。〜しかしなんで条件なんか付けた〜
S@YU
第1話 始まり
━━ここはどこだろう。何もない真っ白な世界。周りを見渡せているのかが分からないくらい、視界に変化がない。
何故俺がこんなところにいるのか、いつからここにいるのか、それすらも思い出せない。唯一感じるのは、左手首の痛みだけ。
これから何が起こるのか、俺はどうなってしまうのか。
先の見えない不安に俺は押しつぶされそうになっていた。
しかし、時間が経つと案外冷静になるもので俺の中に一つの仮説ができた。
それは
これって、転生というやつでは?
というものだった。
思えば、これは俺が好きなライトノベルにありがちな光景だからだ。他に理由はない。
もし、この仮説が正しいならばもうすぐ神か天使か女神かなんかが俺にチート能力を与えて、転生先で無双をさせてくれるはず。
・・・しかし、いつまで経ってもその神以下略は現れなかった。
・・・・・・・もしかしてこれ、普通に死んだだけ?
いやいや、死んだかも分からないしそもそも死んでたら意識があるのおかしいし。
はぁ・・。ほんとに俺はこれからどうなるんだろ。
やっぱり不安でしょうがなかった。
〇〇〇〇〇〇
はぁ、、、、、、、、。なんっっっも起きない。
暇すぎる、、、。
もうすっかりこの状況に慣れてしまった。それこそ視界は真っ白、手は何に触れているのか分からない。匂いもない。味もない。何も聞こえない。
言わば5感が全く働いていない状況なのだ。
なのに意識ははっきりしてる。たちが悪いことこの上ない。
あーあ、暇だから思い出せることは思い出してみるか。
確か俺は、尾ノ上陸歩
おのうえりくほ
。高校2年生で剣道3段、居合道初段を持っていた。
俺に残ってる最後の記憶は、放課後に小学生の頃からお世話になってる剣道クラブの恩師に、居合道の指導をしてもらっていたはず━━━
━━駄目だ。どうしてもその先が思い出せない。
それからも特に何も起きず、時間だけが過ぎていく。
もう無になろう。何も考えないようにしよう。考えるから駄目なんだ。よし、無、無、無━━━
━━━━━━━
━━━━━━━
━━━━━━━
「・・・・・あのー。」
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「・・・すいません。だ、大丈夫ですか・・・?」
━━━━━━━
「ちょ、ちょっと!反応してくださいよ!ねぇ!死んじゃったんですか?!」
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「もう!怒りましたからね!?反応しないあなたが悪いんですからね?!いいんですね?!」
━━━━━━━
「━━━!!もう!起きてください!!!!」
バヂンッ!!!
いっっでぇぇぇぇ!!!!
「な、なにをする!!」
「だって!あなたが!目は開いてるのに、なにも反応しないから!!」
無の境地から脱出した俺の目の前に現れたのは、綺麗な羽衣のようなものを身に纏い、なんか神秘的な雰囲気を醸し出した美人な女性だった。
「ど、どうしたんですか?もしかして、引っ叩いたの怒ってます、、、?」
おぉ?よく見ればちょっと可愛いじゃないか。ここは紳士的な態度をとろう。
「いや、突然のことで驚いただけです。・・・ところで、貴方は一体?」
「あ、怒ってないんですね?よかったです。」
ホッとしたような表情を見せ、その女性は佇まいを正した。
「改めまして、、私はディケイド様にお仕えする、ポーラ=オーラ=ノクタリカ=キリス=アウトと申します。よろしくお願いいたします。」
言ってポーラさんは頭を下げた。いや名前長!ポーラさんでいいや
「こりゃどうも、、、。それで、どうしてポーラさんは俺のところに?」
ポーラさん呼びは全く気にしていないようだ。
そこで俺は、気になっていたことを質問した。
「え、えっと、単刀直入に申し上げますと、陸歩さん。あなたは先日、亡くなりました・・・。」
「え、、、?」
やっぱり俺、死んでたのか。ならこの人は何しにきたんだ?てか、死んだならなんで俺意識があんの?
でも待てよ?そもそも俺、なんで死んだんだ?
「それで、、死因なのですが、、その、、、。」
やたらと言い淀むポーラさん。
「なんですか?いってくださいよ。気になるじゃないですか。」
「わ、わかりましたよ。言います!・・・あなたは、
居合道の納刀の際に左手首を切り、出血多量、それによるショックで亡くなりました。あ、切断ではないですよ?」
「いやいやいや、え?そんなはずないです!
