第34話 エミ先生と不都合な何か
むしろ女の人はボクらが聞き返したことに驚いたみたいで、「大丈夫?」みたいな表情をつくった。
そのあとの説明でボクらは保育園のブロッコリー組さんのときに着ぐるみリレーでこれを着てナス組さんやピーマン組さんに勝ったんだそうだ。そしてそのときの先生がこの方でエミ先生ということだった。
「誰かと思えばエミ先生かー」
もちろんボクらは初めて聞くことだと悟られないような相づちの打ち方で聞いていた。変に震えた。
ボクらは何かを失っているんじゃないかという恐ろしさをまだ隠せていた。
「あのころはよくこの道をみんなでお散歩したわよねー」
「は、はい、懐かしく思います」
ガードレールの鳥たちがボクらを取り調べるかのような目で見ている。
「あと、他には?何か気づかない?」
エミ先生はあたりを見まわすのをやめて急にまたボクらに向き直った。
しばらく考えてわからなくて、エミ先生は「じゃあ、ヒント」と言っ顔の高さに手のひらを上げ、甲をこちらに向けて指をぴんっと張った。
そこでゆっこちゃんが薬指に気づいた。
「指輪!」
ほっとした表情のエミ先生。
「よかった。気づいてくれて。だってこれはあなたたちが私にプレゼントしてくれた大切な指輪だもん。三人のお嫁さんになってくださいって、プロポーズしてくれたわ。かわいかった。でも……その日を最後にあなたたちは保育園に来なくなってしまったから……」
なぜボクらは来なくなったのか聞くのがすごく怖かった。必要ないものを引っ張り上げそうだ。そのあとエミ先生は実は私もほんとうに結婚することになって遠くの町に今は住んでいるのだと続けていたけど、ぜんぜん頭に入ってこなかった。
背の高い雑草がいっせいにざわざわっと揺れた。
「でもね、さっきあなたたちわざと私のこと思い出せないふりしたでしょ、それでまさかって思って……。指輪をくれたあのときあなたたちが言ってたあのことの通りになったのかなって……」
「あのこと?ですか?」
三人のうちだれがそれを聞いたかなんてどうでもいい。もはや読者様のご叱正とご教示をさえたまわりたくある。
「ボクらは何を言ったんですか?」
声を絞り出した。空はすでに変な色の夕焼けになってた。
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