俺、手首が切れるほどの刀は持ってないですよ!」
そうなのだ。俺がやっていたのは『抜刀道』ではなく、『居合道』なのだ。抜刀道では真剣を使用するが、居合道では全く切れ味のない、模造刀を使用するので手首を切るなんてことは無いはず。そもそも真剣は初段じゃ持つことはできない。
「それがですね、、あの日あなたの先生が真剣の重みを体感してほしい。と真剣を持参してらしたんです。
そこであなたは慎重に扱うようにと注意を受けたのにも関わらず、『俺、納刀得意だから!』とその動作に入ったとき、、、。思ったより重かったのと、いつもよりも刀身が長かったのでしょうね。こう、スパッ!と」
ええええ。なにそれだっさ!!納刀が得意だから??バカじゃん!真剣だって言われてたんだろ?自分がバカに思えてしょうがない。
そう言われると、左手首が痛いのも納得がいった。
思いの外ダサい死に方に落ち込む俺だったが、過去のことはもうしょうがない。これからが大事だ。
「それで話の続きですが、なんと言いますか、おめでとうございます!と言っていいものか分かりませんが、あなたはディケイド様が着任されてから、記念すべき100万人目の死亡者です。
よって、あなたが望むなら第2の人生を歩むことが可能です。いわゆる、転生というやつですね。
ただ、元いた世界でこれを行うことは不可能です。
あなたの家族や関係者は、すでに葬式をすませており、今帰ると色々と面倒だからです。」
「しかし、転生するためには肉体がないといけないので、あなたが焼却炉へ入ったときに死体だけ拝借して、代わりにあなたのDNAを完璧にコピーした骨を置いてきました。ご家族には悪いですけど、しょうがないですよね?」
えー。すご。そんなことできるんだ。思ったよりしっかりしてる、、、。
「それで、、、どうしますか?転生したいですか?それとも、記憶を消去し違う人として生まれ変わりたいですか?」
ポーラさんは究極の二択を迫ってくる。
転生したい?そんなこと言われても、急すぎて困る。
しかし、興味があるのもまた事実だった。
このまま死ぬくらいなら転生してみたいという気持ちもすぐに湧いてきた。
「俺は・・・転生します!どうせなら、この体、この意識で異世界へ行きたいです!」
するとポーラさんは美しい微笑みを浮かべながら
「ふふふ。わかりました。では、これより転生の為の準備に入ります。しばらくお待ちくださいね。」
とポーラさんが何かをし始めた。
その間俺は暇だったので、邪魔にならない範囲で色々質問してみることにした。
「そういえば、なにか特殊能力とか頂けるんですか?こう、打撃の威力が山破壊するレベルとか、指パッチンするだけで相手が木っ端微塵になるとか。」
「そうですねー・・・。それは転生先でわかるかと思います。どんな能力が付与されるかは私たちにもわからないので。」
ふーん。そんなものなのか。
まぁいい。転生といえばチートだ。とどこかで聞いた気がする。元いた世界で使えない能力が使えるなら、どんな能力でもいいや。
俺はそれが聞けただけで満足したが、ポーラさんはいまだにガチャガチャやっている。
どうにも準備に時間がかかるようだ。
でも心の広い俺はそんなことも許しちゃうぜ。
・・・ちょっと打ち解けてきた気もするし一つだけ文句でも言ってやるか。
「あのー。転生させていただけるのはありがたいんですけどー。だったらもう少し早くいらっしゃっても良かったんじゃないですかねぇー?なんもないこの世界で長い時間待たせるなんてぇー。」
というと、何故かポーラさんはビクッ!!っと肩に力が入り、動きを止めた。
やべ、文句言わないほうが良かったか、、、?
「いや!でもー、色々準備とかあったんですよね?!だったらしょうがないかー。たははー。」
あわててフォローを入れた。
が、こちらをゆっくり振り返るポーラさんの顔は真っ赤で、、、。
あ、おわった、、、こりゃ転生できんわ。
文句を言ったことを後悔していると
「す、、、すみませんでしたぁぁ!!!!」
・・・・・・・え?
「あ、あのあの別に忘れたくて忘れたわけではなくてですね?ちょっと日本のアニメが面白くて熱中しすぎたといいますかその余韻に浸っていたらいつの間にかあなたがこの世界にきていて私すごく慌てて急いで来たんです!!」
そう言って地面に頭を打ちつけんばかりに頭を振り下ろした。
一息に言い切ったせいか、ひどく息切れしていた。
いや、そんなことよりもこいつなんて言った?
『忘れてた』ぁ??はぁ??異世界に転生という一大イベントを??
はは、ははは・・・・・。
はぁ、、、。笑えねぇなぁ・・・・。
「ひとまず、、わかりました。悪気がなかったことも理解しています。ですので、頭を上げてください。」
俺が言うとまるでパァァァァ!っと効果音がしそうなほどに安心したような顔でポーラさんが顔をあげてくれた。
・・・俺、許すとは言ってないけどね。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「━━さぁ!転生の準備ができました!陸歩さん!心の準備はいいですか?」
「えぇ。とっくに心構えはできていますよ。」
別の意味でもな。
「それは良かったです。では、転生の前にあなたへ特殊能力を与えましょう。」
ポーラさんはそんなことも知らず、祈りを捧げるように手を重ね合わせ、よくわからん呪文を唱えた。次の瞬間俺を真っ白な光が包み込み、しばらくして消えた。
・・・・・?
特に感じるものはないな。あっちへ行ってから発現するのだろうか。
「では、あなたを送ります。どうか、あなたの第二の人生が幸福なものでありますように━━━」
今度は青白い光が俺を包み込む。
そして、視界が真っ青になるその瞬間
俺はポーラさんの腕をガシッと掴んだ。
「・・・ふぇ・・・?」
ポーラさんの気の抜けたような声と共に、俺はついに異世界転生を果たした。
〇〇〇〇〇〇
応援してくださると励みになります!
今後の展開にご期待ください!!
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